【獣医師監修】マダニが媒介するSFTSと動物病院の責任

マダニ予防啓蒙

📰 最近のニュースから見る「他人事ではない感染症」

こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

先日、2025年6月、愛知県豊田市内で草刈り作業をしていた方が、SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:重症熱性血小板減少症候群)に感染し亡くなったというニュースが飛び込んできました。
ワンちゃんや猫ちゃんと生活を共にする私たちにとって、これは決して他人事ではありません。

SFTSウイルスはマダニを介して感染し、野外で活動する人だけでなく、マダニに咬まれた犬や猫にも感染します。そしてその動物から、家族や獣医師、看護師といった「人」へも感染することがあるため、動物病院を通じた地域の予防啓発が求められています。


📌 豊田市の取り組みと飼い主への助言

愛知県豊田市は、市民に向けて「SFTS予防に関する注意喚起」を公式ページで行なっています。
その中で、以下のような予防法が紹介されています:

  • 雑草地・山林に入るときは肌を出さない服装を心がける
  • マダニの付着がないか外出後に全身確認する
  • ペットにも定期的なマダニ予防薬を使用する

当院の所在地であるこの地域において、飼い主さまが市からの正確な情報を得ることは非常に重要です。

📎 豊田市にお住まいの皆さまへ
▶ 豊田市の該当ページは衛生・感染症


🦠 SFTSとは? 動物病院の立場から解説

◆ 病因・感染源

SFTSは、SFTSウイルス(SFTSV) によって引き起こされるウイルス性疾患で、主な感染源はマダニです。日本、韓国、中国を中心に流行が見られ、日本では毎年60〜100人の患者が報告され、致死率は20%前後と非常に高いことが知られています。

近年の研究では、感染動物(特に猫やイノシシなど)から人への直接感染も報告されており、獣医療現場でのリスクも増大しています。

厚労省の記事はこちらこちら

こちらの当院ブログもお読みください。


🐾 動物でのSFTS:犬・猫への影響

● 猫の場合(特に危険)

  • 感染から2~9日程度で発症
  • 食欲不振、発熱、黄疸、嘔吐、下痢、出血傾向など
  • 非常に急激に悪化し、致死率は60~70%以上とも
  • 実際に飼い猫→飼い主・獣医師→死亡例あり(国内報告)

● 犬の場合(発症例は少ないが要注意)

  • 発熱、元気消失、白血球減少、血小板減少が中心
  • 慢性キャリアとしてのウイルス排出が懸念(尿・唾液)

● その他の動物

  • イノシシ、タヌキ、シカなどの野生動物も保菌宿主となり、里山近辺に活動するペット(特に猫)との接点がリスクになります。

🏥 動物病院としての責任と対策

当院では以下のようなSFTS対策を徹底しています。

【1】診察前問診の徹底

  • 「野外に出たことがあるか」
  • 「マダニを見たことがあるか」
  • 「ペットが突然食べなくなった/吐いた」
    など、リスク因子を事前に明確にするLINE事前問診を採用。

【2】動物ごとの動線管理

  • SFTS疑い症例に限らず、完全予約制をしき、他動物・飼い主さまと接触させないようにします。
  • 診察台や使用器具は有効な消毒剤でその都度適切に処理。

【3】スタッフの感染防護教育

  • 疑わしい症例においては、手袋・ガウン・フェイスシールドをスタッフに義務付け
  • 万が一の曝露に備えて「曝露時対応フロー」を用意
  • SFTSに関する定期研修

【4】飼い主さまへの啓蒙活動の継続

  • フィラリア予防開始時に、ノミ・マダニなどの外部寄生虫予防のお話
  • マダニは周年活動していることの周知徹底
  • とくに猫では、冬季に飼い主さまへの感染源となることの注意喚起

💡 飼い主さまにお願いしたい5つのこと

  1. 定期的にマダニ予防薬を使用してください
     – 動物病院で処方される予防薬(例:内服タイプ、ピペットタイプ)が最も効果的です。
  2. 草むら・山林での散歩は控える、または時間を限定してください
     – 特に5~10月の暖かい時期はマダニの活動が活発です。
  3. 外出後はペットの被毛をしっかりチェックしてください
     – 感染して吸血したマダニは目に見えます。とくに耳、足先、顔まわりを重点的に。
  4. 体調不良を感じたら、すぐにご相談ください
     – 発熱、食欲不振、嘔吐、黄疸などは要注意。
  5. SNSやご家族へ、マダニの危険性を共有してください
     – 「知っている」ことで防げる感染症です。

📊 獣医学的データに基づいた提案

欧米獣医学界(ACVIM, JAVMA, BMC Vet Res等)でも、SFTSを含むズーノーシスに対する獣医療現場の啓発が強く求められています。とくに米国CDCや韓国防疫庁のデータでは、感染猫と接触した獣医師が死亡した事例が明確に記録されています。つい最近でも日本国内でも、死亡した獣医師の報告があり、現在ではSFTSは獣医療従事者職業病の1つとして位置づけられつつあります。


🧪 当院で可能な検査と今後の展望

  • 血液検査(白血球・血小板数)
  • PCR外注(SFTSV遺伝子検出を状況に応じてご案内)
  • 保健所など公的機関との連携対応体制も

🔚 最後に

SFTSは、犬・猫、そして飼い主・家族を巻き込む重大な感染症です。
動物病院は単なる診察の場ではなく、「地域の感染防御の要」でもあります。

当院はこれからも、飼い主さまや地域社会と連携しながら、マダニとSFTSのリスクを最小限に抑えられるよう努めてまいります。どうか、ご家族とペットの健康を守るためにも、日々のマダニ予防を大切にしてください。

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#動物病院 #豊田市 #寄生虫

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