カメは溺れる?水棲ガメでも溺死する理由と安全な飼育方法を獣医師が解説🐢

水棲ガメでも溺れます。多くは飼育環境が原因であり、適切なレイアウトや水深管理によって予防できる事故です。

こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

当院のある愛知県豊田市でも、「水棲ガメなのに溺れることがあるのですか?」「朝起きたら水槽の底で動かなくなっていました」「子ガメは水深が深いと危険でしょうか?」といったご相談をいただくことがあります。

「水棲ガメは泳ぎが得意だから、溺れることはない」と思われている飼い主さんは少なくありません。しかし実際には、水棲ガメでも溺れて命を落とす事故は起こりえます。基礎疾患で弱っていることも考えられますが、その多くは、飼育環境やレイアウトに原因があります。

しかも、一度溺れたカメは助かったように見えても、その後に誤嚥性肺炎や呼吸器感染症を起こすことがあり、早期の対応が重要です。

今回は、カメの診療に携わる獣医師の立場から、水棲ガメが溺れる理由、溺れやすい環境、安全な水槽づくりについて詳しく解説します。


水棲ガメは本当に溺れるの?

「河童の川流れ」とは、どんな名人や達人でも、ときには失敗することがあるという意味のことわざです。

河童は昔話では泳ぎが非常に得意な妖怪とされています。その河童ですら、川の流れに押し流されることがあるということから、このことわざが生まれました。妖怪である河童の呼吸様式は不明ですが、肺呼吸だけではなく、カエルのように皮膚呼吸もできるのかもしれませんね。

水棲ガメは泳ぎが得意ですが、魚ではないため呼吸ができなくなれば溺れます。

「水棲ガメなのだから、水中で生活していても大丈夫」と考えてしまいがちですが、これは半分正しく、半分誤解です。

水棲ガメは長時間泳ぐことができますが、魚のようにエラ呼吸をしているわけではありません。

カメは私たち人間と同じように肺で呼吸をする爬虫類です。

そのため、一定時間ごとに水面へ浮上し、新鮮な空気を吸わなければ生きることはできません。

健康なカメであれば、

  • 水底から泳いで浮上する
  • 呼吸をする
  • 再び潜る

という動作を何度も繰り返しています。

しかし、

  • 浮上できない
  • 体が挟まる
  • 疲れ果てて泳げない
  • 病気で力が入らない

という状況になると、水中で呼吸ができず、溺死してしまいます。

つまり、「泳げる」と「絶対に溺れない」は全く別の話なのです。


なぜカメは長時間息を止められるの?

代謝を下げる能力がありますが、それでも無限に潜っていられるわけではありません。

「カメは何時間も水中にいるから、息をしていないのでは?」と思われる方もいらっしゃいます。

確かにカメは、人や犬・猫よりもはるかに長い時間、水中で過ごすことができます。

これは、

  • 代謝を低下させられること
  • 体温が環境温度に左右される変温動物であること
  • 酸素消費量が少ないこと

などによるものです。

さらに冬眠中には代謝が著しく低下するため、非常に長時間潜っているように見えることもあります。

しかし、これは健康で自由に浮上できる状態での話です。

水中で体が挟まっていたり、極度に疲労していたりすれば、やがて肺の酸素は尽き、呼吸ができなくなります。

つまり、「長く潜れる能力」と「溺れない能力」は同じではありません。


水棲ガメが溺れる主な原因

多くは飼育環境に原因があり、飼い主さまが防げる事故です。

専門書や臨床経験からも、水棲ガメの溺水事故にはいくつかの共通した原因があります。考えられることをあげてみましょう。

① レイアウトに体が挟まる

最も多い原因の一つです。

例えば、

  • 岩の隙間
  • 流木
  • シェルター
  • 人工の飾り
  • フィルターの裏側
  • 浮島の支柱

などに甲羅や前肢・後肢が挟まると、水面まで浮上できなくなります。

飼い主さまは「隠れ家があった方が落ち着くだろう」と善意で設置していても、それが命に関わる事故につながることがあります。

「入れる隙間」ではなく、「途中で挟まらない隙間」であることが重要です。

② 浮島や陸地へ上がれない

カメは泳ぎ続けられる動物ではありません。

自然界では、

  • 浮木
  • 河岸
  • 浅瀬

などで頻繁に休息しています。

水槽でも同様に、途中で休める場所が必要です。

もし、

  • スロープが急すぎる
  • 滑りやすい
  • 浮島が不安定
  • 登る場所がない

という状態では、体力を消耗し続け、やがて浮上できなくなる危険があります。

③ 水流が強すぎる

近年は高性能な外部フィルターを使用する家庭が増えています。

しかし、小型のカメや子ガメでは、水流が強すぎることで、

  • 流される
  • 泳ぎ続ける
  • 休めない
  • 疲弊する

という状態に陥ることがあるかもしれません。

「水をきれいに保つこと」と「泳ぎやすい環境」は別問題です。

フィルターを選ぶ際には、水流の強さにも配慮しましょう。

④ 病気やケガで泳げなくなる

呼吸器疾患、骨折、代謝性骨疾患(MBD)、神経疾患などでは、十分な遊泳能力を維持できなくなることがあります。

また、衰弱しているカメでは、普段なら問題のない水深でも浮上できなくなることがあります。

「昨日までは元気だったから大丈夫」とは限りません。

病気のカメほど、溺水のリスクは高くなると考えてください。

⑤ 水温の急激な低下

カメは変温動物です。

そのため、水温が急激に下がると、

  • 筋肉の動き
  • 心拍数
  • 代謝
  • 遊泳能力

が低下します。

ヒーターの故障や急激な寒波では、思うように泳げなくなり、水底から浮上できずに溺れる事故も考えられます。

特に春先や秋口は、昼夜の気温差にも注意が必要です。


子ガメ(ベビーガメ)は特に溺れやすい

子ガメは体力や遊泳能力が未熟なため、成体以上に溺水事故が起こりやすく、飼育環境への配慮が重要です。

「まだ小さいから浅い水の方が安全ですよね?」

診察でもよく受ける質問です。

確かに、極端に深い水槽は子ガメの負担になることがあります。しかし、「浅ければ安全」「深ければ危険」と単純に考えることはできません。

重要なのは水深そのものではなく、子ガメが無理なく呼吸と休息を繰り返せる環境になっているかです。


子ガメはなぜ溺れやすいのでしょうか?

体力・筋力・遊泳能力が未発達で、思わぬトラブルから自力で回復できないためです。

子ガメは成体に比べて、

  • 筋力が弱い
  • 長時間泳ぎ続けられない
  • 水流の影響を受けやすい
  • 障害物を乗り越える力が弱い
  • 仰向けになると起き上がれないことがある

といった特徴があります。

そのため、少し疲れただけでも休息場所へたどり着けず、そのまま力尽きてしまうことがあります。


「ひっくり返る事故」は意外に多い

仰向けになって元に戻れないことが、溺死の原因になることがあります。

特にベビーガメでは、

  • 浮島から落ちる
  • 流木に乗ろうとして転倒する
  • 水流に押される
  • 餌を食べようとして体勢を崩す

など、日常的な行動がきっかけで仰向けになることがあります。

健康な成体であれば比較的容易に元へ戻れますが、小さな個体では難しい場合があります。

そのため、転倒・落下しにくいと同時に、はまって抜け出せなくなるようなレイアウトは避けることも重要です。


子ガメの適切な水深とは?

「○cm」という決まった水深ではなく、子ガメの大きさと休息場所を基準に考えましょう。

インターネットでは、

  • 甲羅の高さの2倍
  • 甲長の2倍
  • 浅い方が安全

など様々な情報があります。実際には品種・年齢・健康状態・遊泳能力によって適切な水深は変わりますが、甲羅の横幅の2倍を目安にされるといいと思います。

一般的には、

  • 水面まで無理なく泳げる
  • 途中で休める
  • 陸地へ簡単に上がれる

この3つを満たすことが大切です。

水深だけに注目するよりも、「安全に呼吸できる環境か」という視点で考えましょう。


浮島は「ある」だけでは不十分

登りやすく、滑りにくく、安定していることが重要です。

浮島は休息や日光浴(バスキング)のために欠かせません。

しかし、

  • 傾斜が急すぎる
  • 表面が滑る
  • 水面から高すぎる
  • 揺れが大きい

ような浮島では、小さなカメはうまく登れません。

診療でも、「浮島は設置していたのに使えていなかった」というケースを経験します。

改めて、ご自宅のカメが実際にスムーズに登れているか観察してみましょう。


シェルターは安心できる場所ですが、危険にもなります

体が入る隙間より、「途中で挟まらない構造」であることが重要です。

カメは狭い場所へ入りたがる習性があります。

そのため、

  • 岩を重ねる
  • 流木を組む
  • シェルターを置く

といったレイアウトは、精神的な安心につながります。

しかし、途中で甲羅が引っ掛かる構造は非常に危険です。

「入れるけれど出られない」という状態が最も事故につながります。

レイアウトを組んだ後は、実際に手で押して動かないか、隙間が変化しないかまで確認してください。


フィルター選びも溺水予防のポイント

水質だけでなく、水流の強さも確認しましょう。

「ろ過能力が高い=良いフィルター」とは限りません。

子ガメでは、

  • 水流に流される
  • 休めない
  • 常に泳ぎ続ける

状態になることがあります。

また、吸水口に近づきすぎて四肢が吸い付く事故も起こり得ます。スポンジカバーなどを利用し、安全性を高めることも有効です。


屋外飼育でも溺水事故は起こります

池やビオトープでも、人工池でも事故は起こります。

屋外だから安全ということはありません。

例えば、

  • コンクリート池の壁が滑る
  • 急な段差がある
  • ネットに絡まる
  • 落ち葉が積もる
  • 流木に挟まる

など、自然環境でも人工環境でも事故は起こります。

また、大雨の後には流木や植物の配置が変わり、思わぬ危険が生じることもあります。

定期的に池全体を点検する習慣をつけましょう。


毎日5分でできる溺水事故チェック

日々の観察が最大の予防になります。毎日、以下の項目を確認してみてください。

□ 浮島までスムーズに登れているか

□ 水流が強すぎないか

□ 新しい隙間ができていないか

□ レイアウトが崩れていないか

□ ヒーターは正常に作動しているか

□ 元気や食欲に変化はないか

□ 呼吸が苦しそうではないか

□ 斜めに浮いたり泳いだりしていないか

これらを確認するだけでも、多くの事故を未然に防ぐことができます。


カメが溺れたらどうすればいい?応急処置と動物病院での治療

まずは水から救出し保温を行い、自己流の処置は避けてできるだけ早く動物病院を受診してください。

目の前でカメが溺れていたら、誰でも慌ててしまいます。しかし、このときの対応次第で救命率や、その後の肺炎などの合併症のリスクが変わることがあります。まずは落ち着いて行動することが大切です。

まず最初に行うべきこと

水から出し、呼吸しやすい姿勢で保温しながら受診を準備しましょう。

まずは速やかに水中から救出してください。

その後、

  • 静かな場所へ移動する
  • タオルなどで軽く頭部の水分を拭く
  • 適正温度までゆっくり保温する
  • 呼吸の有無や反応を確認する

ことが重要です。

冬場やエアコンの効いた室内では、低体温によってさらに状態が悪化することがあります。

ただし、急激な加温は避け、普段飼育している適正温度を目安にゆっくり温めましょう。


やってはいけない応急処置

インターネットで紹介されている自己流の蘇生法には危険なものがあります。

慌てるあまり、次のような処置をしてしまう方がいます。

  • 激しく振る
  • 強く胸や甲羅を押す
  • 高い位置から落とす
  • 長時間逆さまにする
  • 無理に口を開ける

これらはカメに大きな負担を与える可能性があります。

特に甲羅は硬くても、中には肺や心臓、肝臓など重要な臓器があります。無理な圧迫で改善することは期待できず、かえって状態を悪化させることがあります。


「逆さまにして水を出す」は本当に正しい?

長時間逆さまにすることは推奨されません。

昔から「逆さまにすると肺の水が出る」と言われることがあります。しかし実際には、肺に入った水を十分に排出できるとは限らず、逆に呼吸を妨げたり、内臓へ負担をかけたりする可能性もあります。

一時的に診察までの短時間で姿勢を変えることがあっても、長時間逆さまにし続けたまま様子を見ることは避けましょう。


助かったように見えても安心できません

数時間から数日後に肺炎を発症することがあります。

水から救出した直後に、

  • 動き始めた
  • 普通に泳いでいる
  • 餌を食べた

という場合でも安心はできません。誤って吸い込んだ水によって、数時間から数日後に肺炎や呼吸器感染症を発症することがあります。そのため、「元気だから様子を見よう」ではなく、一度診察を受けることをおすすめします。


動物病院ではどのような検査をするのでしょうか?

肺の状態と全身状態を評価し、合併症がないか確認します。

状態に応じて、

  • 身体検査
  • 呼吸状態の確認
  • X線検査
  • 超音波検査
  • 血液検査(必要に応じて)

などを行います。

特にX線検査では、

  • 肺の異常
  • 誤嚥性肺炎
  • 肺炎の進行
  • 浮力異常の原因

などを評価できます。

見た目では元気そうでも、画像検査で異常が見つかることがあります。


治療ではどんなことをするの?

保温・酸素管理・輸液・感染対策が中心になります。

状態に応じて、

  • 保温
  • 酸素吸入
  • 輸液
  • 抗菌薬
  • 栄養管理
  • 呼吸状態のモニタリング

などを組み合わせて治療します。

肺炎が進行している場合には、治療期間が数週間以上に及ぶこともあります。


このような症状があればすぐ受診してください

呼吸がおかしい、浮き方がおかしい場合は緊急性があります。

次のような症状がみられたら、できるだけ早く受診してください。

  • 口を開けて呼吸している
  • 鼻から泡が出る
  • 首を大きく伸ばして呼吸している
  • 水面で傾いて浮く
  • 水底から動かない
  • 元気や食欲がない
  • 呼吸音がおかしい

これらは肺炎や呼吸障害のサインかもしれません。


実際によくある事故例

事故は特別な環境ではなく、一般的な家庭の水槽でも起こります。

実際によくあるケースには、

  • 浮島の支柱に挟まった
  • フィルター裏に入り込んだ
  • 流木の隙間から出られなかった
  • 子ガメが強い水流で疲弊した
  • ヒーター故障で低体温になった
  • 屋外池のネットに絡まった

などがあります。

どれも「まさか」と思うような事故ですが、日頃の点検で予防できるものが少なくありません。


まとめ

水棲ガメは泳ぎが得意ですが、決して「溺れない動物」ではありません。

肺で呼吸する以上、水面へ上がれない状況になれば、健康なカメでも命を落とす可能性があります。

特に、

  • 子ガメ
  • 病気のカメ
  • 高齢のカメ

では、より注意が必要です。

安全な水深やレイアウト、水温管理、毎日の観察が、溺水事故を防ぐ最も大切なポイントです。

万が一溺れてしまった場合は、自己流の処置に頼らず、できるだけ早く爬虫類診療に対応した動物病院へご相談ください。


よくある質問(Q&A)

Q1. 水棲ガメでも本当に溺れますか?

はい。肺呼吸をしているので、水面へ上がれなくなると溺れることがあります。

Q2. ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)も溺れますか?

はい。種類を問わず、水棲ガメは溺れる可能性があります。

Q3. 子ガメは浅い水で飼った方が安全ですか?

水深だけでなく、休憩場所や登りやすい陸場を設けることが重要です。

Q4. 溺れた後に普通に泳いでいます。病院へ行く必要がありますか?

はい。誤嚥性肺炎などが遅れて発症することがあるため、受診をおすすめします。

Q5. 逆さまにして肺の水を出した方がいいですか?

長時間逆さまにすることは推奨されません。まずは保温し、受診してください。

Q6. 陸場は必ず必要ですか?

はい。休息やバスキングのために重要で、溺水予防にも役立ちます。

Q7. 水流は強い方が水質維持に良いですか?

濾過効率が良くなり水質は保ちやすくなりますが、子ガメや衰弱した個体には負担になることがあります。

Q8. 屋外の池でも溺れることがありますか?

あります。段差やネット、流木などが事故の原因になることがあります。

Q9. 冬でも溺れることがありますか?

はい。低水温で活動性が低下すると、浮上できず溺れる危険があります。

Q10. 溺水事故を防ぐ一番の方法は何ですか?

安全なレイアウト、水温管理、毎日の観察を続けることが最も効果的です。


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