~小さな命を守るために、知っておきたいサインとは~
デグーは南米原産の齧歯類で、人懐こく知能も高く、日本でも「しゃべるように鳴く小動物」として人気を集めています。しかし、その飼育や診療においてはまだ情報が少なく、犬猫に比べると体調不良を見逃されやすい動物です。
彼らは本能的に「体調不良を隠す」傾向があるため、飼い主さまがいち早く小さな異変に気づくことが、命を守るカギになります。
今回は、日本でもよく見られるデグーの代表的な疾患について、原因・症状・予防・治療まで詳しくご紹介します。

1. 歯のかみ合わせ不良(不正咬合)
〜「食べない」原因の約半分は歯にあります〜
🔍どういう病気?
デグーの前歯(切歯)も奥歯(臼歯)も一生伸び続けます。これは「常生歯(じょうせいし)」と呼ばれる構造で、自然界では硬い草や枝をかじることで適切な長さに保たれています。
しかし、家庭での飼育環境では摩耗不足や咬み合わせのズレにより、歯が異常に伸びてしまうことがあります。これが「不正咬合(ふせいこうごう)」です。
🐾主な症状
- 食欲が落ちる、好きなものしか食べない
- 涙が増える(上顎の臼歯が涙管を圧迫)
- よだれが出る(口の中を傷つけている)
- 体重が少しずつ減っている
- 前足で口の周りをかく仕草を繰り返す
🧪診断と治療
口を開けても奥歯は見えません。確定診断には麻酔下での口腔内検査と頭部レントゲンが必要です。治療では、臼歯を専用器具で整え、必要に応じて抗炎症薬や痛み止めを併用します。場合によっては数週間から数カ月ごとに定期的な歯のトリミングが必要になる子もいます。
🛡️予防のポイント
- チモシー(牧草)を主食にし、繊維質をしっかりと摂らせる
- 金網ケージを使わない
- かじり木を与える
- ペレット、おやつに偏らないよう食事管理を徹底

2. 糖尿病
〜「甘いもの」はデグーにとって毒になり得ます〜
🔍どういう病気?
デグーは遺伝的に「糖質代謝能力が低い」とされ、ヒトのII型糖尿病に近い病態を示します。すなわち、血糖値を下げるホルモン(インスリン)に対して、体が鈍感になる(インスリン抵抗性)状態です。
一度発症すると完治は難しく、生涯の食餌管理が必要になります。
🐾主な症状
- 水をたくさん飲むようになった(多飲)
- おしっこの量が増える(多尿)
- 活動性が落ちた、寝ている時間が長くなった
- おなかの毛がベタベタする(糖分の高い尿のせいで)
🧪診断と治療
尿検査で「尿糖」の有無を確認し、必要に応じて血糖測定(採血)のような血糖管理指標の測定を行ないます。
治療はインスリン注射ではなく、厳格な糖質制限食が基本になります。具体的には「穀物・果物・甘いおやつ」の全面カットが必要です。
🛡️予防のポイント
- 牧草を中心として、デグー専用ペレットで補う
- ペレットの成分表を必ず確認(糖蜜や穀類に注意)
- 果物や人の食べ物は与えない

3. 外傷・尾のすりむけ(Tail Slip)
〜つかんではいけない部位、それが“しっぽ”です〜
🔍どういう病気?
デグーの尾には、尾の皮膚がすりむける機能があります。これは皮膚と皮下組織がゆるく繋がっている構造のためで、強くつかむと皮膚がずるっと剥け、その部分から先は壊死してしまいます。
🐾主な症状
- 尾の先がなくなっている
- 皮膚がむけて筋肉や骨が見えている
- 出血がある、腫れがある
- 尾の周囲を気にして舐めている
🧪治療
軽度ならば抗生物質と消毒などで管理できますが、尾の一部を外科的に切除することもあります。完全に元通りにはなりませんが、生活には支障をきたしません。
🛡️予防のポイント
- 絶対に尾をつかまない・踏まない
- 捕まえるときは背中からやさしく包むように
- 小さなお子さんがいる場合は注意喚起を

4. 皮膚疾患(真菌・ダニなど)
〜毛が抜けた…その原因、カビかもしれません〜
🔍どういう病気?
皮膚病には、カビ(皮膚糸状菌)・ダニ(疥癬、毛包虫)・細菌感染など、さまざまな原因があります。共通しているのは、免疫力の低下やストレス、過密飼育などが誘因になるということです。
🐾主な症状
- 顔や肩のあたりの脱毛
- 赤くかさぶたができている
- 掻くしぐさが増えた
- 毛づやが悪くなった
🧪診断と治療
皮膚をこすって顕微鏡で観察したり、ウッド灯(ブラックライト)で蛍光を見ることで診断します。
治療は原因に応じて、抗真菌薬や駆虫薬、抗生物質の塗布・内服を行ないます。
🛡️予防のポイント
- 清潔なケージ環境を保つ
- 床材の定期交換とケージや備品の日光消毒
- 他のペットとの接触を避ける

5. 生殖器トラブル(ペニス脱、腫瘍など)
〜デグーの男の子に多い、意外と見落とされる病気〜
🔍どういう病気?
オスのデグーに多く見られるのが「ペニス脱(陰茎脱出)」です。本来は排尿・交尾時に一時的に出てくる陰茎が、戻らなくなってしまう状態です。
また、陰茎の基部に「毛の輪(hair ring)」ができて締め付け、血流を阻害することもあります。
🐾主な症状
- 性器が赤く腫れている
- ペニスが出たまま戻らない
- 排尿がうまくできない、鳴きながら排尿する
- 性器を執拗に舐めている
🧪診断と治療
脱出が確認された場合は、生理食塩水でやさしく洗浄し、毛の輪があれば除去します。長時間戻らなかった場合には壊死の恐れもあり、外科的切除が必要になることもあります。
🛡️予防のポイント
- 毎日の体チェックで性器周囲を見る習慣を
- 過剰なグルーミングがないか行動を観察
- 多頭飼育ではストレスによるトラブルが起きやすいため注意

📝まとめ:デグーの「いつもと違う」は命に関わる
デグーは小さな体に大きなエネルギーと繊細な感情をもった生き物です。見た目は元気そうでも、病気が進行してから初めて症状が出ることが多いため、「何か変だな」と思った時点での受診が非常に重要です。
当院では、デグーを含むエキゾチックアニマルの診療を数多く行なっており、歯科処置・皮膚病・内分泌疾患・外科対応まで可能です。
飼い主さまの「こんなことで病院行っていいのかな?」というお気持ちにも、しっかりと寄り添った診療を行なっています。
気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。LINE予約もご利用いただけます。

愛知のヘソ豊田市周辺の岡崎市、日進市、安城・刈谷市にお住いデグーの飼い主さまへ、
当院の獣医師はエキゾチックペット、猫、小型犬などの広範な動物種に対する専門的な知識と豊富な経験を有しております。どんなペットにも信頼できるケアを提供いたします。
つまり、あらゆるペットに対応する総合的な診療を行なうことができます。
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かもがわ公園小動物クリニックは愛知県豊田市役所高橋出張所前のかもがわ公園の近くにございます。
デグーの病気のことなら、かもがわ公園小動物クリニック
愛知県豊田市東山町の動物病院、アロハオハナ動物病院
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