フクロモモンガの健康ガイド:栄養と飼育環境のポイントについて

フクロモモンガを診療する獣医師

人気急上昇中のフクロモモンガを長く健康に飼うために知っておきたい栄養管理と病気予防の秘訣

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

フクロモモンガはアメリカでは、「Sugie(シュギー)」は特にフクロモモンガの愛好家の間で親しみを込めて使われる名前です。また、単に「Sugar(シュガー)」と呼ぶこともありますが、「Sugie」という呼び方が最も一般的な愛称の一つです。そして、日本でもペットとしての人気が急上昇しているエキゾチックアニマルの一つです。しかし、フクロモモンガの飼育に必要な環境や栄養管理に関する研究や情報がまだ十分に普及しておらず、多くの飼い主さまがそのケアに悩んでいます。この記事では、獣医師としての経験をもとに、栄養失調やカルシウム不足、歯や皮膚の健康に関するケアの方法について、日本の飼い主さま向けに詳しく解説します。

フクロモモンガの基礎知識

フクロモモンガはオーストラリア原産の小型有袋類で、自然界では主に樹上で生活しています。彼らは夜行性で、非常に社会的な動物であるため、複数頭で飼うことが推奨されます。飼育する際には、彼らの自然環境に近い状態を整えることが健康維持にとって非常に重要です。

1. 飼育環境

フクロモモンガは運動量が多く、広いスペースが必要です。狭いケージで飼育すると、ストレスが溜まり、健康問題が発生しやすくなります。理想的なケージは高さがあり、彼らが自由に動き回れることができるような構造が良いです。さらに、夜行性のため、昼間は暗い場所で休むことができるよう、隠れ家を提供することも重要です。ケージ内には枝やロープなど、彼らが登ったり遊んだりできるものを配置し、運動不足を防ぎます。

ケージ内の温度と湿度も重要です。適切な温度は22〜28℃です。寒すぎると低体温症になりやすく、逆に暑すぎると熱中症のリスクがあります。また、湿度は50〜60%程度が理想的で、乾燥しすぎると皮膚や呼吸器に問題が生じることがあります。

2. 栄養管理と食事

フクロモモンガの健康を維持するために、正しい栄養管理は欠かせません。自然界では彼らは季節により、果物、昆虫、樹液などを食べており、飼育下でもそれに近いバランスを保つ必要があります。しかし、飼育環境では栄養バランスが偏りがちで、特にカルシウム不足が大きな問題となります。

フクロモモンガはカルシウム不足により「低カルシウム血症(カルシウム欠乏症)」になりやすい動物です。この状態になると骨がもろくなり、骨折しやすくなるだけでなく、最悪の場合、筋肉のけいれんを引き起こすこともあります。このような健康問題を防ぐために、以下の栄養管理ポイントを押さえておくことが重要です。

  • バランスの取れた食餌:フクロモモンガ専用のペレットフードを基本とし、果物や昆虫を補助的に与えると良いでしょう。果物だけを与えるのは栄養が偏るため避けるべきです。また、昆虫はタンパク食として非常に重要ですが、昆虫だけに頼るのも栄養不良になりかねません。果物も昆虫も、カルシウムが少なく、リンが多いのです。食事のバランスは、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルのバランスが取れていることが重要です。
  • カルシウムとリンのバランス:カルシウム(Ca)とリン(P)の比率は非常に重要です。理想的には、カルシウムがリンの2倍(Ca:P= 2:1)を目指すべきです。カルシウムが不足すると骨が弱くなり、逆にリンが多すぎるとカルシウムの吸収が阻害されるため、バランスを取ることが肝要です。
  • サプリメント:カルシウム不足を防ぐために、食餌にカルシウムサプリメントを加えることを検討しましょう。また、ビタミンDもカルシウムの吸収を助けるため、特に紫外線を浴びる機会が少ない飼育下では、ビタミンD3のサプリメントも有効です。ただし、ビタミンA,D,Eなどの脂溶性ビタミンは摂りすぎると中毒を起こすことが分かっていますので、毎日与えるのは避けましょう。

3. 健康管理

フクロモモンガの健康管理は、飼育環境と食事だけでなく、日常的な観察が重要です。次に、とくに注意すべき健康問題と、その予防策について説明します。

栄養失調

フクロモモンガは非常に小さな体ですが、活発で高いエネルギーを必要とします。そのため、偏った食事や不適切な食餌スケジュールは、栄養不足を引き起こす可能性があります。栄養失調の兆候としては、体重減少、活力の低下、毛並みの悪化などが挙げられます。

  • 予防策:定期的な体重測定を行ない、急激な体重減少が見られた場合は、すぐに動物病院に相談することが重要です。
カルシウム不足

前述のように、カルシウム不足はフクロモモンガにとって深刻な健康問題です。カルシウム不足により、筋肉のけいれんや骨の脆弱化が起こることがあります。

  • 予防策:食餌にカルシウムサプリメントを適切に加えること、またはカルシウムが豊富な餌を与えることが推奨されます。とくに昆虫食のバランスを整えるため、カルシウムを含む粉末を昆虫にまぶして与えることが一般的です。
歯の健康

フクロモモンガの歯は、ユーカリの樹皮を齧って樹液を舐めるために、「ノミ」のような鋭い形状をしています。しかし、金属のような硬すぎる物を齧ることで、損傷してしまうことがあります。歯のダメージは歯のみならず口腔内の問題を引き起こし、食欲不振や痛みの原因となることがあります。歯を使う欲求を満たすために、枝を齧らせてあげるのは、環境エンリッチメント対策として実施してあげるとよいと思います。

  • 予防策:ユーカリなどの特別な齧り木をケージ内に置くことで、フクロモモンガが自然に近い状況を模した環境を整えてあげましょう。
皮膚の健康

フクロモモンガは比較的繊細な皮膚を持っているため、乾燥やストレスに敏感です。皮膚の健康を維持するためには、適切な湿度管理と栄養が重要です。

  • 予防策:ケージ内の湿度を適切に保ちましょう。また、食餌にオメガ3やオメガ6脂肪酸を含む食品を追加することで、皮膚の健康をサポートできます。

4. 病気の兆候と緊急対応

フクロモモンガは野生では捕食者から身を守るため、体調が悪くても症状を隠す傾向があります。そのため、飼い主さまは細かい変化に気づくことが非常に重要です。以下は、フクロモモンガが見せる病気の兆候とその対策です。

  • 体重の急激な変化:定期的な体重測定は重要で、体重が減少している場合はすぐに対策を講じる必要があります。
  • 食欲不振:食欲が急に減少した場合、消化器系の問題や歯の問題のほか、さまざまな病気が疑われます。
  • 活動性の低下:夜行性のフクロモモンガが夜に活発でなくなる場合、健康問題が疑われます。
  • 毛並みの悪化:被毛がパサついたり抜けたりする場合、栄養不足やストレス、皮膚の病気が考えられます。

緊急対応

いかがでしたか?フクロモモンガではまだまだ分かっていないことが多く、これがベストという飼育方法(環境・栄養)が明らかになっていません。そのため体調不良を示した場合、すぐに当院にご相談いただけるように、普段からの観察がとても重要です。このために、健康診断の定期的な受診は必要で、LINEでお気軽にご相談ができる体制は、飼い主さまにとって大きなアドバンテージになると自負しております。今後もこの体制については維持していきますので、ぜひご活用ください。


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