カメの鼻水は病気のサイン?放置NGの症状と治療法を獣医師が解説🐢

カメのラニーノーズシンドロームについて

最終更新日:2026年4月30日

受診すべき危険サインと飼い主さまが今すぐできる対処

この資料は、アロハオハナ動物病院の院長がカメの鼻水の症状と適切な対処法について専門的な視点から解説したものです。カメの鼻水には一時的な生理現象と深刻な病気の両面がありますが、持続的な症状や呼吸の乱れが見られる場合は早期の受診が不可欠であると強調しています。特に飼育環境の温度不足や不適切な床材が主な原因となりやすく、免疫力の低下が重症化を招くリスクについて詳しく説明されています。ご家庭での自己判断や人用の薬の使用を固く禁じる一方で、病院で行われる抗菌薬投与や吸入療法(ネブライジング)などの具体的な治療プロセスも紹介しています。最終的に、異変を感じた段階で迅速に獣医師の診察を受けることが、カメの健康を守るための最も重要な鍵であると結論付けています。

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

カメの鼻水は軽度なら生理現象のこともありますが、多くは感染症や環境不良が原因であり、早期受診が重要です。今回は、陸棲カメでよく見られる、ラニーノーズシンドローム(Runny Nose Syndrome;RNS)についてのお話をしていきます。ラニーノーズとは鼻水が出ているということです。カメにおいて鼻水が出る原因はたくさんありますが、何が原因かはなかなか分からないので、鼻水が出ている症状を示す病気を一括りにしてこう呼びます。

カメの鼻水は正常?それとも病気?

カメの鼻水は、すべてが病気というわけではありません。実際の臨床現場でも、生理的な一時的分泌と、治療が必要な病的鼻汁は明確に区別されます。
この判断を誤ると、受診が遅れて重症化するケースがあるため、飼い主さまが見極めるポイントを理解しておくことが重要です。

◆正常(生理的)な鼻水

以下のような場合は、一時的な生理現象である可能性が高いとされています。

  • 水を飲んだ直後に見られる透明な鼻水
     → 余分な水分が鼻腔から排出されている状態
  • 水中から上がった直後の軽度な分泌
     → 呼吸再開時の一過性の反応

これらは通常、短時間で自然に消失し、繰り返さないのが特徴です。
また、食欲・活動性・呼吸状態に異常がなければ、過度に心配する必要はありません。

◆異常(病的)な鼻水

一方で、以下のような症状が見られる場合は、呼吸器疾患・口腔内疾患を中心とした病的状態が疑われます。

  • 鼻水が数日以上持続する
  • 粘り気のある(粘稠性)鼻水や、泡状の分泌物
  • 呼吸時に音がする(ヒューヒュー、ピーピー)
  • 前肢で、眼や鼻をこする
  • 眼が腫れぼったくなる
  • 口を開けて呼吸している(開口呼吸)

これらは、欧米の爬虫類臨床でも上部気道炎(Upper Respiratory Tract Disease)や細菌感染の典型所見とされています。

特に注意すべきなのは、カメは症状を隠す動物であり、鼻水が見える時点で、すでに病状が進行していることが多いという点です。

👉見極めのポイント(重要)

臨床的には、以下の2点で判断すると分かりやすくなります。

  • 「一時的か、持続的か」
  • 「透明でサラサラか、粘つき・泡があるか」


一時的で透明 → 生理的の可能性
持続・粘稠・呼吸異常あり → 病的の可能性が高い

◎獣医師からの重要なアドバイス

「様子を見ていたら悪化した」というケースは非常に多く見られます。

特に以下に該当する場合は、早めの受診を強く推奨します。

  • 鼻水が2〜3日以上続く
  • 呼吸がいつもと違う
  • 食欲や元気が低下している

カメの呼吸器疾患は、早期であれば比較的コントロールしやすく、遅れるほど治療が長期化・重症化する傾向があります。

違和感を感じた時点での対応が、その後の予後を大きく左右します。


カメの鼻水の主な原因

① 環境要因(最頻)

おそらく寒冷感作と床材の曝露が多いと考えています。

  • 低温(寒冷感作):免疫抑制
  • 乾燥
  • 床材:粉塵、アンモニア

👉 特に「温度」は最重要で、臨床的に最も多い原因

寒冷感作とは、適温以下での飼育を言います。これは、すぐに症状が出るわけではなく、いわゆるボディーブローのようにじわっと効く感じです。(スポーツに無知なので、合っているか分かりません)

免疫が落ちてしまい、何でもない微生物にやられてしまいます。これを日和見感染といいます。

また、床材は粉塵(ホコリ)がたつものはすべて疑わしいです。まずは、人工芝、ペットシーツ、新聞紙などの、ホコリのたちにくいものを使いましょう。治ってからも、できれば、これらの素材が安心です。いつまで病原体を排出しているか分からないので、毎日気軽に交換できる素材がお勧めです。

例えば、砂、ヤシガラ、ウッドチップなどは、誤飲事故の受診例が多いこともあり、さらに寄生虫の温床にもなるのでお勧めできません。検便で消化管の寄生虫が否定的になったら、石板、大きな砂利などは、毎日、きれいにできる条件なら、棲息域の再現としては見栄えもいいかもしれません。

検便についてはこちら→
検便の重要性を徹底解説|ペットの寄生虫を見逃さないための必須検査
爬虫類の検便手順について

② 感染症(重要)

欧米文献ベース:

  • グラム陰性菌(Aeromonas, Pseudomonas,Edwardsiella,Klebsiella,Pasteurella
  • グラム陽性菌(Staphylococcus,Streptococcus
  • Mycoplasma様感染
  • ウイルス(ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、イリドウイルス)
  • 真菌(カビ)
  • 寄生虫:水棲ガメ
  • 上部気道炎(URTD):副鼻腔、鼻腔
  • 下部気道炎(LRTD):気管、気管支、肺
    横隔膜がないので咳をすることができず、粘液などの分泌物が排出されず、肺炎に進行しやすい

👉 真のRNSはここ

③ 全身疾患

  • ビタミンA欠乏(扁平上皮化生):リクガメはビタミンAの前駆物質のβカロテン含有の野菜を食べているのでなりにくい
  • 免疫低下:ストレス、栄養不良、環境不良、寄生虫、脱水、過密が日和見感染症を助長
  • アレルギー:杉や松の花粉が原因になる可能性

👉 ビタミンA欠乏は何を食べているかが決め手


すぐ病院に行くべき危険サイン

カメの鼻水は軽度であれば様子を見られることもありますが、以下の症状が1つでも見られる場合は、緊急性が高い可能性があるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。

  • 口を開けて、首を伸ばして呼吸している(開口呼吸)
     → 呼吸が苦しく、酸素が十分に取り込めていない状態です。肺炎や重度の呼吸器感染が疑われます。
  • 泡状の鼻水が出ている
     → 気道内に炎症や感染が起きているサインで、細菌性呼吸器疾患の典型的な所見です。
  • 食欲が落ちている・元気がない
     → 全身状態の悪化を示しており、すでに病気が進行している可能性があります。
  • 目が腫れている・目やにが出ている
     → ビタミンA欠乏や感染症に伴う症状で、鼻水と併発するケースが多く見られます。

補足:迷った時の判断基準

以下に当てはまる場合も、受診を検討してください。

  • 鼻水が2〜3日以上続いている
  • 徐々に症状が悪化している
  • 飼育環境(温度・床材)に問題がある可能性がある

👉獣医師からの重要なポイント

カメは体調不良を隠す傾向があるため、目に見える症状が出た時点で、すでに中等度〜重度に進行していることも少なくありません。

特に呼吸器疾患は、早期治療で改善しやすい一方、放置すると急速に悪化することがあります。

「少しおかしい」と感じた段階での受診が、最も重要です。


ご自宅でやってはいけない対処

カメに鼻水が見られた際、良かれと思って行った対処が、かえって症状を悪化させてしまうケースは少なくありません。
以下の対応は避けましょう。

  • 人用の点鼻薬を使用する
     → カメに対する安全性や有効性は確認されておらず、粘膜障害や中毒を引き起こすリスクがあります。
     また、一時的に症状が軽く見えても、原因そのもの(感染など)は改善しないため悪化を招きます。
  • 保温せずに様子を見る
     → カメは変温動物であり、低温環境では免疫機能が低下します。
     適切な温度管理を行わないまま様子を見ると、感染症が急速に進行する可能性があります。
  • 床材だけ交換して安心してしまう
     → 床材撤去は真っ先に取り組むべき課題ですが、それだけでは不十分です。
     鼻水の原因は、細菌感染やビタミン欠乏、温度不適合など多岐にわたるため、床材撤去のみで改善するケースは限定的です。

◆獣医師からの重要なアドバイス

「少し様子を見れば治るだろう」という判断が、最もリスクの高い対応です。

カメの呼吸器疾患は、初期には軽く見えても、短期間で肺炎などの重篤な状態に進行することがあります。

  • 自己判断での投薬は行わない
  • まずは適切な保温(目安:28〜32℃)を確保:落ちた免疫力を上げる
  • その上で、早めに動物病院へ相談する

👉 正しい初期対応が、その後の回復率と治療期間を大きく左右します。


動物病院での治療内容

カメの鼻水は、単なる症状ではなく呼吸器疾患や全身状態の異常のサインであることが多いため、原因に応じた治療が必要です。
動物病院では、以下のような複合的なアプローチで治療を行います。

◆抗菌薬の投与(細菌感染が疑われる場合)

細菌性の上部気道炎や肺炎が疑われる場合には、抗菌薬を使用します。

  • 代表例:エンロフロキサシン など
  • 投与方法:注射または内服、点眼・点鼻

爬虫類では薬剤の代謝が哺乳類と異なるため、種や状態に応じた用量設計が不可欠です。
適切な抗菌薬選択と十分な投与期間が、再発防止の鍵となります。
脱水状態で抗生物質を使用すると、効かないばかりではなく、腎臓などへの臓器障害を生じる可能性があるので、輸液や温浴などを併用します。

◆ネブライゼーション(吸入療法)

呼吸器症状がある場合、霧状の薬剤を吸入させる治療を行います。

  • 気道の加湿
  • 分泌物の排出促進
  • 局所への薬剤到達

これにより、鼻水や呼吸状態の改善を促進します。
特に粘稠な鼻汁や呼吸音がある個体で有効です。

◆保温管理(最も重要な基礎治療)

カメの治療において、温度管理は非常に重要です。

  • 目安:28〜32℃前後を維持

適切な温度環境を整えることで、

  • 免疫機能の回復
  • 薬剤効果の向上
  • 食欲の改善

が期待できます。
逆に低温環境では、どれだけ薬を使っても治療効果が十分に発揮されません。

◆ビタミンAの補正(栄養性疾患への対応)

キャベツやレタスなどカロテンの少ない野菜のみの給餌などでビタミンA欠乏が強く疑われる場合には、補充療法を行います。

  • 粘膜の正常化
  • 眼症状(腫れ・目やに)の改善
  • 呼吸器粘膜の修復

特に、目の腫れや慢性的な鼻水を伴うケースでは重要な治療です。
ただし過剰投与は有害となるため、獣医師の管理下での補正が必要です。

獣医師からのメッセージ

カメの呼吸器疾患は、

  • 早期であれば比較的改善しやすい
  • 進行すると長期化・重症化しやすい

という特徴があります。

そのため、単一の治療ではなく、必要に応じた「抗菌薬+環境改善+支持療法」を組み合わせることが重要です。

「鼻水だけだから軽い」と判断せず、症状の背景にある原因を正確に診断することが最も重要です。

消化管などに寄生虫がいると、そちらに免疫が使われてしまい、本来の抵抗力が発揮されにくくなると考えていますので、検便・駆虫しましょう。


飼い主さまからよくある質問(Q&A)

Q. カメの鼻水は自然に治りますか?

軽度で一時的なものであれば自然に改善することもあります。
しかし多くは感染や環境不良が関与しており、放置すると悪化するため注意が必要です。

Q. 鼻水だけで元気なら様子見でいい?

元気や食欲があっても、鼻水が数日以上続く場合は異常の可能性があります。
特に徐々に症状が増えてくる場合は、早めの受診をおすすめします。

Q. 泡のような鼻水は危険?

泡状の鼻水は、気道内で炎症や感染が起きているサインです。
呼吸器感染や肺炎の初期〜進行段階で見られることが多く、早急な対応が必要です。

Q. 床材が汚いと鼻水は出ますか?

はい、掃除頻度が少ないと細菌が増殖し、感染のリスクが高まります。
また、アンモニア濃度の上昇は、粘膜刺激と免疫低下を引き起こします。

Q. 温度が低いと鼻水は出ますか?

低温環境では免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。
結果として、呼吸器疾患の発症リスクが上がり、鼻水が見られることがあります。

Q. ビタミン不足でも鼻水は出ますか?

特にビタミンA欠乏では、粘膜が異常化し分泌物が増加します。
その結果、鼻水や目の腫れなどの症状が同時に見られることがあります。

Q. 他のカメにうつりますか?

細菌、マイコプラズマ、ウイルスなどが原因の場合、同居個体に感染する可能性があります。
症状がある個体は隔離し、早期に診断・治療を行うことが重要です。

Q. 市販薬で治せますか?

市販薬では原因に対する十分な治療はできません。
特に細菌感染では適切な抗菌薬が必要となるため、自己判断は避けてください。

Q. 鼻水と肺炎は関係ありますか?

鼻水は上部気道炎の初期症状であることが多いです。
放置すると感染が下部気道へ進行し、肺炎に移行するリスクがあります。

Q. どのタイミングで受診すべき?

鼻水が一時的ではなく、または悪化傾向がある場合は受診を検討してください。
呼吸異常や食欲低下を伴う場合は、できるだけ早急な受診が必要です。


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