リクガメの便秘について:原因、治療法、そして予防策 – 健康管理のポイント🐢

カメと向き合う信頼感あふれる獣医師

最終更新日:2026年4月23日

環境と飼育管理によるリクガメの便秘を徹底解説

脱水症状や食餌、床材が引き起こす便秘の原因と、その治療法、さらに予防策までをリクガメの飼い主さまに向けて紹介します。

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

今回は、リクガメの食欲不振の原因としてよく見られる、便秘について的を絞ってお話ししたいと思います。便秘はリクガメにおいて一般的な健康問題であり、とくに飼育環境や管理方法に起因することが多いです。このブログでは、リクガメの便秘の原因、症状、治療方法、および予防策について、徹底的に解説します。

1. リクガメにおける便秘の定義と症状

リクガメにおける便秘とは、糞便の排出が困難になった状態を指します。通常、リクガメも定期的に糞便を排出しますが、その頻度は、年齢、活動量、食餌内容、そして飼育環境によって異なります。一般的には、リクガメは数日に一度排便を行ないますが、活動的な若いリクガメや、繊維質の多い食餌を摂っている場合は、より頻繁に排便することがあります。下記のように、未消化な植物の繊維が含まれた、少し形が崩れた便が正常といえると考えています。

下の写真はヒガシヘルマンリクガメの個体の理想的な排泄物で、葉大根に各種サプリメントを添加して与えているときの排泄物です。便には葉のたくさんの繊維が見え、液体尿は多く、蛋白質の老廃物である白い尿酸は少量にとどまっています。

上記の便を顕微鏡で見てみると、植物を分解してくれる役割を持つ健康的な数の鞭毛虫が活動しています。

一方で、適温より低い環境や活動が少ない場合、または水分が不足している場合には、排泄頻度が減少する傾向があります。とくに、冬眠中や低温状態での活動が抑制されている際には、排便が数週間から数ヶ月にわたって行なわれないこともあります。

便秘が発生すると、糞便の排出が遅れたり、完全に止まってしまったりします。便秘の兆候としては、以下のような症状が見られます。

  • 長期間にわたって排便がない
  • 便が丸かったり、粘土のように硬くなっている(下記写真)
  • 膨満感やお腹が張って呼吸が苦しそうな様子
  • 元気がない、または動きが鈍い
  • 食欲不振
  • 異常な行動(例えば、地面を掘り返す、頻繁に移動するなど)

リクガメが便秘になると、消化器系に問題が生じ、最終的には深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。そのため、早期の発見と治療が重要です。

2. 便秘の主な原因

リクガメの便秘は、多くの場合、飼育環境や管理方法に関連しています。とくに以下の要因が便秘の主な原因として挙げられます。

2.1 脱水症状

リクガメの便秘の最も一般的な原因の一つは、脱水です。リクガメは水分を必要とし、その水分が不足すると、便が硬くなり、排出が難しくなります。脱水症状は、とくにその種にとって温度湿度の不適切な環境や、水の供給が不十分な場合に発生しやすいです。

リクガメは自然界では、水たまりや朝露からも水分を摂取しますが、飼育下ではこれが難しくなることがあります。そのため、飼育環境においては、常に新鮮な水を提供し、リクガメが定期的に水を摂取できる環境を整えることが重要です。

2.2 不適切な床材

リクガメの飼育において、床材の選択も便秘に影響を与えることがあります。とくに、細かい砂や乾燥したヤシガラやバークチップなどの床材を使用している場合、これらがリクガメの消化管に入り込むことがあり、便秘を引き起こす原因となることがあります。

また、リクガメは本能的に床材を食べてしまうことがあり、不適切な床材が消化管内で詰まり、便秘を引き起こす可能性があります。そのため、消化管に影響を与えない適切な床材を選び、定期的に掃除を行なうことが重要です。

2.3 低繊維のペレット中心の食事

リクガメの食餌が低繊維でペレット中心の場合、便秘が発生しやすくなります。リクガメは植物食動物であり、自然界では豊富な繊維質を摂取することで健康な消化を保っています。しかし、飼育下では繊維分が不足しがちで、とくにペレット中心の食餌では必要な繊維が不足することがあります。

低繊維の食餌は、消化管の通過速度を遅くし、便が水分が吸収され過ぎて硬くなる原因となります。そのため、リクガメの食餌には新鮮な野菜や牧草など、繊維質が豊富な食材を取り入れることが重要です。

2.4 消化管内寄生虫などの疾患

リクガメの飼育環境に原因があるわけではなく、消化管内寄生虫、栄養不良、脊髄神経障害、膀胱結石、産卵などで排泄ができない場合もあります。下の写真は前出のヒガシヘルマンリクガメの初診時に見られた蟯虫(ぎょうちゅう)の卵と幼虫です。これをそのままにして経過してしまうと、たとえ駆虫(寄生虫を駆除すること)に成功しても、傷ついた消化管は100%健康な状態には復帰しないと考えています。

3.低温環境(慢性的な低温感作)による便秘・胃腸うっ滞

リクガメの便秘原因として、見落とされやすいのが慢性的な低温感作(chronic suboptimal temperature exposure)です。
飼い主様の中には「しっかり保温しているつもり」とおっしゃる方も多いのですが、実際に詳しく確認すると、その種に適したPOTZ(Preferred Optimal Temperature Zone:至適温度域)に達していないケースが少なくありません。

例えば、

  • ケージ内のホットスポットはあるが、全体の温度勾配が不十分
  • 冬場の夜間に室内の暖房をオフにすることで想定以上にケージ内温度が低下している
  • 冬場に「運動不足解消」のため、暖かいケージから室内へ散歩させている
  • 飼い主様は暖房をつけていて暖かいと感じていても、床付近は20℃未満になっている

このような環境では、リクガメの深部体温は徐々に低下し、消化管運動が著しく低下します。

爬虫類は外温動物であり、適切な体温を維持できなければ、胃腸の蠕動運動・食欲・消化酵素活性が低下します。
その結果、

食欲低下 → 消化遅延 → 胃腸うっ滞→便秘 → 脱水

という悪循環に陥ることがあります。

さらに問題なのは、慢性的な低温環境では腎血流も低下しやすく、水分摂取量も減るため、高尿酸血症、尿酸塩沈着、腎機能障害(痛風・腎不全)のリスクも高まる点です。特にヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ロシアリクガメなどは、冬季の管理ミスによってこうしたトラブルを起こすことがあります。

「少し部屋を歩かせるだけだから大丈夫」と思われがちですが、冬場のフローリングは想像以上に冷えており、リクガメにとっては非常に負担になる場合があります。

当院でも、便秘や食欲不振で来院したリクガメの飼育環境を詳しく伺うと、慢性的な低温曝露が背景にあったケースを複数経験しています。

予防のためには、

  • 飼育種ごとの適切なPOTZを理解する
  • 温度計を複数設置して床面温度も確認する
  • 冬場の室内散歩を安易に行わない
  • 温浴だけで根本解決しようとしない

ことが重要です。

便秘だけに注目するのではなく、「その子は本当に適正温度で生活できているか?」を見直すことが、根本的な改善につながります。

4. 便秘の治療方法

便秘のリクガメに対しては、まず原因を特定し、その原因に基づいた治療を行なうことが必要です。以下に、一般的な治療方法を紹介します。

4.1 水分補給

脱水が原因の便秘の場合、水分補給が最優先です。リクガメに新鮮な水を提供し、また温かい水にリクガメを浸ける(温浴)ことで、体内の水分バランスを改善することができます。温浴は、リクガメの消化管を刺激し、便の排出を促進する効果が期待できます。病院では点滴注射をして水分補給を行ないます。
下の写真のように、個体の大きさに合わせて、全身が入れる大きさの水入れを設置しておきましょう。水がきれいなら、飲んでくれることもありますし、浸かっていることでお尻の穴から水分を吸収してくれることもあります。

4.2 食餌の改善

低繊維の食餌が便秘の原因である場合、食餌の改善が必要です。繊維質が豊富な食材を増やし、とくに葉物野菜や牧草を積極的に与えることで、消化管の通過をスムーズにすることができます。

4.3 適切な床材の選択

床材が便秘の原因である場合、適切な床材に変更することが必要です。消化に影響を与えない、安全な素材を使用し、リクガメが床材を食べることを防ぐための対策を講じることが求められます。

4.4 獣医師による治療

便秘が深刻な場合や、上記の対策で改善が見られない場合は、すぐに獣医師の診察が必要です。獣医師は、便秘の原因を推定し、適切な治療をご提案します。場合によっては、薬物治療や浣腸、または外科的な処置が必要になることもあります。

4.5 番外編

名付けて、「振動療法」です。便秘の子が車に揺られてご来院されるとキャリーの中で排泄していることがあります。ドライブの振動は意外と効果があるかもしれません。あるいは、ハンドマッサージャーを使われている飼い主さまもいらっしゃいます。これらは明確なエビデンスがあるわけではありませんが、試しにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

5. 予防策

便秘を未然に防ぐためには、リクガメの飼育環境や管理方法に気を配ることが大切です。以下に、便秘を予防するための基本的な対策を紹介します。

5.1 水分管理

リクガメの飼育環境において、常に新鮮な水を提供し、適切な温湿度を保つことが重要です。とくに乾燥した環境では、定期的にリクガメが水浴びできるような大きさの水入れを用意しておくことが効果的です。

5.2 バランスの取れた食餌

リクガメには、繊維質が豊富なバランスの取れた食餌を提供することが必要です。新鮮な野菜や牧草を主食とします。ペレットは理想的な便が出ている場合に限って、補助的に与える程度に抑えることが望ましいと考えています。

下の写真のように、食餌をお皿に載せて与えるのはもちろんですが、床材が周りにあると、どうしても診断するときには、疑うことになります。食餌も床材もX線写真でみるとなかなか区別がつきません。

5.3 安全な床材の選択

床材の選択には注意が必要です。リクガメが床材を誤って食べることを防ぐため、安全で消化に影響を与えない素材を選びましょう。これに「ベスト」がないので、ベターを目指しましょう。また、定期的な掃除を行ない、清潔な環境を保つことも重要です。

あまりお勧めはしていませんが、口に入らないサイズの砂利を床材として使用することは、自然の環境を疑似体験させてあげることができるかもしれません。しかも、X線写真で写りますので、誤飲していれば確実に分かります。

5.4 定期的な健康チェック

リクガメの健康状態を定期的にチェックし、異常があればできるだけ早めに対処することが便秘の予防につながります。当院のようにLINEで獣医師に頻繁にコミュニケーションをとれることが重要と考えています。とくに便秘の兆候が見られた場合は、早めに対応することで深刻な健康問題になるのを防ぐことができます。

下記の写真のようなケージのレイアウトが無難なのかもしれません。

6. 結論

リクガメの便秘は、飼育環境や管理方法に関連することが多く、適切な対策を講じることで予防や改善が可能です。飼い主さまとしては、水分管理、食餌の改善、安全な床材の選択など、日々のケアに気を配ることが大切です。また、便秘が深刻化する前に、獣医師の診察を受け、適切な治療を行なうことが重要です。

今回のリクガメの便秘に関するお話はいかがでしたか?このブログを通じて、リクガメの飼い主の皆様が、リクガメの健康を守り、すぐに当院にご連絡をいただき、便秘などの健康問題が複雑・深刻化するのを予防するための参考にしていただければ幸いです。


よくある質問(FAQ)

Q1. リクガメが便秘でうんちが出ない時はどうすればいいですか?

まずは食欲、元気、排尿の有無を確認してください。
24〜48時間便が出ないだけでは必ずしも異常ではありませんが、食欲低下やぐったりしている場合は注意が必要です。温浴で改善することもありますが、異物誤食や重度の腸閉塞では悪化する可能性もあるため、まずは動物病院を受診しましょう。

Q2. リクガメの便秘に温浴は効果がありますか?

軽度の脱水や排便リズムの乱れでは改善することがあります。
ただし、毎回温浴でしか排便できない場合は、飼育温度・食事・脱水・基礎疾患を見直す必要があります。

Q3. リクガメが便秘になる原因は何ですか?

主な原因は以下です。

  • 水分不足
  • 低温環境
  • 繊維不足または偏った食事
  • 異物誤食(床材など)
  • 運動不足
  • 尿路結石
  • 消化管疾患

複数の原因が重なっていることもあります。

Q4. リクガメが餌は食べるのに便が出ないのはなぜですか?

消化管の動きが低下している可能性があります。
特に低温環境や軽度脱水では、食欲があっても便が出にくくなることがあります。

Q5. リクガメの便秘で病院に行く目安は?

以下があればできるだけ早めの受診をおすすめします。

  • 1週間以上排便がない
  • 食欲低下
  • 嘔吐様動作
  • 元気消失
  • 排尿異常

Q6. リクガメの便秘でマッサージしてもいいですか?

強い腹部圧迫は危険です。
卵塞や結石、腸閉塞がある場合、状態を悪化させる可能性があります。自己判断で強く触らないようにしましょう。

Q7. リクガメが冬に便秘になりやすいのはなぜですか?

冬は室温低下により、適正温度を維持できていないケースが増えるためです。
暖房していても床付近は低温になりやすく、慢性的な胃腸うっ滞を起こすことがあります。

Q8. リクガメの便秘で野菜を増やせば治りますか?

必ずしもそうではありません。
水分量、食物繊維バランス、カルシウム比率が重要で、果物の与えすぎは逆効果になる場合があります。

Q9. リクガメの便秘でレントゲン検査は必要ですか?

異物誤食、結石、卵塞、重度便秘が疑われる場合には非常に有用です。
触診だけでは分からないケースもあります。

Q10. リクガメの便秘は自然に治りますか?

軽度なら改善する場合もありますが、特に食欲低下や排尿異常を伴う場合は、腎疾患や消化管閉塞が隠れている可能性があります。


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