【獣医師解説】犬のレプトスピラ症|症状・感染経路・ワクチン・治療費まで徹底解説🐕

シーズーと日本人男性獣医師

最終更新日:2026年5月23日

犬のレプトスピラ症はワクチンと水たまり回避で予防できる人獣共通感染症です。

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。先日(2024.9月執筆当時)はノロノロ台風があり、いたるところに水たまりができていましたね。水たまりといえば、レプトスピラ症です。今回はレプトスピラについてお話しさせていただきます。

下記の動画がアップされましたので、まずはこちらからご覧ください。2分弱で、ポイントを押さえて解説してくれています。

犬のレプトスピラ症 啓発動画

レプトスピラ症について知り、愛犬を守りましょう

  1. レプトスピラ症とは:レプトスピラ菌が原因の人獣共通感染症で、特にネズミなどの野生動物が媒介し、水や土壌を汚染することで犬や人に感染する。
  2. 感染経路:犬は汚染された水源の飲水、汚染された土壌との接触、感染動物の尿や体液との接触を通じて感染する。とくに秋の台風シーズン発生が多い。
  3. 犬の症状:発熱、筋肉痛、嘔吐や下痢、黄疸、腎臓障害などが見られ、個体によって症状は異なる。
  4. 予防方法:レプトスピラワクチン接種、汚染された水源への接触禁止、汚染場所への立ち入り制限、異常を感じた際の早期受診が重要。
  5. 飼い主さまの注意:愛犬の散歩中は水たまりや汚染が疑われる場所を避け、定期的なワクチン接種を行ない、愛犬の健康管理を徹底することで感染予防に努める。

以下にそれぞれについて、詳しくお話しを進めていきます。

レプトスピラ症とは?

レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌が原因で起こる人獣共通感染症です。主に齧歯類などの野生動物がレプトスピラを保有しているが、ネズミの体内では障害を与えることなく腎臓で増殖して、その尿中に排泄された菌が水や土壌を汚染することで感染が広がります。

プードル

レプトスピラ症の原因となる病原体

レプトスピラは、らせん状の細菌で、様々な種類が存在します。これらの細菌は、湿気の多い環境や水中で長期間生存することができるため、水に関連して感染が広がりやすいという特徴があります。レプトスピラ

レプトスピラの感染経路

犬がレプトスピラに感染する主な経路は次の通りです。

  • 汚染された水源からの飲水: 水田、湿地、川や池沼、水たまりなど、レプトスピラに汚染された水を飲むことで感染します。川の水からレプトスピラのDNAを検出するという素晴らしい手法が琉球大学から発表されています。
  • 汚染された土壌との接触: レプトスピラに汚染された土壌と直接接触することで、皮膚から感染します。ワンちゃんは靴を履いていませんので、感染しやすいです。
  • 感染した動物との接触: 感染した動物の尿や体液と直接接触することで感染します。

レプトスピラの症状

ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ウマ、サイ、キツネ、ジャッカル、コヨーテ、マングース、アライグマ、スカンク、イヌ、アシカ、カンガルー、ワラビー、オポッサム、ハリネズミ、コウモリ、ネズミ、ビーバー、ウサギ、テナガザルなど、すべての哺乳類に感染すると考えられており、両生爬虫類にも感染する可能性もあるようです。臨床症状は、動物種により異なりますが、一般に、発熱、血色素尿、貧血、黄疸、異常産(流産・早産・死産)、急性腎不全などがあります。ネズミ類でも症状はないようですが、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの偶蹄類でも不顕性感染が多いようです。

犬のレプトスピラの症状

レプトスピラ症の症状は、感染したレプトスピラの種類や犬の個体差によってさまざまです。一般的に、以下の症状が見られます。

  • 発熱: 高熱が続くことが多く、食欲不振や倦怠感も伴います。
  • 筋肉痛: とくに後足の筋肉痛が顕著に見られることがあります。
  • 嘔吐や下痢: 消化器症状が現れることもあります。
  • 黄疸: 重症の場合、肝臓が障害され、結膜(白目)が黄色く見えることがあります。
  • 腎臓障害: 腎臓に炎症が起こり、尿量の変化や血尿が見られることがあります。

人のレプトスピラの症状

レプトスピラ症は、人にも感染する可能性があります。人への感染は衛生状況の改善や衛生観念の向上により発生は減少しましたが、川や湿地に入るアウトドアスポーツの興隆とともに再び増加しています。人の症状は、犬と同様にさまざまですが、以下の症状が見られることがあります。

  • 発熱: 高熱が続き、悪寒、頭痛、筋肉痛を伴います。
  • 結膜充血: 目が充血し、痛みを伴うことがあります。
  • 皮疹: 皮膚に発疹が現れることがあります。
  • 黄疸: 重症の場合、肝臓が障害され、黄疸が出現することがあります。
  • 腎臓障害: 腎臓に炎症が起こり、尿量の変化や血尿が見られることがあります。

レプトスピラ症の疫学

レプトスピラ症は、世界各地で発生していますが、地域ごとの発生状況は、気候、地理、動物相、人々の活動など、さまざまな要因によって大きく異なります。とくに熱帯や亜熱帯地域で多く見られます。日本では、夏から秋に感染例が増加する傾向があります。

日本の状況

日本では、とくに沖縄県や鹿児島県といった温暖な地域で発生が多く報告されています。これは、これらの地域が熱帯性のレプトスピラの種類が多く、また、雨季や台風などによる水害が発生しやすく、感染のリスクが高まることが要因として考えられています。

近年では、都市部でも発生例が見られるようになり、都市化が進み、野生動物との接触機会が増えたことが一因と考えられています。ゴミを漁るドブネズミがはびこっているのかもしれません。

海外の状況

海外では、東南アジアや南アメリカなどの熱帯・亜熱帯地域で発生が多いことが知られています。とくに、雨季や洪水の後には、感染者が急増することがあります。

レプトスピラ症の発生状況に影響を与える要因

  • 気候: 温暖湿潤な地域では、レプトスピラが生存しやすいため、発生リスクが高まります。
  • 地理: 河川や湖沼が多い地域、水田地帯などでは、感染源となる動物との接触機会が増え、感染リスクが高まります。
  • 動物相: ネズミ、イヌ、ウシなど、レプトスピラを保有している動物が多い地域では、感染リスクが高まります。
  • 人々の活動: 農業従事者、獣医師、カヌーなどのアウトドアレジャーを楽しむ人など、動物との接触機会が多い人や、汚染された水に触れる機会が多い人では、感染リスクが高まります。

レプトスピラ症の発生状況を知る上での注意点

  • 報告漏れ: すべての感染者が報告されているわけではなく、実際の発生数は報告されている数よりも多い可能性があります。
  • 検査の精度: 検査方法によっては、診断が難しい場合があります。
  • 地域差: 地域によって、発生状況や流行するレプトスピラの種類が異なります。

地域ごとの発生状況を調べる方法

  • 国立感染症研究所のホームページ: 国内の発生状況については、国立感染症研究所のホームページに詳しい情報が掲載されています。
  • 保健所への問い合わせ: 住んでいる地域の保健所に問い合わせると、地域の発生状況について情報が得られる場合があります。
  • 獣医師への相談: 愛犬の健康を守るために、獣医師に相談することも重要です。

こんなワンちゃんは特に要注意!ハイリスクなワンちゃんの特徴

以下の条件に当てはまるワンちゃんは、レプトスピラ症のリスクが特に高いと考えられます。

  • 川・池・水田の近くをよく散歩する子:矢作川・加茂川沿いのコースはとくに注意が必要です。
  • ノーリードや草むらに入ることが多い子:野生動物の尿が残っている土壌に足裏や鼻先が触れやすくなります。
  • ワクチン未接種または接種歴が不明な子:免疫のないワンちゃんは感染すると重症化しやすい傾向があります。
  • 多頭飼育環境にいる子:1頭が感染すると、他の子や人への二次感染リスクがあります。
  • 免疫が低下している老犬・基礎疾患のある子:腎臓・肝臓がすでに弱っている場合、重篤化するスピードが速まることがあります。

レプトスピラ症の診断方法

動物病院では、以下の検査を組み合わせてレプトスピラ症を診断します。

【身体検査・問診 】発熱、筋肉痛、黄疸、尿量の変化などの症状と、最近の散歩コースや水との接触歴を聞き取ります。台風通過後の外出歴は特に重要な情報です。

【血液検査・尿検査】 腎臓の機能(BUN・クレアチニン)や肝臓の数値(ALT・ALP・ビリルビン)、白血球数などを確認します。初期には非特異的な変化しか見られないこともあります。

特異的検査(原因診断)

  • 顕微鏡凝集試験(MAT):血清中の抗体を測定する確定診断法ですが、検査できる施設が限られます。
  • PCR検査:尿や血液からレプトスピラのDNAを検出します。感染初期でも検出可能な場合があります。
  • 尿の暗視野顕微鏡検査:菌を直接観察する方法ですが、専門設備・技術が必要です。

⚠️ 確定診断には外部検査機関への依頼が必要なことも多く、結果が出るまでに時間がかかる場合があります。疑いが強ければ、結果を待たずに抗生物質治療を開始することが一般的です。

愛犬がレプトスピラ症と診断されたら――飼い主さまに知っておいてほしい対応

愛犬がレプトスピラ症と診断された場合、以下の点に注意してください。

自宅での注意事項

  • 愛犬の尿が触れた場所は次亜塩素酸ナトリウム(市販の塩素系漂白剤を希釈したもの)で消毒する
  • 素手での尿・排泄物の処理を避け、必ず手袋を着用する
  • 家族(特に子ども・高齢者・免疫の弱わっている方)は愛犬への接触を最小限にする

同居ペットへの対応

  • 同居犬がいる場合は、早めにワクチン接種を検討する
  • 食器・トイレシートは共用しない
  • 念のため同居犬も動物病院への相談をおすすめします

保健所への届出 レプトスピラ症は感染症法上の四類感染症に指定されており、人への感染が判明した場合は保健所への届出が必要です。動物の場合も、家畜伝染病予防法の届出伝染病に指定されているので、所管の家畜保健衛生所に状況を共有することが義務付けられています。

レプトスピラ症の治療方法

レプトスピラ症の治療には、抗生物質の投与が一般的です。診察早期にレプトスピラ症を疑えれば、合併症がなく、殺菌できるかもしれません、しかし、症状が重症化している場合や、腎臓・肝臓障害などを併発している場合は、対症療法が必要となることもあります。

治療費の目安と入院について

レプトスピラ症の治療費は、症状の重症度、施設によって大きく異なります。あくまで目安ですが、以下を参考にしてください。

重症度主な処置費用の目安(参考)
軽症(外来治療)抗生物質の内服・注射1〜3万円程度
中等症(入院数日)点滴・抗生物質・肝腎サポート5〜15万円程度
重症(長期入院・集中管理)ICU管理・透析・輸血など20〜50万円以上

早期受診により軽症のうちに治療できれば、費用も回復率も大きく改善します。ペット保険に加入している場合は、感染症として補償対象になることが多いため、保険証を持参してご来院ください。

レプトスピラ症の予防方法

レプトスピラ症の予防には、以下の方法が有効です。

  • ワクチン接種: レプトスピラワクチンを接種することで、感染を予防することができます。ただし、人の新型コロナウイルスのときにも話題になりましたが、血清型がとてもたくさんあり、流行しているタイプにすぐに適合できないことが問題です。WSAVA(2024)のワクチンのガイドラインを参考にして、飼い主さまとご相談の上、接種をしていきましょう。
  • 汚染された水源からの飲水の禁止: 犬が汚染された水を飲まないように注意しましょう。
  • 汚染された場所への立ち入りの制限: レプトスピラに汚染されている可能性のある場所には、犬を連れて行かないようにしましょう。秋に発症が多いのは、台風による増水が影響していると思われます。
  • 早期の受診: 異常を感じたらすぐに受診することで、早期発見・早期治療により、重症化リスクの軽減に繋がります。

レプトスピラワクチンの種類

レプトスピラには様々な種類(血清型)が存在するため、ワクチンも複数の血清型に対応したものがあります。一般的に、5種混合ワクチンに加えてレプトスピラが組み込まれていることが多いですが、レプトスピラ単独のワクチンもあります。抗体価を維持するのに定期的な接種が必要です。

  • 5種混合ワクチン: 犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス(伝染性肝炎、伝染性気管支炎)、犬パラインフルエンザウイルスに対する抗体を産生させます。

ワクチンを選ぶ際のポイント

  • 犬の生活環境: アウトドアで活動することが多い犬、水辺で遊ぶことが多い犬など、生活環境によって必要なワクチンの種類が異なります。お散歩コースによっては、レプトスピラのリスクが少ないこともあり得ます。
  • 地域の流行状況: 住んでいる地域で流行しているレプトスピラの血清型を考慮する必要があります。しかし、地域ごとに調査研究が実施されていないのが現状です。残念ながら、矢作川、加茂川流域での結果は見たことがありません。
  • 獣医師のアドバイス: 獣医師が、愛犬の健康状態や生活環境、そして、同居家族の構成などを総合的に判断し、接種時期や副作用も含め、最適なワクチンをご提案させていただきます。

散歩後のケアと日常でできる予防習慣

ワクチン接種に加え、日常のちょっとした習慣がレプトスピラ症の予防に大きく役立ちます。

散歩後のケアポイント

  • 帰宅後は足裏・腹部・口周りをぬるま湯で拭き取る
  • 水たまりを踏んだ場合は念入りに洗う(石けんや薄めた消毒液が有効)
  • 散歩コースに川・農地・空き地が含まれる場合は特に注意

日常の環境管理

  • ゴミ袋は蓋つきのものを使用し、ネズミを引き寄せない
  • 庭や駐車場に食べ残しを放置しない
  • 雨の多い時期は庭の水はけを改善する

飼い主さま自身も注意

愛犬の尿を素手で処理しないようにしましょう。レプトスピラ菌は犬の尿中に排泄されるため、感染犬の尿は人への感染源になります。使い捨て手袋を使用し、処理後は手洗いを徹底してください。


ワンちゃんの飼い主様へ

今回のレプトスピラ症に関するお話はいかがでしたか?

ご自身の健康だけでなく、ご家族や愛犬の健康にも関心が高い方が多いと思います。レプトスピラ症は、人にも感染する可能性があるため、愛犬だけでなくご家族の健康を守るためにも、予防対策をしっかりと行なうことが大切です。

愛犬との散歩の際には、水たまりや汚染されている可能性のある場所には近づけないように注意し、定期的なワクチン接種を心がけましょう。また、愛犬が少しでも体調がおかしいと感じたら、すぐに当院を受診するようにしましょう。

レプトスピラ症は、ときにワンちゃんの命を脅かすこともある怖い病気です。しかし、ワクチン接種を行なうことで、感染予防につなげることができます。愛犬の健康を守るために、ぜひレプトスピラ症について正しく理解し、ワクチン接種で予防に努めてください。

もし、レプトスピラ症についてご不明な点がございましたら、お気軽に当院にご相談ください。

レプトスピラに関するご質問

Q1. 犬のレプトスピラ症はどんな病気ですか?
A. レプトスピラ菌が引き起こす細菌性の感染症で、犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症です。主にネズミなどの野生動物が菌を保有しており、その尿で汚染された水や土壌から感染します。発熱・嘔吐・黄疸・腎臓障害などを起こし、重症化すると命に関わります。

Q2. どんなときに感染リスクが高まりますか?
A. 台風や大雨の後、水たまりや増水した川に近づいたときが特に危険です。ネズミの生息地(農地・河川敷・都市のゴミ置き場周辺)も感染リスクが高いため、散歩コースの選択には注意が必要です。

Q3. レプトスピラ症の初期症状は何ですか?
A. 発熱・食欲不振・元気の低下・筋肉痛(特に後肢)・嘔吐や下痢などが初期に見られます。進行すると黄疸(白目が黄色くなる)や尿量の変化が現れ、腎臓・肝臓障害が起きることがあります。

Q4. 水たまりを舐めたら必ず感染しますか?
A. すべての水たまりが汚染されているわけではありませんが、感染の有無は見た目では判断できません。台風後や河川敷の水たまりは特にリスクが高いため、舐めさせないよう注意し、接触後に症状が出た場合は早めに受診してください。

Q5. ワクチンを打てば完全に予防できますか?
A. ワクチンは重症化予防に非常に有効ですが、レプトスピラには多くの血清型があり、ワクチンで対応できる型には限りがあります。ワクチンと環境対策(水たまり回避・衛生管理)を組み合わせることが最も効果的な予防策です。

Q6. レプトスピラのワクチンは何種混合に含まれますか?
A. 一般的には8種混合または10種混合のワクチンにレプトスピラが含まれています。5種混合にはレプトスピラが含まれていないため、生活環境に応じて獣医師と相談しながら選ぶことが大切です。

Q7. 治療にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 軽症で外来治療の場合は1〜3万円程度ですが、入院や集中管理が必要な重症例では20〜50万円以上になることもあります。早期発見・早期治療が費用と回復率の両面で重要です。

Q8. 人にうつる可能性はありますか?
A. あります。レプトスピラ症は人獣共通感染症です。感染犬の尿や体液に触れることで人に感染する可能性があるため、尿の処理は手袋を使い、処理後は必ず手洗いしてください。とくに子ども・高齢者・免疫の弱い方は注意が必要です。

Q9. 散歩後にどんなケアをすればよいですか?

A. 帰宅後に足裏・腹部・口周りをぬるま湯で拭き取ることが有効です。特に川沿いや水たまりのある場所を歩いた後は念入りにケアし、気になる症状が出た場合は早めに受診しましょう。

Q10. 愛犬が感染した場合、他のペットや家族への対策は?

A. 感染犬の尿が触れた場所は塩素系漂白剤で消毒し、素手での接触は避けてください。同居犬がいれば早めにワクチン接種を検討し、家族(特に免疫が弱い方)は愛犬との濃厚接触を控えることをおすすめします


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