具合の悪い猫を他の猫と会わせることについて:飼い主が知っておくべき重要なポイント

猫を看病する女性

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。

具合の悪い猫を動物病院に連れて行った際、飼い主さまとして「他の猫に会わせても大丈夫か」という疑問を持つのは当然のことです。とくに複数の猫を飼っているご家庭では、病気がうつらないか、ストレスにならないかなどと心配になります。今回は、具合の悪い猫を他の猫と会わせることが大丈夫かどうかを判断するために、飼い主さまが知っておくべきポイントを詳しく説明します。

1. 具合の悪い猫の原因を特定することの重要性

具合の悪い猫を他の猫と会わせる前に、まず最初に考えなければならないのは、その猫の具合が悪くなっている原因が何かを特定することです。病気の原因が感染性のものであれば、他の猫に病気を移してしまうリスクがあるため、安易に会わせることは避けなければなりません。反対に、感染性ではない場合は、他の猫との接触が許されることもあります。

a. 感染症のリスク

感染症には多くの種類があり、猫から猫への感染が起こることがあります。代表的な感染症としては以下のようなウイルス感染症があります。

  • 猫白血病ウイルス(FeLV): 猫白血病はウイルスが原因で発症し、とくに免疫系に深刻な影響を与えます。猫同士の接触や、同じ食器やトイレを共有することで感染が広がります。具合の悪い猫が猫白血病に感染している場合、他の猫に接触させるのは非常にリスクが高いです。
  • 猫免疫不全ウイルス(FIV): FIVは猫エイズとも呼ばれ、免疫システムを攻撃するウイルスです。主に咬傷によって感染しますが、とくに感染猫との直接の接触が原因となります。このため、FIV陽性の猫と他の猫との接触は慎重に考慮する必要があります。
  • 猫伝染性腹膜炎(FIP): 猫コロナウイルスによって引き起こされるこの病気は、感染性があり、とくに多頭飼育環境での接触により広がることがあります。FIPは進行が早く、治療が難しいため、感染が疑われる場合は他の猫と隔離する必要があります。
  • 猫パルボウイルス( FPV):猫パルボウイルスは、非常に感染力が強く、致死率も高く、もっとも恐ろしい感染症といえます。ウイルスは糞便を中心に体液、被毛、環境表面に長期間生存し、接触感染や間接感染(食器、トイレ、ケージ、人的媒介など)で容易に広がります。感染猫の排泄物や分泌物と接触した場合、ウイルスが口や鼻から体内に侵入し、消化管や骨髄、リンパ組織に深刻な障害を与えます。とくに子猫では急性に進行し、突然死のリスクもあります。具合の悪い猫に重度の嘔吐や下痢が見られる場合、猫パルボウイルス感染の可能性があるため、ただちに他の猫と隔離し、徹底した消毒と感染管理を行なう必要があります。
  • 猫カリシウイルス(FCV): 呼吸器系に影響を与えるウイルスで、猫同士の接触や咳、くしゃみによって伝播します。具合の悪い猫がくしゃみをしている場合や、呼吸器症状が見られる場合は、カリシウイルス感染の可能性があるため、他の猫との接触を避けるべきです。
  • 猫ヘルペスウイルス(FHV-1): 猫の呼吸器感染症の一因となるこのウイルスは、目や鼻、口からの分泌物を通じて感染します。具合の悪い猫が目や鼻からの分泌物が多い場合、ヘルペスウイルス感染が疑われるため、他の猫との接触は控えるべきです。

b. 非感染性の原因

具合の悪い猫が非感染性の病気にかかっている場合、他の猫に会わせても問題ないことがあります。以下に、一般的な非感染性の病気の例を挙げます。

  • 腎臓病: 猫は慢性腎臓病にかかりやすく、とくに高齢の猫に多く見られます。腎臓病は感染性ではないため、他の猫と接触しても問題はありませんが、ストレスが腎機能に悪影響を与える可能性があるため、過度な刺激を避けることが大切です。
  • 糖尿病: 猫も人間同様に糖尿病にかかることがあります。糖尿病自体は感染症ではないため、他の猫に移ることはありませんが、具合が悪い猫が血糖異常症状を示す場合には、他の猫と接触することで余計なストレスを受ける可能性があるため、注意が必要です。
  • がん: がんは感染性の病気ではないため、基本的には他の猫に会わせても問題ありません。しかし、がん治療中の猫は免疫力が低下していることが多いため、他の猫からの病気の感染リスクが高くなることがあります。そのため、免疫力が低下している場合には、慎重な対応が必要です。

2. 猫同士の接触がストレスになるリスク

猫は非常に敏感な動物であり、新しい環境や他の猫との接触がストレスになることがあります。とくに具合の悪い猫にとって、他の猫との接触はさらなるストレスを引き起こし、病気の回復を遅らせる可能性があります。

a. ストレスが病気に与える影響

ストレスは猫の健康に悪影響を及ぼすことが多く、上記の非感染性疾患のほかにも、以下のような病気の猫にとってはストレスを最小限に抑えることが重要です。

  • 尿路疾患(FLUTD): ストレスは猫の下部尿路疾患を引き起こす要因となることがあります。具合が悪い猫が既に、特発性膀胱炎など、尿路に問題を抱えている場合、他の猫との接触によるストレスがさらに症状を悪化させる可能性があります。
  • 呼吸器疾患: 猫はストレスを感じると、呼吸が早くなったり、呼吸困難を起こすことがあります。とくに呼吸器に問題を抱えている猫にとって、ストレスは症状を悪化させる要因となるため、慎重に扱う必要があります。

b. 多頭飼育環境での接触

多頭飼育環境では、猫同士の相性や序列が明確になるまでに時間がかかることがあります。具合の悪い猫が他の猫と会うことで、序列争いや縄張り意識が強まり、余計なストレスを生むことがあります。とくに新しく病気の猫が家に加わる場合、既に住んでいる猫たちがそれに対して警戒心を抱くことが多く、互いに攻撃的になる可能性もあります。

3. 猫同士の接触を安全に行うためのステップ

猫同士を会わせる際には、リスクを最小限に抑えるためにいくつかのステップを踏むことがとても重要です。以下に安全に猫を会わせるための基本的な手順を紹介します。

a. 獣医師の診断を受ける

最初に行なうべきことは、具合の悪い猫を動物病院に連れて行き、獣医師の診断を受けることです。病気の原因が感染症かどうかを判断してもらい、他の猫と接触させても安全かどうかを確認しましょう。とくに感染症が疑われる場合は、他の猫と隔離することが最優先です。

b. 隔離する場合の対策

感染症が疑われる場合や、ストレスを避けるために隔離が必要な場合、以下の点に注意して隔離を行ないましょう。

  • 別の部屋を用意する: 感染症のリスクを最小限にするため、具合の悪い猫を他の猫から隔離し、別の部屋で静かに過ごさせることが重要です。部屋には猫のベッド、トイレ、水と食事を準備し、猫が快適に過ごせる環境を整えます。
  • 衛生管理: 感染症を広げないために、具合の悪い猫に触れた後は手をよく洗い、トイレや食器なども他の猫とは別に管理しましょう。

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