日本人約9万人を対象とした17年間の調査結果から見えた新たな知見
国立がん研究センターが、1995年と1998年に日本国内10地域の45~74歳の約9万人を対象に開始し、彼らを2013年まで追跡調査したものです。この研究では、特に大豆食品摂取量と膵がん罹患リスクとの関連について検討し、その結果を専門誌で発表しました。
膵がんは予後が非常に悪いがんであるため、予防に関する研究は非常に重要です。大豆食品には、たんぱく質、イソフラボン、レクチンなどの成分が含まれ、これまでに循環器疾患や一部のがんのリスクを低下させる可能性が報告されてきましたが、膵がんとの関連については不明でした。このため、私たちは総大豆食品の摂取量、発酵性大豆食品と非発酵性大豆食品の摂取量、さらに具体的な大豆食品(納豆、味噌、豆腐類)の摂取量と膵がん罹患リスクとの関連を調査しました。
食事調査アンケートの結果を基に、対象者を総大豆食品摂取量の少ないグループから多いグループまで4つのグループに分け、平均17年間の膵がん罹患リスクを調べました。分析に際しては、性別、年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病の有無などの影響を統計学的に調整しました。
調査の結果、総大豆食品摂取量が多いほど膵がん罹患リスクが高いことが分かりました。特に非発酵性大豆食品、つまり豆腐類、高野豆腐、油揚げ、豆乳の摂取と膵がん罹患リスクとの間に関連が見られましたが、発酵性大豆食品(納豆、味噌)についてはこの関連は認められませんでした。なかでも豆腐類の摂取量が多い場合には、膵がん罹患リスクが特に高くなることが示されました。
今回の研究から、総大豆食品摂取量が多いと膵がん罹患リスクが高まるという関連が明らかになりましたが、発酵性大豆食品については膵がんとの関連は見られませんでした。欧米の研究では、大豆を含む豆類の摂取が膵がんリスクを低下させるとの示唆がありましたが、この研究結果とは異なる結果が得られました。これには、豆類の栄養成分の違いや観察期間の違いが影響している可能性があります。
膵がんリスクが高まる理由はまだ明確ではありませんが、動物実験では大豆に含まれる成分(トリプシンインヒビターなどの消化酵素阻害成分の消化酵素や消化管ホルモンへの影響)が膵臓に悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。ただし、この研究には追跡中の食事の変化が考慮されていないなどの限界があり、今後のさらなる研究が必要です。
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