小鳥の甲状腺腫の原因と対策
こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
今回は、小鳥さんの甲状腺の病気についてお話させていただきます。

1. 甲状腺腫の原因
(1) ヨウ素欠乏(Iodine Deficiency)
甲状腺は、ヨウ素というミネラルを取り込んで甲状腺ホルモンを合成することで、基礎代謝・成長・羽毛の維持・繁殖機能を調節します。ヨウ素が不足すると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の過剰分泌が起こり、甲状腺が過形成を起こして腫大します。これは、体内で甲状腺ホルモンが足りないので、いわば甲状腺という「ホルモン生産工場」を大きくして、もっとホルモンを作らなければという反応ですが、実際には、原材料であるヨウ素が足りないので、「うすいホルモン」しか生産できません。すると、まだ足りないなら、もっと大きな工場を作らなければ…ということになるわけです。
とくに、**シードダイエット(種子食中心の食餌)**ではヨウ素と蛋白質が不足しやすく、それらを中心に給餌されているブンチョウやセキセイインコでは甲状腺腫が比較的発生しやすいと考えられています。
要因
- 種子中心の食餌(特にキビ、アワ、ヒエなど)
- これらはヨウ素含有量が極めて低いため、長期的に摂取すると欠乏を招く。
- 市販のペレットのヨウ素不足
- 鳥用ペレットにはヨウ素が添加されているものがあるが、不足している製品もある。
- 水道水の塩素処理
- 水道水の消毒塩素処理により、ヨウ素が失われるかもしれない。
(2) ゴイトロジェン(Goitrogen, 甲状腺腫誘発物質)の摂取
ゴイトロジェンを多く含む食品を摂取すると、ヨウ素の取り込みが阻害され、甲状腺腫のリスクが高まります。
代表的なゴイトロジェンを含む食品
- アブラナ科植物(キャベツ、ブロッコリー、小松菜、大根葉など)
- これらはイソチオシアネートを含み、ヨウ素の取り込みを阻害。
- 大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)
- 大豆に含まれるイソフラボンは、甲状腺ホルモン合成機能を抑制。

(3) タンパク質不足
甲状腺ホルモンの合成にはチロシン(アミノ酸の一種で、蛋白質が分解して生成される)が必要ですが、低タンパク食では甲状腺ホルモンの生成が低下し、結果的にTSHの過剰分泌による甲状腺腫を引き起こす可能性があります。
特にシードダイエットでは動物性タンパク質が不足しがちで、甲状腺機能に悪影響を与えます。
2. 甲状腺腫の症状
軽度の場合は無症状のこともありますが、進行すると以下の症状が見られます。
(1) 呼吸器症状
- 呼吸困難(喘鳴)
- 腫大した甲状腺が気管を圧迫するため、ゼーゼーとした呼吸や開口呼吸を示す。
- ひどいと、チアノーゼを示す。
- 声の変化
- さえずりが弱くなったり、異常な発声をすることがある。
(2) 消化器症状
- 食欲低下
- 甲状腺腫が食道を圧迫すると、食べにくくなる。
- 体重減少
- 食欲低下と、吐き戻しにより、栄養状態が悪化し、痩せる。

(3) 全身症状
- 元気消失、活動性低下
(4) 羽毛異常・換羽不全
甲状腺ホルモンは羽毛の成長を調節するため、
- 換羽が遅れる
- 新しく生えた羽が短い、または弱い
- 異常な色調の羽が生える
といった異常が生じることがある。
3. 診断
(1) 視診・触診
- 小鳥の甲状腺は胸のなかにあるので、外からは触れることができません。
(2) レントゲン検査・超音波検査などの画像診断
- 甲状腺の腫大が確認できることもあります。
- 気管や食道の圧迫所見が見られることもあります。

(3) 血液検査
- 甲状腺ホルモン(T₄, T₃)の低下や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇があると思いますが、実際は測定することができません。
4. 治療
(1) ヨウ素補給
- ヨウ素を飲水に混ぜる。
- ヨウ素含有ペレットを使用。
- ヨウ素サプリメントの添加。
(2) 食餌の改善
- ペレット食の導入(ヨウ素やタンパク質がバランスよく含まれるもの)
- 昆虫食(ミ―ルワームなど)の補給(タンパク質補給)
- ゴイトロジェンなどの甲状腺阻害作用のある食品の制限(キャベツ、ブロッコリー、大豆製品等)

(3) 呼吸困難への対処
- 酸素吸入
- ネブライザー療法(うっ血や炎症を抑える)
(4)脂質代謝異常症・肝機能異常との関連
- とくにブンチョウは脂質代謝異常になりやすく、肝機能障害を伴うケースが多い(脂肪肝)。
- 肝臓が悪くなったことによる症状か、甲状腺が悪くなったことが肝臓を悪くしたのかは不明。
- 肝障害があると甲状腺ホルモンの代謝異常が起こり、甲状腺腫の進行を助長するのかもしれない。
- 適切な食事管理と肝臓治療薬の開始
- 肝臓が悪くなると、血が止まりにくくなるので、いざという時のために用心
5. 予防
(1) 適切な食事管理
- 食餌の改善
- ヨウ素・タンパク質・ビタミンが不足しないよう、シードからペレット食へ切り替える。
- 適切なサプリメント添加
- ヨウ素の摂取。
- ビタミンKは出血を止めるのに必要
- アブラナ科ではなく、キク科(レタス、サラダ菜、サンチュ)、シソ科(シソ、バジル)、セリ科(セロリ、ニンジン)植物を与える
- 水道水を汲み置きして与える
(2) 定期健康診断
- 年1回の健康診断で飼育状況の確認
- 毎日の観察と早期発見・早期報告。

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