最終更新日:2026年6月18日
猫の乳がんは早期発見と若いうちの避妊手術で、そのリスクを大幅に下げることができます。
この資料は、愛知県豊田市にあるアロハオハナ動物病院による、猫の乳がんに関する詳細な解説記事です。猫の乳腺腫瘍は悪性である確率が非常に高いため、飼い主さまが日常的な触診で小さなしこりを早期に発見することの重要性が強調されています。また、生後6か月齢までの避妊手術が発症リスクを劇的に下げる最も有効な予防策であると説明されています。診断後の治療法については、外科手術を第一選択としつつ、進行度に応じた抗がん剤治療や緩和ケアについても触れられています。最後には、受診の流れや費用、ご家庭での健康チェック方法などのよくある質問がまとめられ、専門的な視点から愛猫の命を守るための知識を提供しています。
愛猫との絆を深める時間が、命を守る力に!猫の乳がん予防と早期発見のすすめ

今回はネコちゃんの乳腺腫瘍のお話です。悪性のものを乳がんと言います。以前に比べて、避妊手術が浸透しており、ほんとうに減ってきた病気だという実感があります。それゆえに、避妊手術の重要性も間違いなくはっきりしていると言えます。
私たちと同じく愛猫もリスクがある。猫の乳がんを知り、守るために
1. 疫学
猫の乳がんは猫の腫瘍全体の約17%を占め、とくに避妊手術を受けていない高齢のメス猫に多く見られます。猫の乳がんは発見時には進行していることが多く、悪性の腫瘍がほとんどです。発症のリスクは年齢とともに増加し、避妊手術をしていない場合、発症の確率が非常に高くなるとされています。また、発症のリスクは遺伝やホルモンの影響も受けることが分かっています。

2. 早期発見方法
早期発見は治療の成否に大きな影響を及ぼします。猫の乳がんを早期に発見するためには、飼い主さまによる「なでなでマッサージ」といった定期的な触診が重要です。触診により、乳腺に硬いしこりや異常な腫れを見つけることができ、早期の診断と治療を促進します。とくに乳腺の周辺やお腹周りの触診が有効です。動物病院での定期健診も推奨されており、疑わしいしこりが見つかった場合は、X線検査や超音波検査などの画像検査のほかに、その部分に針を刺して顕微鏡で見る細胞診による診断が行なわれます。

3. しこりを見つけたら:受診のタイミングと検査の流れ
「しこりを見つけたけど、すぐに受診すべき?」という疑問をよくいただきます。
答えは「できるだけ早く」です。猫の乳腺腫瘍は犬とは異なり、良性の割合が非常に低く、約80〜90%が悪性とされています。小さなしこりでも、放置するほど進行リスクが高まります。
受診時の検査の流れは一般的に以下のようになります。
問診・視診・触診でしこりの数・大きさ・硬さなどを確認します。次に、X線検査・超音波検査で肺やリンパ節への転移の有無を調べます。その後、細胞診(針生検)でしこりの細胞を顕微鏡で観察し、悪性かどうかを判断します。確定診断は手術後の病理組織検査で行われます。
「しこりが小さいから大丈夫」ではなく、「小さいうちに確認する」ことが、愛猫の命を守る鍵です。
4. 治療方法
猫の乳がんの治療は、基本的に腫瘍の手術摘出が第一選択となります。悪性度が高い場合、乳腺を広範囲に切除することになります。手術に加えて、進行した乳がんの場合は、放射線治療や化学療法(抗癌剤)が用いられることもありますが、猫の体への負担も考慮し、個々の状態に合わせた治療計画が立てられます。治療後の定期的な再検査も重要で、再発や転移を早期に発見するためのモニタリングが推奨されます。大学病院などの二次診療施設への受診などの精密検査・高度治療へ進んでいただくこともできます

5. 乳がんの進行ステージと予後の目安
猫の乳がんはステージ(進行度)によって、治療方針や予後が大きく異なります。
ステージIは腫瘍径が2cm未満の段階です。このステージでの手術が最も予後がよく、中央生存期間は28か月以上との報告もあります。
ステージIIは腫瘍径が2〜3cmの段階です。外科手術が中心となりますが、転移リスクが高まります。
ステージIIIは腫瘍径が3cm超またはリンパ節転移がある段階です。手術に加え、補助療法(抗がん剤)を検討します。
ステージIVは遠隔転移(肺・胸膜など)がある段階です。緩和ケアが中心となります。
この情報が示すことは、「早く見つけるほど、選べる治療が増え、予後もよくなる」ということです。日常の触診がいかに大切かが、改めてわかります。
6. 予防方法
猫の乳がん予防には、若いうちに避妊手術を行なうことが最も効果的です。生後6か月頃までに避妊手術を受けると、乳がん発症リスクが著しく低下します。また、肥満を防ぎ、健康的な生活習慣を維持することも予防に寄与します。とくに避妊手術をしていない猫に対しては、定期的な乳腺のチェックと獣医師による検診を行ない、早期発見を心がけることが大切です。

7. 避妊手術の時期と乳がんリスクの関係
避妊手術を行う時期が、乳がんリスクにどれほど影響するかをまとめます。
生後6か月以前に避妊手術を行うと、乳がんリスクはほぼゼロに近いとされています。生後6か月〜1歳での避妊は約91%のリスク低減が見込めます。1〜2歳での避妊では約86%の低減が期待できます。2歳以降になると予防効果が低下するという報告があります。
この数字が示す通り、「子猫のうちに避妊手術を」ということが、乳がん予防において非常に重要です。ただし、手術には麻酔リスクや体への負担も伴います。避妊手術の時期については、かかりつけの獣医師としっかり相談して決めることをお勧めします。
まとめ
猫の乳がんは、発見が遅れると治療が難しくなります。しかし、飼い主さまによる定期的なチェックや避妊手術により悪化リスクを低減できます。乳がんのリスクを正しく理解し、日常のケアや獣医師との連携を通じて愛猫の健康を守りましょう。

今回の猫ちゃんの乳がんのお話はいかがでしたか?子猫を飼い始めたら、避妊手術のことを思い出してくださいね。
キャットリボン運動の公式サイトにも分かりやすく解説されていますので、ぜひご覧ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 猫の乳がんはどのくらい多い病気ですか?
猫の腫瘍全体の約17%を占めており、猫に発生する腫瘍の中では比較的多い部類に入ります。特に、避妊手術を受けていない高齢のメス猫に多く見られます。
Q2. 乳がんのしこりはどこにできますか?
猫には左右4対・計8つの乳腺があります。両脇から両後ろ足の付け根にかけて並んでいます。触診では、このラインに沿って丁寧にさわって確認します。
Q3. しこりを見つけたらすぐ受診すべきですか?
はい、できるだけ早くご受診ください。すべてが腫瘍とは限りませんが、猫の乳腺腫瘍は悪性率が約80〜90%と非常に高く、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
Q4. オス猫も乳がんになりますか?
非常にまれですが、オス猫にも乳腺組織はあるため、乳がんが発生することがあります。ただし、ほとんどはメス猫に発生します。
Q5. 避妊手術をしていれば絶対に乳がんにならないですか?
絶対ではありませんが、生後6か月以前に避妊手術を受けると発症リスクが著しく低下することがわかっています。完全な予防とはならないため、避妊済みの猫でも定期的な触診・検診は引き続き重要です。
Q6. 乳がんは痛みを伴いますか?
初期段階ではほとんど無症状です。しこりが大きくなったり、皮膚が破れてただれるような状態になると、猫が気にしてなめ続けたり、食欲が落ちることがあります。
Q7. 手術費用はどのくらいかかりますか?
病院・地域・ステージによって異なりますが、乳腺切除手術は一般的に十数万円前後程度になることが多いです。ペット保険に加入している場合は補償対象になることも多いため、ご確認ください。
Q8. 高齢の猫でも手術できますか?
年齢だけで判断するのではなく、全身状態(心臓・腎臓・血液検査など)を評価した上で手術可否を判断します。当院では、シニア猫の麻酔リスクを最小化するための術前検査を丁寧に行っています。
Q9. 手術後、再発することはありますか?
あります。特に悪性度が高い場合やリンパ節転移があった場合は、術後の定期的なモニタリングが重要です。術後6か月間は1〜2か月ごとの検診をお勧めしています。
Q10. 自宅での触診はどうやってやればいいですか?
猫をリラックスさせた状態でお腹を上に向けてもらい、左右の乳腺(前脚の付け根から後ろ脚の付け根まで)を指の腹で優しくなぞるように触ります。硬いしこりや腫れ、皮膚の変色などがあれば、すぐに動物病院にご相談ください。「なでなでのついで」に月1回程度習慣にすると理想的です。
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