こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。
齧歯類とは
齧歯類とは、切歯(前歯)が一生伸び続ける特徴をもつ動物群です。
当院を受診される代表的なペットとしては、ゴールデンハムスター、ジャンガリアンハムスター、モルモット(Guinea Pig)、チンチラ(Chinchilla)、デグー(Degu)、ラット(Rat)、マウス(Mouse)、リチャードソンジリス(Richardson’s Ground Squirrel)、シマリス(Chipmunk)です。
少数派ですが、スナネズミ(ジャービル Gerbil)、トビネズミ(ジェルボア Jerboa)、タイリクモモンガ(Flying Squirrel)も齧歯類です。
ちなみに、ハリネズミやフクロモモンガは、齧歯類ではありません。

齧歯類に見られる皮膚のしこりについて
齧歯類は、小型で可愛らしいペットとして日本でも人気があります。慣れてくれれば、手の上に載せたりすることができるようになるかもしれませんが、慣れていないと捕まえるだけでも一苦労といったところでしょうか。しかし、彼らの健康を守るためには、皮膚のしこりを早期に発見し、適切な対処をすることが重要です。皮膚のしこりは様々な原因によって発生することがありますが、早期発見と適切な治療が予後を大きく改善します。
よく見られる皮膚のしこりの種類
齧歯類における皮膚のしこりは、以下に代表されるようないくつかの種類があります:
- 良性腫瘍:
- 脂肪腫:脂肪細胞からなる腫瘍で、一般的に無害です。
- 皮脂腺腫:皮脂腺から発生する腫瘍で、無痛でゆっくり成長します。
- 悪性腫瘍:
- 線維肉腫:結合組織から発生する悪性腫瘍で、早期に治療が必要です。
- 扁平上皮癌:皮膚の細胞から発生する悪性腫瘍で、進行が早いです。
- 乳腺腫瘍:乳腺から発生しますが、雄個体でも見られます。
- 感染性のしこり:
- 膿瘍(のうよう):細菌感染により形成される膿のかたまり。しこりが熱を持ち、痛みを伴います。擦れて穴が開くと嫌なにおいの血膿が出てきます。
- 炎症による腫れ:
- 骨折や怪我などで炎症を起こして「こぶ」ができることがありますが。感染しなければ時間経過とともに縮小していきます。
- 正常の構造物
- 皮脂腺などの正常にそこにある構造物で、皮膚病と思われて受診される方がいらっしゃいますが、これはこれでよく観察していただいていることになりますので、OKです。

早期発見の方法
しこりの早期発見が大切です。以下の手順を参考に、定期的にチェックを行ないましょう:
- 毎日の健康チェック:
- 視診:動物の体全体を目視でチェックし、異常がないか確認します。とくに普段見えないおなか側から覗くことが大切です。膨らみそのものが見えればすぐに分かりますが、毛並みがおかしかったり、気にして舐めた跡がついていないかもチェックポイントです。
- 触診:体を優しく触り、しこりや異常な硬さがないかを確認します。これができる個体はごくごく少数ですが、これが毛が生えている動物のしこりを見つけるベストな方法です。触診ができれば、あわよくば体内のしこりまで分かるかもしれません!
- 定期的な体重測定:
- 体重の変動は健康状態の重要なバロメーターです。急激な体重減少や増加が見られた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
- 行動の変化の観察:
- 齧歯類は痛みを隠す傾向があります。食欲の低下、活動量の減少、または不自然な行動が見られた場合、詳細な検査が必要です。

早期発見のメリット
- 治療の成功率が向上:
- 早期にしこりを発見することで、治療の成功率が大幅に向上します。特に悪性腫瘍の場合、早期の摘出が生命を救うことがあります。
- 治療コストの低減:
- 初期段階での治療は、進行した状態での治療よりもコストが低く済みます。これにより、飼い主さまの経済的負担も軽減されます。
- 動物の苦痛を軽減:
- 痛みや不快感を伴うしこりを早期に治療することで、動物の苦痛を軽減し、生活の質を向上させることができます。しこりが大きくなればなるほど手術範囲も大きくなり、痛みの程度も大きくなると予想されます。

しこりの対処方法
しこりが発見された場合、適切な対処が重要です。一般的な対処方法は以下の通りです:
- 診断:
- 細胞診:しこりの細胞を細い針で採取し、顕微鏡で観察します。これにより、膿か腫瘍か、良性か悪性かを判断できることがあります。
- 生検:しこりの一部を切除して病理組織検査を行ないます。これにより、詳細な診断が可能です。
- 治療:
- 手術:しこりを外科的に手術で摘出します。悪性腫瘍の場合は、周囲の正常組織も含めて広範囲に切除することが重要です。
- 薬物療法:感染性のしこりの場合は、術後に抗生物質や消毒が必要かもしれません。腫瘍が再発するリスクがある場合は、化学療法(抗がん療法)を検討します。
- 術後の管理:
- 傷口のケア:手術後は傷口を清潔に保ち、感染を防ぐためのケアが必要です。動物が傷口を舐めないようにエリザベスカラーを使用することもあります。しかし、これが余計なストレスとなることがありますので、個体の性格などを見ながら検討していくことになります。傷口を気にしないようにするという、痛み止めなどの使用が、非常にウエイトが大きいです。
- 定期的な経過観察:術後の経過を定期的に確認し、再発や合併症がないかを監視します。

術後の問題と対策
せっかく手術しても、術後にはいくつかの問題が発生する可能性があります。これらの問題に対して適切な対策を講じることが重要です。
- 感染症:
- 傷口が感染するリスクがあります。術後は傷口を清潔に保ち、抗生物質の投与や消毒が必要な場合もあります。感染が疑われる場合は、直ちに獣医師に相談してください。
- 再発:
- 悪性腫瘍の場合、再発のリスクがあります。定期的な健康チェックと検査を行ない、再発の早期発見に努めましょう。
- 疼痛管理(ペインコントロール):
- 手術後の疼痛管理は重要です。適切な鎮痛剤を使用し、動物の痛みを軽減することが必要です。
- 栄養管理:
- 術後の回復を促進するために、適切な栄養管理を行ないます。食欲がなければ、食欲増進剤を使います。高品質な流動食やサプリメントを提供し、動物の体力を回復させることも重要です。

まとめ
齧歯類の皮膚のしこりは、飼い主さまにとって心配な問題です。しかし、小さなうちに早期発見と適切な治療によって、多くのしこりは良好な予後を迎えることができます。定期的な健康チェックを行ない、しこりを発見した場合は速やかに獣医師に相談しましょう。大きくなるか様子を見ることは、受診前にはしてはいけません。適切な対処とケアを行なうことで、あなたの可愛い齧歯類の健康と幸福を守ることができます。
当クリニックでは、齧歯類の健康を守るための専門的な診断と治療を提供しています。定期的な健康チェックと早期発見のためのアドバイスを提供し、しこりが発見された場合には迅速かつ適切な対処を行ないます。齧歯類の飼い主の皆様に、安心してペットの健康管理を任せていただけるよう、日々努めております。何かご不明点やご相談がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

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