🐇ウサギのツメダニ(walking dandruff)とは?症状・検査・治療と家族(人)への感染対策|愛知の小動物専門動物病院ガイド

ウサギとの接触

こんにちは。
愛知県豊田市の小動物専門病院、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

✅ 最初に読むべきポイント

背中に白いフケが浮いて見える、かゆそうに首を掻いている、そんなウサギを見たことはありませんか?
それはもしかすると「ツメダニ(Cheyletiella parasitovorax」という寄生虫が原因かもしれません。

この記事では、

  • ツメダニの正体と症状
  • 動物病院で行なう検査・治療法
  • 飼い主、ご家族にうつるリスクとその対策

を、小動物専門の獣医師の立場から分かりやすく解説します。


🦠 ツメダニとは? — ウサギの皮膚に潜む「歩くフケ」

ツメダニ(Cheyletiella parasitovorax)は、ウサギの表皮角質層に寄生するダニで、「walking dandruff(歩くフケ)」の異名を持ちます。
白いフケが動くように見えるのは、皮膚表面を移動するダニそのものが見えるためです。

このダニは0.3-0.5mmなので目が良ければ、肉眼でもうっすら白い粒のように確認できるかもしれません。
ウサギの背中・肩・首まわりにフケやかゆみを引き起こします。
健康なウサギでもストレス、栄養不良、免疫低下などで突然発症することがあります。


⚠️ こんな症状が出たら要注意

  • 背中や首にフケが増える
  • 被毛がボサボサ、抜け毛が多い
  • 掻く、こすりつける、体を震わせる仕草が増える
  • 他のウサギにもフケやかゆみが広がる

初期は軽度のフケだけで見逃されやすいですが、放置すると皮膚炎を併発し、脱毛やかさぶたが目立つようになります。
また、同居ウサギや猫、犬へも伝播することがあるようで、環境中で再感染を繰り返すこともあります。


🧫 動物病院での診断の流れ

ツメダニは見た目だけでは判断できないことが多く、顕微鏡による皮膚検査が必須です。

診察で行なう主な検査

  • ブラッシング検査:フケや被毛を集めて顕微鏡観察
  • セロハンテープ法:粘着テープで皮膚表面を採取
  • 皮膚スクレイピング:表皮を軽くこすって潜っているダニを検出

ウサギから採取した試料を顕微鏡で確認すると、ツメダニ特有の鉗子状の口器と脚先の爪が観察されます。
同時に真菌(白癬)やノミ、他のダニ類との鑑別も行なわれます。


💊 治療法 — 獣医学的エビデンスに基づいたアプローチ

治療の中心は、寄生虫駆除薬による全身治療です。
ウサギの体重や状態に合わせて安全に投与します。

主な治療薬

薬剤名用法・用量備考
イベルメクチン(Ivermectin)0.2–0.4 mg/kgを皮下注または経口、2〜3回、2週間間隔欧米でも標準的治療法
セラメクチン(Selamectin/Revolution®)背中に滴下。猫用製剤を体重に応じて調整シャンプー禁止期間に注意
ミルベマイシン、モキシデクチン補助的選択肢として使用されることも重症例・多頭飼育時に検討

外用薬のみでは不十分なため、環境対策の併用が治療の基本です。
また、同居動物がいれば全頭同時に治療を行なう必要があります。


🧺 家庭で行う環境対策

ツメダニは宿主外でも数日間生存できるため、環境中に卵や成虫が残ると再感染します。
家庭では以下の対策を徹底しましょう。

清掃と消毒のポイント

  • ケージ・トイレ・食器・牧草ラックなどを熱湯消毒または漂白剤希釈液で洗浄
  • 敷材・マット・布製品はすべて廃棄または高温洗濯
  • 掃除機の使用後はすぐにパックを処理
  • 掃除後の手洗い・衣類の交換を徹底

環境温度と湿度が高いと生存期間が延びるため、上記を3週間程度は継続してください。


👨‍👩‍👧 人への感染 — 一時的な皮膚炎として現れる

  • Cheyletiella 属ダニによる皮膚症状は人にも起こりうる(主に接触皮膚炎様の丘疹・痒疹、稀に水疱性病変)。診断は臨床像+家族・ペットのブラッシング試料からのダニ検出が鍵。JAMA Network+1
  • 人に対する「根本的駆虫」は不可能であり、飼育動物(ウサギ等)の駆虫処置が人の症状改善の最重要項目であるという報告が複数ある。併せて、人は対症療法(抗ヒスタミン、外用ステロイドなど)で短期間に改善する例が多い。JAMA Network+1
  • 重篤例や全身症状を呈した例の報告も散見されるため(稀だが)、臨床的に重症の場合は皮膚科/感染症科と連携して評価する。PubMed

つまり、
ツメダニは人にも一時的に感染することがあります
感染した人の皮膚には、腕・腹部・首・太ももなどに赤いブツブツが現れ、かゆみを伴います。
ただし、人の皮膚では繁殖できないため、1〜2週間以内に自然治癒します。

強いかゆみがある場合は皮膚科を受診し、抗ヒスタミン薬やステロイド外用を使用します。
ただし、根本治療にはウサギと環境の駆除が最優先です。


🕒 いつ病院へ行くべきか?

次のような場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

  • フケやかゆみが続く
  • 家族にも発疹が出た
  • 他のウサギ・猫・犬にもフケが見られる
  • 食欲・元気が落ちている

ツメダニは早期発見で短期間に治癒する寄生虫です。
放置すると慢性皮膚炎や体重減少、免疫低下の引き金になることがあります。


🏥 当院のウサギ診療体制

当院(アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック)では、
ウサギ・モルモット・チンチラなどエキゾチックアニマルの皮膚科診療も行なっています。

  • 顕微鏡検査による即日診断
  • 体重・体調に合わせた安全な駆虫計画
  • 再発防止を目的とした環境指導
  • LINEでの再診予約・写真相談

必要に応じて往診にも対応しています。
「フケが増えた」「かゆみが止まらない」と感じたら、早めのご相談をおすすめします。


💬 よくある誤解とアドバイス

  • 誤解①:「人にうつったら危険な病気」
     → ツメダニは人では繁殖せず、自然に消退します。
  • 誤解②:「市販のノミ取り薬で治る」
     → 有効成分が異なるため、ウサギには効かないあるいは有毒なことがあります。
  • 誤解③:「掃除だけで治る」
     → 環境対策もう1つの柱です。必ず動物本体への投薬が必要です。

再発を防ぐためには、定期的なブラッシングと環境管理が重要です。
毛球症予防やストレスケアと合わせて、健康維持に役立てましょう。


🩺 症例紹介

症例1:若齢ウサギ(3歳・ネザーランドドワーフ)
背中のフケと軽度の掻痒。顕微鏡でツメダニを確認し、イベルメクチン2回投与+環境清掃で2週間後に完治。

症例2:高齢ウサギ(8歳・ロップイヤー)
全身にフケと脱毛。体重減少あり。イベルメクチン+セラメクチン併用で治療し、再発防止のため同居ウサギも同時処置。4週間で皮膚が回復。


📱 ご予約・ご相談について

  • 電話予約:この病気は緊急疾患ではありませんが、夜間にはホットラインがつながります。
  • LINE公式:プロフィールリンクから
  • オンライン相談(有料):24時間受付中。こちらをお読みください。
  • 診療時間:8:00〜21:00(水曜休)。こちらをご覧ください。
  • アクセス:愛知県豊田市東山町2-3-12

「フケかもしれないけれど受診するほどでは…」と感じる方でも構いません。
まずはLINEで「受診希望」からお気軽にご相談ください。


✅ まとめ

  • ウサギのツメダニは「歩くフケ」と呼ばれる寄生虫。
  • 人にも一時的に感染するが、通常は自然に治る。
  • 治療は投薬と環境対策の両輪が基本。
  • 同居動物の同時治療と環境清掃が再発防止の鍵。
  • 不安な場合は早めに専門病院へ。

🔍 よく検索されているQ&A

Q1:ウサギのツメダニは人にうつりますか?
A1:はい。一時的に皮膚炎(赤い発疹・かゆみ)を起こすことがありますが、繁殖せず自然治癒します。

Q2:治療にどのくらいの期間がかかりますか?
A2:2〜4週間程度の投薬と環境清掃で改善します。重症例では1〜2か月かかることもあります。

Q3:市販薬で治療できますか?
A3:ウサギには安全性が異なるため、必ず獣医師の指導で投薬を行なってください。

Q4:環境の清掃はどのくらい続けるべき?
A4:少なくとも3週間は毎日清掃と消毒・洗浄処理を続けることが推奨されます。

Q5:再発を防ぐには?
A5:定期的なブラッシング、ストレス管理、定期健診が有効です。


📚 References

  1. Merck Veterinary Manual — Parasitic Diseases of Rabbits: Cheyletiella parasitovorax.
  2. Merck/MSD — Cheyletiellosis (Walking Dandruff): Overview and Clinical Management.
  3. VCA Hospitals — Cheyletiellosis in Rabbits.
  4. Washington State University — Zoonoses Associated with Rabbits.
  5. PubMed/PMC — Preliminary detection of mites and coccidia with their zoonotic potential.
  6. PetMD — Cheyletiella Mites in Rabbits.
  7. Worms & Germs Blog — Cheyletiella: Zoonotic Mite Infestation in Pets.
  8. Cohen SR. Cheyletiella Dermatitis: A Mite Infestation of Rabbit, Cat, … JAMA Dermatology (1980). JAMA Network
  9. Kunkle GA, Miller WH Jr. Cheyletiella infestation in humans. Arch Dermatol. 1980 Dec;116(12):1345. doi:10.1001/archderm.1980.01640360019002. PubMed
  10. Dal Tio R. Dermatitis Caused by Cheyletiella. Description of 8 Cases … (1990). PubMed
  11. Dobrosavljevic DD, Popovic ND, Radovanovic SS. Systemic manifestations of Cheyletiella infestation in man. Int J Dermatol. 2007 Apr;46(4):397-9. doi:10.1111/j.1365-4632.2007.03098.x. PubMed
  12. Tsianakas P. An uncommon cause of vesiculobullous eruption. (2000) PubMed
  13. MdEdge / Cutis review: What’s Eating You? Cheyletiella Mites (review article, 2017) mdedge.com
  14. Mellgren M, et al. Treatment of rabbit cheyletiellosis with selamectin or ivermectin. Vet Dermatol. 2008;(ウサギ側治療がヒト症状改善に直結することを示す臨床データ)。PMC

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