犬の皮膚炎、シャンプーで治らない原因はマラセチア菌?症状・見分け方・治療法を獣医師が解説🐶

シーズーの皮膚病

最終更新日:2026年8月30日

シャンプーで治らない皮膚炎はマラセチア性皮膚炎かも。早期受診が鍵です。

この記事は、愛知県豊田市にあるアロハオハナ動物病院の皮膚科担当医が執筆した、犬のマラセチア性皮膚炎に関する専門的な解説です。この皮膚疾患は、カビの一種である常在菌の異常増殖によって引き起こされ、特に梅雨から夏にかけてベタつきや強い臭いを伴う症状が悪化しやすくなります。一般的な薬用シャンプーだけでは完治が難しく、その理由として抗真菌成分の不足や皮膚バリアの破壊が挙げられています。記事内では、顕微鏡検査による的確な診断の重要性に加え、内服薬や外耳炎の同時治療を組み合わせた包括的なケアが推奨されています。また、飼い主さまがご自宅で実践できる正しい洗浄方法や生活環境の整え方についても具体的にアドバイスしています。最終的に、慢性化を防ぐためには、皮膚科に精通した獣医師による早期の受診が不可欠であると結論付けています。

梅雨〜夏に急増する『犬のカビ皮膚炎(マラセチア性皮膚炎)』とは


〜ベタベタ・かゆみ・ニオイ…それ、ただの皮膚炎じゃないかもしれません〜

こんにちは。アロハオハナ動物病院 かもがわ公園小動物クリニック院長です。

梅雨から夏にかけて、ワンちゃんの皮膚トラブルがぐんと増える時期です。
そのなかでも、意外と見落とされがちなのが 「マラセチア性皮膚炎」──いわゆる「犬のカビ皮膚炎」です。

この記事では、動物病院の皮膚科診療でよく出会うケースをベースに、
「なぜ薬用シャンプーだけでは治らないのか?」
「マラセチア性皮膚炎の特徴・診断・治療」
を、飼い主さまにも分かりやすく解説していきます。


☔️ そのベタつき・赤み・ニオイ、梅雨〜夏に悪化していませんか?

飼い主さまがよく口にされるのは、こんな症状です:

  • 「耳の内側や足先が赤く、しきりに舐めている」
  • 「毎週シャンプーしてるのに、背中が脂っぽい」
  • 「独特のニオイがして、洗っても取れない」

これらは一見、「脂漏性皮膚炎」や「アレルギー性皮膚炎」と誤解されがちですが、
その正体は皮膚に常在する「マラセチア酵母菌」の異常増殖による皮膚炎かもしれません。


🦠 マラセチアってなに? ─ 常在菌が病原化するメカニズム

マラセチア(Malassezia pachydermatis)は、健康な犬の皮膚や外耳道に自然に存在している脂質依存性の酵母様真菌(カビの一種)です。

通常は無害ですが、以下のような条件がそろうと異常に増殖し、炎症を引き起こします。

主な誘因:

  • ✅ 湿度の高い環境(梅雨・夏場の高温多湿)
  • ✅ アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどの基礎疾患
  • ✅ 脂漏体質(特に柴犬・シーズー・コッカーなどに多い)
  • ✅ 免疫力の低下(高齢犬、基礎疾患持ち)
  • ✅ 外耳炎や皮膚バリア障害の併発

これらが重なると、皮脂を栄養源とするマラセチアが異常繁殖し、皮膚の赤み・かゆみ・脂漏・悪臭といった症状が現れます。

フレンチブルドッグの皮膚病

🧴 なぜ「薬用シャンプーだけ」では治らないのか?

マラセチア性皮膚炎において、市販の薬用シャンプーや頻繁な洗浄だけで対応しようとするケースは少なくありません。

ですが、ここに2つの大きな落とし穴があります:

❶ 市販シャンプーでは「抗真菌作用」が不十分

→ 多くの薬用シャンプーは抗菌や洗浄を目的としていますが、
マラセチアのような酵母菌に対して効果のある「抗真菌成分」を含んでいないものもあります。

❷ 過剰な洗浄は「皮膚のバリア機能」を壊す

→ 乾燥や角質の剥離を招き、逆にマラセチアの増殖環境を悪化させてしまうことも。

したがって、皮膚の状態や体質に応じた診断・治療設計が重要なのです。

マラセチア性皮膚炎と間違えやすい皮膚病との違い【比較表】

マラセチア性皮膚炎は脂漏性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎・膿皮症と症状が似ているため、顕微鏡検査で酵母菌の有無を確認しないと自己判断は困難です。

項目マラセチア性皮膚炎脂漏性皮膚炎アレルギー性皮膚炎膿皮症(細菌性)
主な原因酵母菌の異常増殖皮脂分泌の異常アレルゲンへの過剰反応細菌の異常増殖
ニオイ独特の甘酸っぱい/カビ臭脂っぽいニオイあまり強くない膿のようなニオイ
好発部位耳・脇・内股・指趾間背中・首まわり全般顔・足先・耳局所〜全身
かゆみ中〜強い軽度〜中等度強い中〜強い
見分け方顕微鏡での酵母菌検出皮脂量の評価アレルギー検査・除去食試験細菌培養・スメア検査

※あくまで一般的な傾向であり、実際の診断は動物病院での検査が必要です。


🔬 どうやって診断するの?──マラセチア性皮膚炎の検査と見分け方

当院では、以下のような流れで診断を行ないます:

✅ 1. 顕微鏡検査(皮膚スクラッチやテープ法)

皮膚表面の角質を採取し、染色後に顕微鏡でマラセチアの存在を直接確認します。
ピーナッツ型または卵型の酵母様真菌が多数確認できれば、診断の一助となります。

✅ 2. 臨床症状の分布と特徴

  • 耳・口周り・脇・内股・指趾間など、皮脂腺が豊富で湿度の高い部位に好発。
  • 脂漏性、悪臭、慢性化する紅斑・色素沈着が見られる。

✅ 3. 既往歴と体質の確認

  • 外耳炎の反復歴
  • アトピーや食物不耐症の既往
  • 過去の治療反応など

これらを総合的に評価し、他の細菌性皮膚炎や膿皮症、アレルギー性皮膚炎との鑑別を行ないます。

ミニチュアシュナウザーの外耳炎

💊 治療はどうするの? ─ 抗真菌薬だけで終わらせない包括ケア

🌿 主な治療アプローチ:

  • 抗真菌薬(イトラコナゾール、ケトコナゾールなど):内服が必要な場合も
  • 抗真菌薬配合シャンプー(クロルヘキシジン+ミコナゾールなど)
  • 基礎疾患(アトピー・食物アレルギーなど)の管理
  • 耳の治療と皮膚の治療をセットで行なう
  • 再発予防のためのスキンケア指導

重要なのは、「一時的に良くなった」で終わらせず、再発しにくい皮膚環境を整えることです。

ご自宅でできる予防ケアと正しいシャンプーの仕方

シャンプーの頻度・お湯の温度・乾かし方を見直すだけで、マラセチアの再増殖をかなり防ぐことができます。

  • 頻度の目安: 週1〜2回程度(洗いすぎは皮膚バリアを壊すため注意)
  • お湯の温度: 人肌よりやや低めのぬるま湯(熱すぎるお湯は皮脂を奪いすぎます)
  • 乾燥: ドライヤーでしっかり根元まで乾かす(生乾きはマラセチアの温床になります)
  • 室内環境: 除湿機やエアコンで湿度をコントロールする
  • 食事: 皮膚の健康を意識したフード選び(獣医師に相談のうえ、必要に応じてオメガ3系脂肪酸などを取り入れる)
  • 定期チェック: 耳・脇・内股・指の間など好発部位を週1回程度触ってチェックする習慣をつける

セルフケアはあくまで補助であり、症状が続く場合は自己判断せず動物病院を受診しましょう。


🏥 当院が重視する“皮膚と耳”の一体診療

マラセチア性皮膚炎の子の約50%以上が外耳炎も併発しています。
そのため、耳の処置をせずに皮膚だけ治療しても、再発の温床になりかねません。

当院では、

  • 外耳検査(耳鏡+顕微鏡)
  • 皮膚スクラッチ検査
  • 体質に合わせた食事・保湿ケアの提案

を組み合わせ、耳と皮膚をセットで診るアプローチを徹底しています。

治療期間の目安と受診のタイミング

軽度であれば数週間、慢性化している場合は数ヶ月単位のケアが必要になることもあり、症状に気づいた時点での早めの受診が治療期間の短縮につながります。

  • 軽症(初期症状のみ): 適切な治療で数週間程度の改善が期待できます
  • 中等度〜慢性化: 基礎疾患の管理も含めて数ヶ月単位の治療・経過観察が必要になることがあります
  • 受診の目安: 「薬用シャンプーを2週間ほど試しても改善しない」「同じ場所を繰り返し舐める・かく」「独特のニオイが続く」場合は、自己判断で様子を見ず早めのご相談をおすすめします

正確な治療期間や費用は、皮膚の状態・基礎疾患の有無によって個体差が大きいため、診察時に個別にご説明しています。


🐾 こんな症状があれば、早めにご相談を!

以下のようなサインが見られる場合は、マラセチア性皮膚炎を疑ってみてください。

  • ✅ 耳が赤く、臭いがする/耳をかゆがる
  • ✅ 足先や口元をよく舐める
  • ✅ 皮膚が脂っぽく、ベタベタしている
  • ✅ 背中やお腹に赤み、色素沈着、脱毛がある
  • ✅ 「薬用シャンプー」で改善しない皮膚炎がある
チワワの皮膚病

✨まとめ:早めの対応が“慢性化”を防ぐカギに

  • マラセチア性皮膚炎は、見落とされやすく再発しやすい皮膚疾患です。
  • 単なる脂漏症やアトピーと見分けにくいため、的確な診断と抗真菌治療が重要です。
  • 耳・皮膚・全身の体質管理をセットで行なうことが、根本的な改善につながります。

ワンちゃんの「皮膚の赤み」「ベタベタ」「におい」が気になったら、
ぜひ当院の皮膚科診療をご活用ください。早期治療と適切なケアで、快適な夏を迎えましょう!

よくあるご質問(Q&A)

Q1. マラセチア性皮膚炎は人にうつりますか?
A. マラセチアは皮膚常在菌のため、通常の生活で人にうつる心配はほとんどありません。免疫力が著しく低下している方は念のため獣医師にご相談ください。

Q2. シャンプーだけで治りますか?
A. 抗真菌シャンプーだけでは不十分なケースが多く、内服薬や耳の治療を含めた総合的な治療が必要になることが多いです。

Q3. どのくらいの頻度でシャンプーすればいいですか?
A. 症状や皮膚状態によりますが、一般的には週1〜2回が目安です。洗いすぎは逆効果になるため獣医師の指示に従いましょう。

Q4. マラセチアになりやすい犬種はありますか?
A. 柴犬、シーズー、コッカースパニエルなど脂漏体質の犬種で発症しやすい傾向があります。

Q5. 症状が改善したら通院は不要ですか?
A. 見た目が改善しても菌が完全に減っていない場合があるため、獣医師の判断で経過観察を続けることが再発防止につながります。

Q6. 自宅でできる予防法はありますか?
A. 湿度管理、しっかりとした乾燥、バランスの良い食事、定期的な皮膚チェックが有効な予防策です。

Q7. マラセチア性皮膚炎とアレルギーの違いは?
A. 症状が似ているため、顕微鏡検査で酵母菌の有無を確認しないと肉眼だけでの判断は困難です。

Q8. 放置するとどうなりますか?
A. 慢性化して色素沈着や脱毛、強いニオイが続くだけでなく、外耳炎の悪化にもつながる可能性があります。

Q9. 何科の病院に行けばいいですか?
A. 皮膚科診療を行っている動物病院、可能であれば皮膚科と耳科をあわせて診てもらえる病院がおすすめです。

Q10. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 軽度であれば数週間、慢性化している場合は数ヶ月以上かかることもあり、根気強いケアが必要です。


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