最終更新日:2025年10月7日
~アレルギーの4つのタイプと、リンパ球が関係する遅延型アレルギー ~
こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックです。
ワンちゃんの皮膚トラブルの中でも、「アレルギー性皮膚炎」は非常に多く、かゆみや赤みがなかなか治らず、飼い主さまも困ってご来院されます。
今回は、アレルギーの基本と、「なぜ検査で陰性なのにアレルギー症状があるのか?」という疑問を解くために、免疫学的な仕組みを、できるだけ分かりやすくお話しします。

🧩 アレルギーとは?
本来、免疫はウイルスや細菌など「敵」から体を守るための防御システムです。
しかしアレルギー体質の子では、この免疫が本来無害なもの(食べ物・ノミ・花粉など)に過剰反応してしまうことがあります。
その反応の仕方によって、アレルギーは4つのタイプ(Ⅰ〜Ⅳ型)に分けられます。
🩸 アレルギーの4つのタイプ(Ⅰ型〜Ⅳ型)
| 型 | 起こる速さ | 主なしくみ | よくある例 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ型 | 数分〜数時間 | IgE抗体とヒスタミン | アトピー、ノミ、食物、アナフィラキシー |
| Ⅱ型 | 数時間〜数日 | 抗体が自分の細胞を攻撃 | 自己免疫性貧血など |
| Ⅲ型 | 数時間〜数日 | 免疫のかたまりが炎症を起こす | 腎炎、血管炎、SLE |
| Ⅳ型 | 1〜3日後 | Tリンパ球による炎症 | 接触性皮膚炎、薬剤反応 |
🩺Ⅰ型アレルギー(即時型)
ノミや花粉、食べ物などのアレルゲンに反応して、IgE抗体が作られ、肥満細胞からヒスタミンが放出されます。
数分〜数時間のうちに「かゆい!赤い!」といった症状が出るタイプです。
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの一部、ワクチンや薬で起こるアナフィラキシーもここに含まれます。

🧬Ⅳ型アレルギー(遅延型)
こちらはTリンパ球(免疫細胞)が中心になって起こる反応です。
症状が出るまでに1〜3日ほどかかるのが特徴です。
たとえば首輪やシャンプーの成分に反応して起こる接触性皮膚炎が代表例。
赤みやかゆみがゆっくり出てくるのが特徴です。
🍖 食物アレルギーにはⅠ型だけでなくⅣ型もある!
「食物アレルギー=食べてすぐ反応する」と思われがちですが、実際は、Ⅰ型(即時型)とⅣ型(遅延型)の両方が関係していることが分かっています。
| タイプ | 起こる時間 | 関与する免疫 | 症状の特徴 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ型 | 数分〜数時間 | IgE抗体、ヒスタミン | 急なかゆみ、じんましん、嘔吐、下痢 |
| Ⅳ型 | 1〜3日後 | Tリンパ球 | 慢性的な皮膚炎、外耳炎、軟便や下痢 |

🧠 食物アレルギーの仕組みを簡単に言うと…
- Ⅰ型:食べてすぐ反応する「即時型」。血液検査(IgE測定)で検出できることが多い。
- Ⅳ型:食べて数日後に悪化する「遅延型」。リンパ球が反応するため、一般的なアレルギー血液検査では分からないことが多い。
つまり、「検査は陰性だったけれど、食事を変えたら治った」という子は、リンパ球が関わるⅣ型アレルギーである可能性が高いのです。
🧬 獣医学的な裏づけ
最新の獣医学文献では、犬や猫の食物アレルギーにおけるTリンパ球(Ⅳ型)の関与が明確にされています。
- Olivry T et al., Vet Dermatol, 2017(ICADA報告)
犬猫の食物アレルギーは、IgE陰性でもT細胞が関与する遅延型アレルギーが存在すると報告。 - Hall EJ et al., Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2019
犬の食物アレルギーでは、Ⅰ型とⅣ型が複合的に働くとされる。 - Allenspach K, J Vet Intern Med, 2015
慢性腸炎(食事反応性腸炎)は主に**Ⅳ型アレルギー機序(リンパ球活性化)**によるものと考えられている。

🐕 アトピー性皮膚炎との関係
アトピー性皮膚炎も、実は「Ⅰ型」だけで説明できません。
皮膚のバリア機能低下や、常在菌の異常増殖、そしてリンパ球による慢性炎症(Ⅳ型的要素)が組み合わさって起こります。
そのため、治療でも「抗ヒスタミン薬」や「ステロイド」だけでなく、免疫調整薬(アポキル®、サイトポイント®、シクロスポリンなど)が有効なのは、この“細胞性免疫=Ⅳ型アレルギー”に働くためです。
🩺 飼い主さまへのメッセージ
「アレルギー」と一言で言っても、すぐ反応するものもあれば、数日かけて出てくるものもあります。
食べ物の影響で皮膚や耳、消化器の調子が崩れる場合、リンパ球が関与する遅延型アレルギーのことも多いです。
だからこそ、除去食試験(食餌療法)が最も確実な診断方法になります。
焦らず、ワンちゃんに合った食餌・環境・治療法を一緒に見つけていきましょう。

🐾 まとめ
- アレルギーは4タイプに分類され、Ⅰ型とⅣ型が皮膚疾患で特に重要
- 食物アレルギーにはリンパ球が関与するⅣ型(遅延型)も多い
- 血液検査で陰性でも、除去食で改善すればアレルギーの可能性あり
- アトピー性皮膚炎もⅠ+Ⅳ型の複合的な病態
- 治療は、原因の特定と皮膚バリアのケア、免疫のバランス調整がカギ
🏥 アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックでは
アトピーやアレルギーのワンちゃんに対して、食餌・環境・薬の3方向から、飼い主さまと一緒に最適な治療方針を立てています。
気になる皮膚トラブルがあれば、いつでもご相談ください。
愛知のヘソ豊田市周辺の岡崎市、日進市、安城・刈谷市にお住いの飼い主さま
当院の獣医師はエキゾチックペット、猫、小型犬などの広範な動物種に対する専門的な知識と豊富な経験を有しております。どんなペットにも信頼できるケアを提供いたします。
つまり、あらゆるペットに対応する総合的な診療を行なうことができます。
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