最終更新日:2026年9月2日
食餌管理と冬眠対策、脱走防止を徹底すれば、ジリスは驚くほど元気に長生きします。
〜食餌・栄養管理・ケージ設計・性格や行動の特徴を獣医師が解説〜
こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
今回はジリスのなかでももっとも受診数の多い、リチャードソンジリスを取り上げてみました。

はじめに:リチャードソンジリスというユニークなパートナー
リチャードソンジリス(Richardson’s ground squirrel)は、北米原産の小型げっ歯類で、まん丸の体と愛らしい顔立ち、そして人懐っこい性格で人気が高まっています。
しかし、犬や猫のような一般的なペットとは異なり、飼育には少し専門的な知識と準備が必要です。
私たち動物病院でも、
「どんなエサをあげればいいの?」
「どのくらい大きいケージが必要?」
「噛み癖や脱走は防げるの?」
といった質問を多くいただきます。
この記事では、欧米の獣医学専門家や飼育者コミュニティの知見をもとに、リチャードソンジリスと楽しく暮らすためのポイントを詳しく解説します。
1.リチャードソンジリスの基礎知識:分類・サイズ・寿命
リチャードソンジリスはリス科の地上性齧歯類で、体長20〜30cm、寿命は飼育下で6〜8年程度が目安です。
- 分類: リス科ジリス属、北米グレートプレーンズ原産
- 体格: 成体で体長約20〜30cm、体重300〜500g程度
- 寿命: 野生では3〜4年が多いですが、飼育下では適切な管理により6〜8年、長い場合は10年近く生きる個体もいます
- 入手経路: 国内ではエキゾチックアニマル専門店やブリーダーからの入手が一般的です。お迎え前に、飼育できる環境が整っているか(後述する冬眠対策・広さの確保など)を必ず確認しましょう
2.食餌と栄養管理:健康寿命を延ばす食餌設計
草食中心のバランス
リチャードソンジリスは、野生では草、種子、穀物、時には昆虫を食べているようです。
飼育下では、チモシーヘイを中心に、ペレット、野菜、ごく少量の果物を組み合わせるのがおすすめです。
- 主食: チモシーヘイ、オーチャードグラス(常に食べ放題)
- 副食: ジリス用ペレット(体重の約5〜10%程度/日)
- おやつ: 人参、リンゴ、ブロッコリー、カボチャ(週数回)
肥満対策は最重要課題
ジリスはとても食欲旺盛で、太りやすい体質です。ヒマワリの種やナッツを与えることは肥満・脂肪肝のリスクになるため、週に数粒とし、栄養として与えるというよりも、飼い主様の観賞用として留めておきましょう。
水分補給
水は毎日新鮮なものに交換。ボトル式給水器が清潔でおすすめです。
夏場は水分多めの野菜をあげると水分補給にはなりますが、お腹が緩くならない程度に留めましょう。

3.ケージと飼育環境:掘る・登る・かじる欲求を満たす
ケージ選び
リチャードソンジリスは活発に動き回り、掘る行動が大好きです。
最低でもフェレット用ケージ程度の広さ(横80cm×奥行50cm×高さ50cm以上)が望ましいでしょう。
- 一部分に牧草や紙製チップを厚く入れたプールを設置して、掘れるようにしてあげるとよいです。
- ケージは金網やスチール製で、プラスチック部分はかじられやすいので注意
- ケージを齧ると、前歯にダメージを与えますので、特定の齧る場所は、牧草マットなどで覆いましょう。
- 多層構造にして運動量を確保するとストレス予防に効果的
回し車とおもちゃ
運動不足は肥満やストレスの原因になります。
直径30cm以上の回し車を設置すると足腰の健康維持に最適です。
トンネルや木製かじり木、知育玩具を入れると探究心を刺激できます。
温度と衛生管理
理想的な室温は18〜24℃。日本の夏は暑すぎるため、エアコンでの対策が必須です。
週1回の床掃除と、月1回のケージ丸洗いを習慣にしましょう。

4.冬眠との付き合い方:体調管理でもっとも注意すべきポイント
リチャードソンジリスは本来冬眠する動物であり、冬眠前後の体重・体温管理が健康維持の最重要ポイントです。
冬眠する・しないは環境次第
野生下では気温低下とともに冬眠しますが、室温を通年18〜24℃に保つことで冬眠させずに飼育することも可能です。冬眠させるかどうかは、事前に動物病院で健康チェックを受けた上で判断することをおすすめします。
冬眠前の体重管理
冬眠前は皮下脂肪を蓄えるため食欲が増しますが、痩せすぎた状態での冬眠は命に関わるため、冬眠に入る前に十分な体重があるかを確認しましょう。
冬眠中・覚醒後の注意点
冬眠中は数日〜数週間おきに短時間覚醒し、水分補給を行う個体もいます。冬眠明けに食欲が戻らない、体重減少が著しい場合は、脱水や代謝異常の可能性があるため早めの受診が必要です。
5.行動と性格:噛み癖・脱走対策も含めた付き合い方
活発で知的、でもやや気難しい
リチャードソンジリスは好奇心旺盛ですが、個体差が大きい動物です。
よく懐く子もいれば、なかなか手に乗らない子もいます。
- 急に掴むとパニックになり、噛みつくことがあります
- 噛み癖は無理に叱らず、少しずつ慣らすことがポイント
- 手渡し給餌などでポジティブな経験を積ませると関係が深まります
脱走防止は最優先
ケージの扉は二重ロックが理想です。
ジリスは前足が器用で、簡単な鍵なら開けてしまうこともあります。
カーテンを登って落ちる事故症例によく遭遇します。登れないような対策をしましょう。
鳴き声・コミュニケーション
「ピピッ!」と高い声で鳴くことがあります。これは警戒音やコミュニケーションの一種。
静かな環境で飼うとストレスが減り、落ち着いた行動が増えます。

6.かかりやすい病気と動物病院を受診すべきサイン
リチャードソンジリスは肥満・不正咬合・皮膚トラブルを起こしやすく、食欲不振や元気消失は早期受診のサインです。
代表的な疾患
- 肥満・脂肪肝: 種子やナッツの与えすぎが主な原因。定期的な体重測定が予防の基本です
- 不正咬合(歯の伸びすぎ): かじり木や牧草不足により前歯が伸び、食欲不振につながることがあります
- 皮膚トラブル: ケージ内の不衛生や乾燥により、脱毛や皮膚炎が起こることがあります
- 外傷・骨折: 高い場所からの落下や、ケージの隙間への挟まりによる事故が多くみられます
こんな症状が出たらすぐに受診を
- 数日以上食欲がない、体重が急に減った
- じっとして動かない、呼びかけへの反応が鈍い
- 目やに・鼻水・くしゃみが続く
- 冬眠明けに元気が戻らない
いずれも進行が早い個体が多いため、「様子を見る」より先に、まずはご相談ください。
7.お迎えにかかる費用と必要なグッズ一覧
初期費用はケージ・回し車を含めて2〜4万円程度、月々の維持費は3,000〜5,000円が目安です。
| 項目 | 目安費用 |
|---|---|
| 本体(ブリーダー・専門店) | 1〜3万円 |
| ケージ(フェレット用サイズ以上) | 1〜2万円 |
| 回し車(直径30cm以上) | 3,000〜6,000円 |
| 床材・牧草(月々) | 2,000〜3,000円 |
| ペレット・おやつ(月々) | 1,000〜2,000円 |
| 給水ボトル・食器 | 1,000〜2,000円 |
上記に加え、体調不良時の診察費用や、冬眠管理のための温度計・エアコン代も考慮しておくと安心です。
まとめ:じっくり時間をかけて信頼関係を築く
リチャードソンジリスは、犬や猫と違ってすぐに懐くわけではありません。
でも、正しい食事管理と環境作り、丁寧なコミュニケーションを続けることで、飼い主さまと心を通わせる瞬間が訪れます。
私たちの動物病院では、食餌の選び方、体重管理、爪切りや健康診断などのサポートも行なっています。
「ちょっと太ってきたかも」「噛み癖がひどくて困る」など、どんな小さな悩みでも気軽にご相談ください。
リチャードソンジリスとの暮らしをもっと楽しく、安心できるものにするお手伝いをいたします。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. リチャードソンジリスは初心者でも飼えますか?
A. 温度管理や冬眠対策など専門知識が必要なため、飼育経験がある方や、エキゾチック対応の動物病院と連携できる環境が望ましいです。
Q2. リチャードソンジリスに多頭飼いは可能ですか?
A. 縄張り意識が強い個体もいるため、基本的には単独飼育が安全です。多頭飼育を検討する場合は必ず獣医師にご相談ください。
Q3. 冬眠させないほうがいいですか?
A. 室温を通年18〜24℃に保てば冬眠させずに飼育可能です。冬眠させる場合は事前の健康チェックが重要です。
Q4. どのくらいの大きさのケージが必要ですか?
A. 最低でも横80cm×奥行50cm×高さ50cm以上、フェレット用ケージ程度の広さが目安です。
Q5. ヒマワリの種はあげてもいいですか?
A. 与えすぎは肥満・脂肪肝の原因になるため、週に数粒程度、コミュニケーション用程度に留めましょう。
Q6. 噛み癖はしつけられますか?
A. 無理に叱らず、手渡し給餌などでポジティブな経験を積ませることで、少しずつ改善するケースが多いです。
Q7. 寿命はどのくらいですか?
A. 飼育下では6〜8年が目安です。適切な食餌・温度管理により、さらに長生きする個体もいます。
Q8. 脱走を防ぐにはどうすればいいですか?
A. ケージの扉は二重ロックにし、前足で開けられる隙間がないか定期的に確認しましょう。
Q9. 動物病院にはどのくらいの頻度で連れて行けばいいですか?
A. 飼育開始時点と年1回の健康診断に加え、食欲不振・体重減少・元気消失などの症状が見られた際はすぐに受診してください。
Q10. 飼育費用はどのくらいかかりますか?
A. 初期費用は2〜4万円程度、月々の維持費は3,000〜5,000円が目安です。
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