こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
動物園では異なる種類・異なる地域出身の動物が同じ施設内で暮らすため、感染症の制御と検疫が極めて重要です。
実は、これは一般家庭でのエキゾチックペット飼育でも例外ではありません。「同じ種類」「健康そう」に見えても、混合飼育には見えない危険が潜んでいます。
今回は、実際の病気の事例や、原産地による感受性の違いについてもわかりやすくご紹介します。

⚠️なぜ「混合飼育」が危険なのか?
✅ 同じグループでも「病気への強さ」が違う
- 種の違い(例:セキセイインコ vs コザクラインコ)
- 同属種でも原産地が異なる場合(例:オジロジカの北部亜種と南部亜種)
これらはウイルス、カビ・細菌、そして寄生虫への「免疫の強さ」「感染しても発症するか否か」に大きく影響します。
🦉【事例①】原産地の違いで死亡率が変わる──シカ科動物における流行性出血病(Epizootic hemorrhagic disease :EHD)の地理的感受性差
病原体名:流行性出血病ウイルス(Epizootic hemorrhagic disease virus:EHDV)
感受性の違い:
・オジロジカ北部の亜種 ▶ 高い感受性
・オジロジカ南部の亜種▶ 軽度または無症状
研究によれば、北部の亜種はEHDVに対して高い感受性を示し、重篤な症状や高い死亡率が報告されています。一方、南部の亜種は軽度または無症状であることが多く、これは地理的な分布や遺伝的背景の違いによるものと考えられています。地理的な分布の違い(例:寒冷地 vs 亜熱帯)による感受性の差に関しては、エキゾチックペットの分野では今後の研究課題です。
また、特に捕獲・輸送・新規導入直後の個体でストレスにより、リスクが高まります。
🟥 教訓:同属・類似種でも、原産地が異なるだけで、免疫背景が大きく異なるため、導入時・混合飼育には慎重な検討と隔離が必須。

🦠【事例②】リクガメにおけるヘルペスウイルス:丈夫に見えても危険
病原体名:Testudinid Herpesvirus(THV)
感受性の違い:
・ギリシャリクガメ ▶ 軽度発症 or 無症状
・ヨツユビリクガメ ▶ 重症化・死亡率高
欧米の動物園や動物医療施設では、リクガメ間でのウイルス交差感染が繰り返し問題になっています。特にギリシャリクガメが持つウイルスに、ヨツユビリクガメが曝露されると、急性の呼吸器疾患や死亡が起きる事例が多く報告されています。
🟠 教訓:同じ「リクガメ」でも、ウイルスに対する防御力には大きな差。異種混合は慎重に。

🧫【事例③】マクロラブダス感染症:無症状キャリアの危険性
病原体名:Macrorhabdus ornithogaster(旧名:メガバクテリア)
感受性の違い:
・セキセイインコ ▶ 発症しやすい
・コザクラインコ ▶ 無症状キャリアになりやすい
同じインコ類でも、胃腸に寄生するマクロラブダスに対する感受性は大きく異なります。見た目は健康そのもののコザクラインコが、新しく導入されたセキセイインコの感染源となり、急激な体重減少や突然死を引き起こすことがあります。
🔴 教訓:新たな鳥を導入する際は、必ず糞便検査と30日から数カ月間の隔離を。

💩【事例④】モルモットとウサギ:寄生虫の感受性が違う
病原体名:Enteromonas spp., Giardia spp.(腸管内寄生原虫)
感受性の違い:
・モルモット ▶ 感染しても症状が出にくい
・ウサギ ▶ 下痢・脱水・衰弱の原因に
モルモットとウサギを一緒に飼うとき、見た目の大きさや食性が似ていることから混合飼育されがちですが、実は寄生虫の保有率が高いモルモットが、ウサギにとっては危険な感染源になることがあります。
🟡 教訓:便の複数回の検査なしに異種を混ぜて飼育しない。特に草食動物では糞口感染が多い。

🧼【正しい隔離・検疫ステップ】
✅ 新規動物導入時の隔離ポイント:
- 最低30日間、できれば数カ月間は隔離ケージで飼育(別室が理想)
- 可能なら別の換気系統/空気が交わらない場所
- 専用・個別の器具・給餌器・手袋を使う
- 糞便・体重・食欲・行動の変化を観察し、異常があれば即受診
- 導入時に最低でも複数回の糞便検査を推奨。血液検査・ウイルス抗体検査が推奨されるケースもあり。
🐾【まとめ】「近い種」でも「似たような見た目」でも、感染症リスクはまったく違う
- 原産地の違いは、進化的な免疫背景の違いに直結する
- 同じ属・同じグループでも、特定の病原体に対する感受性や耐性に差がある
- 無症状キャリアの存在が、最も見落とされやすく、最も危険
※もちろん同じ種同士では、感染症はうつります。しかし、これにも、性別、免疫状態、個体差が関与しています。

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