1. 当院はシェアード・ディシジョン・メイキング (SDM) を実践しています。
  2. SDMは治療方針の決定時に選択肢を提供し、飼い主さまが最適な治療を選択するアプローチです。
  3. 治療方針はペットの状態、飼い主さまの経済状況、価値観によって異なります。
  4. 飼い主さまの経済状況は治療費に影響し、悩ましい問題となりますが、ペットと飼い主さまの両方の幸福を考慮します。
  5. 長期治療や慢性疾患に関しても、飼い主さまとの協力を通じて最善の治療を提案し、選択肢を検討します。
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当院では、シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making; SDM) を実践しています。

SDMとは、治療方針の決定の際、私たち獣医療スタッフがいくつかの選択肢をお話した上で、飼い主さまにとってベストあるいはベターな治療方法をご自身で選択していただくことです。

EBMに基づいて確実性の高い治療法が選択できる場合には、「Informed consent」で問題はありません。しかし、ことエキゾチックアニマルの分野では、治療法ごとの差が明確ではありません。絶対的に優れている治療法がない場合には、「Shared decision making」の出番です。これは、治療法の優劣に不確実性のある場合に用いられる手法と考えています。獣医師と飼い主さまがエビデンスを共有(シェア)して一緒に治療方針を見つけ出していく手法で、「共有意思決定」とも言われます。数字としての治癒率や生存率の数値の優劣だけでなく、各治療法への飼い主さまのご希望(選好: preference)や価値観、哲学、さらに言えば宗教も総合して、適切な治療法を一緒に考えていくものです。

飼い主さまに、現状をお伝えして、治療方針や予算について、ご納得していただいた上で、診療を進めていけるように努力しております。

治療方法の選択肢を提示させて頂き、その中から、飼い主さまに選んでいただきます。

そのほかにもオプションもございますので、どんどんご質問いただき、飼い主さまにとってより受け入れやすい診療を行なってあげましょう。

たとえ治る病気であっても、飼い主さまの許可なくしては、治療に入りません。

病気の進行度、ペットの性格(治療を受け入れてくれるかどうか)、飼い主さまのライフスタイル・経済状況・時間的制約、そして、そのペットへの思い入れ・・・。

さまざまな条件・制約があり、同じ病気でも、飼い主さまにより対応は大きく変わるのが現状です。

とくに、飼い主さまの経済的な状況は、治療に大きく影響します。

本邦では、相互扶助にもとづく国民皆保険制度がありますね。

しかしながら、獣医領域では治療費はすべて飼い主さまのご負担ということになります。

金銭的な問題で、治せる病気も治してあげられないのは獣医師としては辛いですが、飼い主さまの苦しみはそれ以上です。

そのペットのおかれている環境、とくにその飼い主さまのライフスタイル、倫理観、経済状況などはさまざまです。

心臓病、腎臓病、関節疾患、椎間板疾患など、長期にわたって治療が必要な疾患などでは、治療方針が飼い主さまの価値観によって大きく変わりますので、じっくりお話ができるように心掛けております。

なかにはペットにはお金をいくらでもかけられますと仰る方もいらっしゃいます。

価値観の問題ですので、ご家庭の支出の内訳は、私の関与するところではないかもしれません。

しかし、飼い主さまが立ち行かなくなってしまっては、結局ペットも救われません。

一時的な感情ではなく、しっかりした洞察力をもって、落ち着いて、判断していただけることを、切にお願い申し上げます。

ずっと一緒に暮らしていたペットと離れることはお互いに淋しいものですね。

入院治療をしたほうが、明らかに恩恵が大きい場合には、そのようにお話をさせていただきます。

しかし、慢性疾患、不治の病、腫瘍性疾患の末期などでは、長期入院しても、治癒が見込めません。

その場合には、在宅治療ができる飼い主さまであれば、それも選択肢の1つです。

心臓病では、酸素室をレンタルしていただき、そのなかで過ごしてもらうことができます。

また、腎臓病では、ご自宅で皮下輸液ができるように、ご指導いたします。

ターミナルケア(緩和治療)をご自宅での実践を希望される

飼い主さまには、ケアの方法をお話ししています。