コラム:「🧠 子どもや若者の「こころのサイン」を見逃さないために:最新研究から見えた2つのリスク経路」

モンシロチョウを可愛がる

「あなたの笑顔が、ペットにとって一番のおくすりです。そして、あなた自身にも」

アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

いつも当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。

近年、子どもや若者の「こころの不調」──とくに“死にたい”という気持ち(自殺念慮)が以前よりも身近な問題となっています。実はこれは、日本だけではなく、世界的にも共通する傾向です。

私たち動物に寄り添う獣医師も、日々、心のケアの大切さを感じる場面があります。ペットは時に“言葉を持たない家族”のような存在となり、彼らとの関わりが、飼い主さまのこころに深く作用することもあります。

今回は、カナダ・ケベック州で四半世紀にわたって続けられている大規模な縦断研究をもとに、「どのような子どもがどんなタイミングで自殺念慮を抱きやすくなるのか」という重要な知見をご紹介します。


🔍 どんな研究だったの?

この研究は1997~1998年に生まれた2,000人以上の子どもを25歳まで追跡したものです。幼児期から成人に至るまでのこころの状態を、家庭・学校・本人からの多面的な視点で記録しています。

とくに思春期や若年成人期にかけて「過去1年以内に強く死にたいと感じたか?」を尋ねることで、自殺念慮の経過を詳しく調査しました。


📈 どんな経路で“こころの限界”に達するのか?

この研究からは、大きく分けて次の2つのタイプのリスクパターンが見えてきました。


【タイプ1】小さいころからこころがつらかったケース

▶ 幼少期や小学生時代から「落ち込みやすい」「キレやすい」といった特徴が見られた子が、思春期早期(中学生ごろ)から“死にたい”と感じ始めるパターンです。

このグループでは、内面的な悩み(不安・抑うつなど)と、外に出る行動(反抗・攻撃的な態度など)が両方見られる傾向があり、家庭環境の影響(親のこころの問題)も無関係ではないことが示唆されました。


【タイプ2】思春期以降に急激にこころが不安定になるケース

▶ 子どものころには大きな問題が見られなかった子でも、高校生や大学生の時期に抑うつ症状が出てきて、“死にたい”と感じるようになるパターンです。

このタイプは、思春期から若年成人期にかけての社会的ストレスや孤立、不安の蓄積などが影響していると考えられます。


🧭 どんなことがわかるの?

この研究から分かるのは、「子どものころからつらさを抱えているケース」と「思春期・若年成人になってから一気にこころのバランスを崩すケース」が、それぞれ異なる経路で自殺念慮に至るということです。

つまり、“こころのサイン”はいつ現れるか人によって違うのです。


💡 いま大人ができること

この研究は人間のこころの問題に関するものでしたが、動物と暮らす中でも私たちは次のような点に気を配ることができると考えます。

  • 🐶 子どものころから感情の起伏が激しい子には、早めに心のケアの場を整える
  • 🐱 思春期以降に急に元気をなくした子に「何があったの?」と気づいてあげる
  • 🐹 動物とのふれあいを、安心できる時間として活用できるように獣医師からアドバイスができるようにする

当院でも、ペットとの暮らしが子どもたちの“こころの安定”に役立ったというお話をよくお聞きします。生き物を通じて、優しさや責任感、自信を育むことができる──そんな役割も、動物たちは担ってくれています。


🌿 最後に:苦しみを「予防」するために

今回の研究は、心の不調には早期の気づきが非常に重要であることを教えてくれました。私たちも、動物の病気を“予防する医療”を大切にしていますが、人間のこころもまた、予防と早期介入が鍵なのです。

あなたの大切なご家族やお子さまが、もし少しでも「いつもと違うな」と感じたら、そのサインを見逃さず、専門家に相談することをおすすめします。

そして、ペットとの時間が、こころを支える「癒し」になることもある──そのことを、私たちは日々実感しています。


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