コラム:「【ペットと行く野山歩き】クマ対策の基本とヘルメット装着のすすめ」

ツキノワグマ

最終更新日:2025年11月10日

こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

近年、里山の荒廃や異常気象の影響により、全国でクマの目撃情報が増加しています。山間部や里山の周辺では、人の生活圏にもクマが出没することが珍しくなくなりました。私たちの動物病院の周辺も例外ではなく、ペットと共に野山で自然を楽しむ機会が多い地域です。そこで、飼い主の皆さまが安全に楽しむためのクマ対策を改めて整理しました。


愛知県のクマ目撃情報

愛知県では、尾張地方を中心にツキノワグマの目撃回数が年々増加しています。特に山間部や里山周辺での目撃が多く、住民の間でも注意喚起が行なわれています。環境省+4Facebook+4ffpri.affrc.go.jp+4

豊田市HP「ツキノワグマとの共生」に目撃情報が掲載中


岐阜県のクマ外傷事例

岐阜県下呂市では、2025年6月11日夜に80代の女性がクマに襲われる被害が報告されています。このような事例は、クマの生息域の拡大と人間の生活圏の接近が要因と考えられます。YouTube


長野県のクマ外傷事例

長野県上松町の山林で、森林組合の男性職員2人がクマに襲われけがをしました。居合わせた別の職員は、「すごい勢いで向かってきて怖かった」と語っています。この事例は、クマの攻撃が突然であることを示しています。YouTube


近年の傾向と背景

  • 出没件数の増加:令和6年度のデータによると、ツキノワグマの出没件数は前年を上回る高い水準にあり、特に6月に増加が見られました。Facebook+4環境省+4鳥獣被害対策ドットコム+4
  • 人的被害の発生:人的被害は例年並みであり、特に春から夏にかけての期間に発生が集中しています。中部地方では6月に被害が多い傾向が見られます。環境省
  • 生息域の拡大:クマの生息域が低標高域や人間の生活圏にまで拡大しており、これに伴い目撃件数や被害件数が増加しています。

クマ外傷の特徴

最新の文献報告によれば、クマによる外傷は以下の特徴があります。

  1. 頭部・顔面への攻撃が多い
    クマは立ち上がって襲う際、頭部や首を標的にすることが多く、前肢の打撃や咬みつきにより骨折や深達性の軟部組織損傷を引き起こすケースが報告されています。
  2. 深く広範囲の創傷
    前肢や顎の力は非常に強力で、打撲や裂傷だけでなく、眼球損傷や歯牙破折、外傷性くも膜下出血などを伴う重篤な症例もあります。
  3. 感染リスクの高さ
    クマの口腔内には特定の嫌気性菌の報告は少ないものの、人やペットの口腔内には嫌気性菌常在するので、創傷が深部に及ぶ場合には感染リスクが高まると予想されます。

野山でのヘルメット装着は有効な防御策

クマの攻撃は突発的で予測困難です。頭部への攻撃が多いことから、ヘルメットの装着は最も有効な防御策の一つです。

  • 自転車やバイクの乗車時のように、頭部保護を習慣化しましょう。
  • 特にペットと同伴する場合、飼い主が冷静に行動するためにも頭部保護は必須です。

ペットの安全管理のポイント

野山でのクマ遭遇はペットにも大きな危険があります。以下の対策を徹底しましょう。

  • リードの着用:常にペットを制御できるようにし、目を離さない。
  • 大声や鈴・ラジオで存在を知らせる:人だけでなくペットも周囲に音を発することで、クマの接近を防ぐ効果があります。
  • 食べ物やおやつを持ち歩く際は注意:匂いでクマを引き寄せないよう、密閉容器で管理するといいのかもしれません。
  • 体調管理:疲れている、体調不良のペットはストレスにより逃げ遅れることがあります。
項目周波数帯(Hz)特徴・クマへの影響
ツキノワグマ想定聴力低域:100 Hz~高域:約15 kHz最も感度が高いのは8〜15 kHz。低域も聞こえるが遠距離では減衰。人間の普通の会話は十分認識可能。
小学生の甲高い声(騒ぐ声)基本周波数:250〜400 Hz、倍音:1〜5 kHz倍音が高く鋭く響くため、クマに脅威と誤認されやすい。遠距離にも伝わるが、興奮や警戒を誘発する可能性が高い。
大人男性の低めの声基本周波数:100〜130 Hz、倍音:1〜3 kHz落ち着いた低音で、人間の存在を穏やかに伝える。遠くの個体でも認識されやすい。
小型犬の吠える声(チワワ・トイプードル等)基本周波数:300〜600 Hz、倍音:1〜8 kHz高めの声と鋭い倍音を含むため、クマには警戒刺激になりやすい。距離や犬の大きさで反応が変わる。
登山者用クマよけベル約2〜4 kHz持続音で人間の存在を知らせる。鋭さは少なく、クマを驚かせず遠距離にも効果的。
手作りベル/小型鈴約1.5〜3 kHz持続音として存在を知らせる。音量が小さいと遠距離では届きにくい。

🔹 甲高い声や犬の吠えが危険な理由

  1. 高周波の倍音が豊富で鋭く響く
    • クマは8〜15 kHz帯域で感度が高く、この範囲に小学生や犬の声の倍音が重なる。
    • 脅威と誤認して防衛的反応(突進)を起こす可能性がある。
  2. 声や音の変化が急
    • 不規則で大きさが変動する声は、クマに予測不能な刺激として認識される。
  3. 安全な存在の知らせ方ではない
    • 落ち着いた低音+鈴の持続音で「人がいる」と伝える方が安全。

クマと遭遇した際の行動

  1. 静かに後退する:決して急に走らず、目を合わせすぎずに距離を取る。高い声は厳禁。
  2. 背を向けず、低姿勢で後退:攻撃を誘発せず、安全に距離を確保。
  3. 大声で威嚇:ペットも含めて存在をアピール。ただし、30mの近距離の場合には、防衛反応(突進・威嚇突進)を誘発する可能性があります。
  4. 安全な避難場所へ移動:建物や車、木に登る場合は慎重に。

応急処置の基本

万が一クマに襲われてしまった場合は、自己判断せずすぐ医療機関へ。応急処置としては:

  • 創部の洗浄:清潔な流水で異物や血液を除去。
  • 止血:清潔な布や包帯で圧迫止血。
  • 感染予防:広域抗生剤投与や破傷風ワクチン・免疫グロブリンの適切な使用。
  • ペットは動物病院受診:頭部や顔面の損傷はCT検査や外科処置が必要なことがあります。

日常的な予防策

  • クマの生息情報の確認:危険な場所には立ち入らない。
  • 複数人で行動:単独行動は避け、万が一の時に助け合える体制を作る。
  • 音で存在を知らせる:鈴やラジオでクマに人間の存在を知らせる。
  • 食べ物やゴミの適切管理:匂いでクマを引き寄せない。

クマとの遭遇を完全に避けることは難しいですが、ヘルメット装着、ペットの管理、遭遇時の行動を徹底することで被害リスクを減らすことができることもあると考えます。

野山での自然体験はペットにとっても飼い主さまにとっても楽しい時間ですが、安全第一で行動することが何より重要です。

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