シマリスの不正咬合についてのお話です。
当院歯科では犬猫よりも圧倒的にエキゾチックアニマルの歯科治療が多いです。
中でも、
ウサギ
モルモット
チンチラ
デグー
は、ビッグフォーです。
それは前歯だけでなく奥歯も伸びる特徴があるからです。
今回のシマリスやハムスターは奥歯は伸びません。
飼い主様のご協力が得られましたので、シマリスにおける不正咬合の治療について一連の流れをご説明します。
まずは食餌と水を抜いてお連れいただきます。
頬袋に食餌を貯め込むと麻酔をかけた時に、吸い込まれて窒息してしまうので、何も食餌は与えないでお連れいただきます。
また、お口の中を見るのに、頬袋などに物が入っているとしっかり観察できないからです。
次は酸素をたっぷり吸ってもらいます。
麻酔ガスを吸う前に体内に十分な酸素を蓄えてもらうためです。
犬猫では気管チューブという管を気管に挿入しておけば呼吸が止まっても、人工呼吸装置で酸素を強制的に吸入させることができます。しかし、ポケットに入るような小さな種類では、それができません。呼吸が止まった時に少しでも体内に酸素が残っていれば、その間に緊急処置で救命できるかもしれません。
基本的にはガスを吸入して麻酔をかけます。
ポケットペットと呼ばれる小さな種類では、麻酔をかけずに細かな所を診ることは非常に困難ですし、大きなストレスを伴います。麻酔をかける機会がある時には積極的に身体検査をくまなく実施します。
この子は男の子なので、精巣が入っている陰嚢などもしっかり観察・触診します。
その後、本題の歯科治療に移ります。
前歯がカールして、上顎の歯茎に刺さっています。
切断しても、刺さっているので、抜けません。
綿棒で支えているのが、下顎の前歯ですが、1本なくなっています。
この前歯に異常がある場合には、硬過ぎるものを齧っていたことが原因と考えています。
最も多いのが、金属製ケージのバーです。
最近はフクロモモンガ用に背の高いアクリル製ケージが市販されているので、ケージバーを齧るようならすぐに買い替えていただくのがよいでしょう。
適度に硬いものは、環境エンリッチメントとしてもお勧めです。各種製品が市販されていますので用意してあげましょう。
緑の丸が示しているのが歯が突き刺さっていた所です。痛かったと思いますが、食事はできていたようです。食べているからと言って異常がないとは言えないということです。
幸い、この穴からは膿が出てくるということはありませんでした。膿が出る場合には、その上にある鼻の穴のトンネルに貫通してしまっていることが多いです。そうなると慢性鼻炎のために、呼吸困難となり、食欲がなくなってしまいますし、麻酔がかかりにくく、また覚めにくいというリスクも生じます。
不正咬合には、食欲不振、ヨダレ、口臭、体臭などの症状があります。
しかし、そのような症状が現れた時には結構ひどい状態になっていることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
歯や顎が変形していることが多く、処置によって治すということは厳しいことがほとんどです。しかし、早期であれば、何回か処置を繰り返すことで矯正されることもあります。
飼い主様の「あれっ?」という感覚が早期発見につながります。
様子を見ずにすぐにご予約ください。
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