最終更新日:2026年3月21日
肝臓・肺・眼・脳など体内まで侵入する寄生虫|室内飼いでも感染する理由と、獣医師が勧める正しい駆虫対策
この資料は、犬や猫に寄生する回虫が人に感染して引き起こす「幼虫移行症」のリスクと対策について詳しく解説しています。人の体内に入った幼虫が肝臓や肺、眼、脳などの重要臓器を移動することで、深刻な炎症や視力障害を招く危険性があることを強調しています。特に子供は砂場遊びやペットとの接触を通じて感染しやすいため、飼い主さまには徹底した衛生管理が求められます。室内飼育であっても感染の可能性は否定できないため、定期的な駆虫薬の投与がご家族の健康を守る鍵となります。専門的な視点から、動物病院での検査と継続的な予防措置の重要性を説く啓発的な内容です。
こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
回虫幼虫移行症についてのお話です。
まずは、「何それ?」ということですよね。
犬猫には回虫(かいちゅう)というミミズに似た寄生虫がいることがあります。

東京都獣医師会のサイトを見てください。
回虫の恐ろしさ ―「腸」では済まされないリスクとは?
犬や猫に寄生する回虫は、腸管内で成虫となり、糞便中に卵を排出します。この卵が土壌や手指、あるいは加熱不十分な野菜などを介して人間の体内に入り込むと、想像以上に深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
実は、犬猫の回虫は人の体内では「成虫」にはなれません。しかし、成虫になれないからといって安心してはいけません。回虫の卵から孵化した「幼虫」は、そのまま人の体内を彷徨い続け、さまざまな臓器に入り込みながら成長を続けようとします。これを「幼虫移行症(Larva Migrans)」と呼びます。
本来、犬猫の腸にとどまるはずだった寄生虫が、人という“誤った宿主”の体内を移動しながら侵入することで、深刻な炎症や臓器障害を引き起こすのです。
幼虫移行症の主な寄生部位 ― 肝臓・肺・眼・中枢神経まで
人に感染した場合、回虫幼虫はまず腸管から肝臓へ移動し、そこから血流やリンパ流に乗って全身へ広がります。最も多く報告される寄生部位は肝臓と肺です。肝臓では慢性的な炎症(肝炎)を引き起こし、肺では慢性的な咳、呼吸困難、喘鳴などが現れることがあります。
さらに深刻なのは、眼や中枢神経にまで入り込むケースです。眼に到達した幼虫が網膜や視神経に炎症を起こすと、「眼幼虫移行症(Ocular Larva Migrans:OLM)」という状態となり、視力障害や失明に至ることもあります。また、極めて稀ではありますが、脳に達した場合には神経症状やけいれん発作、場合によっては生命の危険を伴うこともあるのです。
治療の困難さ ― 腸内にいないから駆虫薬が届かない
回虫が本来寄生するべき腸内であれば、現在の獣医学や人医療の知見により、安全で効果的な駆虫薬が多く存在します。しかし、幼虫が腸管外の肝臓や眼、肺、中枢神経といった重要臓器に入り込んでしまうと、薬が直接届きにくくなり、治療が極めて困難になります。
たとえば眼に侵入した場合には、視神経に絡みついた幼虫を外科的に摘出する必要があることもあります。これは眼球を切開する手術となり、失明リスクを伴う深刻な処置です。また、肺や肝臓の場合も、幼虫が慢性的な炎症を起こして組織を壊し続けるため、長期的な症状と後遺症が残ることもあります。

回虫感染は“動物だけの問題”ではない
このように、犬や猫の回虫感染は飼い主さまのご家族である子ども・高齢者を含むすべての人に関わる「人獣共通感染症(ズーノーシス)」です。とくに小さな子どもが土や砂場で遊びながら手指を口に入れる行動は、感染リスクが高いとされています。
家庭内で犬や猫を飼っているご家庭では、「うちの子は室内飼いだから大丈夫」と思いがちですが、完全な室内飼育でも感染しているケースは少なくありません。母親からの胎盤感染や母乳感染、ペットショップや保護施設での感染履歴が原因のこともあります。

大切なのは予防と定期的な駆虫
人への感染を防ぐには、まず犬や猫に定期的な駆除を行なうことが基本中の基本です。とくに子犬・子猫では感染率が非常に高いため、動物病院での診察と糞便検査、そして定期的な駆虫が不可欠です。
また、ペットの糞便は必ず速やかに処理し、地面や砂場に放置しないこと。手洗いの習慣を家族全員に徹底し、小さなお子さんには口に手を入れないよう、日頃から衛生教育を行なうことが重要です。
犬猫の回虫は、たとえ人の体内で成虫にならなくても、「幼虫のまま人体を破壊する」という非常に危険な能力をもつ寄生虫です。腸管にとどまっている間は安全に駆除できますが、肝臓、肺、眼などに入り込んでしまうと手術や長期治療が必要になることもあります。
この恐ろしい「幼虫移行症」から家族や地域社会を守るためには、ペットの健康管理=人の健康を守る第一歩であることをお伝えすることは、私たち獣医師の大きな役割です。

ですから、感染しない対策が必要です。
感染源は、知る人ぞ知る、「公園の砂場」!
も、あるんですが、それよりも多いのが、犬猫との接触!
被毛1gに最大300個の卵があったという報告もあり。
回虫は産卵数が多いことで知られており、なんと1日20万個というデータも。

特にうんちが出る肛門周囲には多いです。抱っこすると、手だけではなく、衣服にも付着するかもしれません。
回虫の卵は顕微鏡でしか見えないほどの大きさです。いくらウエットテッシュで拭いても、完全にきれいにはできません。薬による駆除を継続することは基本です。
ワンちゃんの検便についてはこちら
おうちでは、とにもかくにも、トイレをこまめに掃除すること。
そして、ブラッシングや抜け毛処理を衛生的に。
この2つだと思います。

他には地鶏のレバ刺し。気を付けましょう!
こちらの環境省のサイトの52ページもご覧ください。
回虫の成虫はしっかり駆除できれば便に出てきたのを見つけることができるかもしれません。下記の写真は、子猫に駆虫剤を投与後に出てきた回虫です。

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よくあるQ&A
Q1. 犬や猫の回虫は人にうつりますか?
はい、うつります。
犬猫の回虫卵を誤って口にすると、体内で幼虫が移行し「回虫幼虫移行症」を引き起こします。
Q2. 回虫幼虫移行症になるとどんな症状が出ますか?
主な症状は以下です。
・発熱、咳(内臓型)
・肝臓腫大
・視力低下や失明(眼型)
特に目に入るタイプは重篤です。
Q3. 子供の方が感染しやすいのはなぜですか?
砂場遊びや手洗い不足により、回虫卵を口に入れやすいためです。
欧米の報告でも小児の発症が多いとされています。
Q4. 回虫はどこから感染しますか?
主な感染源は以下です。
・犬猫の糞便
・汚染された土壌(公園・砂場)
特に屋外での接触がリスクです。
Q5. 回虫幼虫移行症は目に入るとどうなりますか?
「眼トキソカラ症」と呼ばれ、網膜に炎症を起こし、視力障害や失明の原因になります。
片眼のみの発症が多いのが特徴です。
Q6. 回虫幼虫移行症は治りますか?
軽症例は自然軽快することもありますが、
重症例では駆虫薬などでの治療が必要です。
眼型は後遺症が残ることがあります。
Q7. 人にうつるのはどのくらいの確率ですか?
感染自体は珍しくありませんが、発症まで至るケースは限定的です。
ただし無症状感染も多く、見逃されている可能性があります。
Q8. 犬や猫の回虫はどうやって予防できますか?
最も重要なのは定期駆虫です。
・子犬子猫:高頻度で駆虫
・成犬成猫:定期的な予防投与
これにより環境汚染を防げます。
Q9. 室内飼いの猫でも感染源になりますか?
はい、なります。
母子感染や過去の感染により体内に回虫が残っている場合があります。
Q10. 飼い主ができる感染予防は何ですか?
以下が重要です。
・手洗いの徹底
・糞便の速やかな処理
・砂場での衛生管理
・定期的な動物の駆虫
特に子供がいる家庭では徹底が必要です。
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