最終更新日:2026年1月26日
フトアゴヒゲトカゲの脱水を防ぐための基本と注意点
フトアゴヒゲトカゲは乾燥地帯の生き物ですが、飼育下では温度管理や飲水不足により容易に脱水を起こします。食欲低下や目のくぼみ、皮膚の弾力低下などが主なサインで、放置すれば体力低下や重い代謝性疾患につながります。定期的なミストや浅い水皿の設置、野菜や水分を含む食餌を与えることが予防に有効です。異変を感じたら動物病院での補液治療が必要となる場合もあります。日常から観察と環境管理を徹底し、健康維持を心がけましょう。
こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。
フトアゴヒゲトカゲ(Pogona属)は、一般的にペットとして人気のある爬虫類です。彼らは通常、オーストラリアの乾燥した環境に生息していますが、適切な飼育環境を整えないと脱水症状を引き起こすことがあります。脱水症状は、彼らの健康に深刻な影響を与えるため、早期発見と適切な治療が重要です。本記事では、脱水の症状、原因、そして治療方法について詳しく説明します。

脱水の症状
フトアゴヒゲトカゲが脱水を示す際には、以下のような症状が現れることがあります:
- 皮膚の弾力性の低下: 皮膚をつまんだ際に、通常であればすぐに元に戻りますが、脱水状態では元に戻るのに時間がかかります。しかし、これは爬虫類では分かりにくいです。
- 眼の陥没: 脱水により、眼がくぼんで見えることがあります。同時にネバネバの目やにで目が開かなくなることも多いです。
- 口腔内の粘稠性増加:口の中のネバネバが強くなります。歯周病で出血して血液を含むヨダレが付着していることもよくあります。
- 食欲不振: 脱水症状のフトアゴヒゲトカゲは食欲を失うことがよくあります。
- 体重減少: 脱水が続くと体重が減少します。
- 活動量の低下: 通常活発であるのに、動きが鈍くなる、または無気力になることがあります。
- 排泄物の変化: 脱水状態では、糞便が乾燥し、硬くなることがあります。糞便よりも、大事なのが尿の状態です。尿酸が固まって、「尿酸プラグ(栓)」になって、便秘になることがとても多いです。

脱水症状の原因
フトアゴヒゲトカゲの脱水症状にはさまざまな原因が考えられます:
- 不適切な飼育環境: 飼育ケージ内の異常な高温環境は脱水を引き起こしやすくなります。
- 水の摂取不足: フトアゴヒゲトカゲは水皿から水を飲む習慣が少ないため、特に幼体や病気の個体は水分補給が不十分になることがあります。
- 不適切な食事: 水分の少ない食餌や乾燥した餌ばかり与えると、水分不足に陥る可能性があります。
- 病気: 消化管内異物などの一部の病気や寄生虫感染も脱水を引き起こすことがあります。特に消化器系の問題がある場合、脱水症状が現れやすいです。
- ストレス: 飼育環境の変化や頻繁なハンドリングがストレスとなり、結果として食欲不振や水分摂取不足に繋がることがあります。

脱水症状の診断
脱水症状の診断は、獣医師によって慎重に行なわれます。診断には以下のような方法が用いられます:
- 視診: 眼の陥没やヨダレ、皮膚の弾力性の低下など、外見的な症状を確認します。
- 触診: 皮膚をつまんで弾力性を確認します。消化管に床材が滞っていることもあるので、お腹を慎重に触っていきます。
- 体重測定: 体重の変動をチェックし、急激な体重減少がないか確認します。飼い主さまによる日頃からの体重記録が重要です。
- 血液検査: 血液検査により、血液中の電解質バランスや腎機能を評価します。脱水が酷いと血液循環が悪く採血することさえできないことがよくあります。
- 糞便検査: 糞便検査により、寄生虫や消化器系の異常を確認します。しかし、これは、健康診断としてすでに確認済みの状態でいていただきたいと思っています。
- X線検査:床材を飲み込んでしまい、これが原因で食欲不振から脱水を起こしていることがあるので、お腹のX線検査を実施します。
脱水症状の治療方法
フトアゴヒゲトカゲの脱水症状の治療は、症状の重症度に応じて異なります。当院での一般的な治療方法を以下に示します:
- 経口補水: 軽度の脱水症状の場合、ご自宅での経口補水が効果的です。注射器などで水を口元に与え、自ら飲むことを促します。
- 強制補水: 自発的に水を飲まない場合、スポイドやシリンジを使用して口の中に水を流し込む方法です。電解質溶液を用いることで、より効果的に水分を補給します。
- 温浴:お尻の穴から、ある程度水分を吸収してくれることを期待して、温浴することがあります。ただし、弱っているときには溺れてしまうことがあるので、慎重に行ないましょう。
- 腹腔内輸液: 中程度から重度の脱水症状の場合、注射による輸液が必要です。獣医師が腹腔内に電解質溶液を注射し、水分を補給します。これは迅速に水分を補給する方法として非常に有効です。
- 点滴: 非常に重度の脱水症状の場合、点滴による骨髄内補液が行なわれます。これにより、即座に水分と電解質を体内に補給します。しかし、骨からの感染リスクと疼痛がありますので、リスク/ベネフィットを勘案して実施します。
- 食事の改善: 水分を多く含む新鮮な野菜や果物を提供し、食餌からも水分を摂取できるようにします。食欲があるうちは、うまくいくかもしれません。
- 環境の調整: 飼育ケージの湿度と温度を適切に管理し、彼らが快適に過ごせる環境を整えます。適度な湿度を保つために、水皿やミストスプレーを利用することも有効です。

予防策
脱水症状を予防するためには、以下の点に注意することが重要です:
- 適切な飼育環境の維持: 飼育ケージ内の温度と湿度を適切に管理し、定期的にチェックします。
「フトアゴヒゲトカゲの理想の環境とは」 - 十分な水分の提供: 常に新鮮な水を提供し、フトアゴヒゲトカゲが水を飲むよう促します。直接、鼻先に水をスプレーしてみましょう。ただし、優しく。水皿からはあまり水を飲んでくれないようですが、できれば、身体が浸かるサイズの浅い水皿の常設をお勧めします。また、メニューに水分を多く含む餌を取り入れることも重要です。
- 定期的な健康チェック: フトアゴヒゲトカゲの健康状態を定期的にチェックし、異常があれば早期に対応します。体重測定と、体の下側からの観察は必ず行なってください。
- ストレスの軽減: 飼育環境を安定させ、不要なハンドリングやストレス要因を減らします。
- 定期的な診察: 定期的に獣医師による健康診断を受け、早期に健康状態の異常を発見します。

結論
フトアゴヒゲトカゲの脱水症状は、適切な環境管理と早期の対応によって予防および治療が可能です。裏を返せば、時期を逸してしまうと救命できないことがあるということです。飼い主さまとして、彼らの健康状態を常に観察し、異常があれば迅速に対応することが重要です。適切な知識とケアによって、健康で長寿を全うすることができます。脱水症状の兆候を見逃さず、早期に対応することで、彼らの健康を守りましょう。
フトアゴヒゲトカゲの脱水Q&A|症状チェックから自宅ケア・動物病院を受診すべきサインまで
Q1. フトアゴヒゲトカゲが脱水かどうか、自宅でできる簡単なチェック方法はありますか?
フトアゴヒゲトカゲの脱水は、目がくぼんで見える、皮膚にハリがなくシワっぽい、口の中のネバネバが強い、フンが異常に硬い・少ないといったサインで疑います。これらが複数当てはまる場合は、すでに中等度以上の脱水の可能性があるため、早めに爬虫類に詳しい動物病院への受診を検討してください。
Q2. フトアゴヒゲトカゲはあまり水を飲まないと聞きますが、どのくらい水分を与えれば良いですか?
フトアゴヒゲトカゲは野菜や活餌昆虫からも水分をとるため、見た目ほど多く飲水しないことがありますが、「飲まなくて良い」わけではありません。日常的に水皿の設置、みずみずしい葉野菜の給与、必要に応じたスポイトでの経口補水などを組み合わせ、「いつでも水分補給できる環境」を維持することが重要です。
Q3. 自宅でできるフトアゴヒゲトカゲの脱水対策・水分補給の方法を教えてください。
軽度の脱水が疑われる場合や、普段からの予防としては、シリンジやスポイトでの経口補水、短時間の温浴による水分摂取の補助、霧吹きで鼻先やケージ内に水滴をつくって飲ませる方法などがあります。個体の状態によっては誤嚥や溺水のリスクもあるため、弱っている場合や飲み込みが悪い場合は自宅だけで無理をせず、動物病院で相談してください。
Q4. フトアゴヒゲトカゲの脱水は、どんな飼育環境が原因になりやすいですか?
高温すぎるケージ内温度、極端に低い湿度、終日バスキングのみでクールスポットがないレイアウト、水皿がない・汚れている・深すぎて使われないといった環境は、慢性的な脱水リスクを高めます。温度勾配、湿度、レイアウト、水分源の4点を定期的に見直し、「暑すぎず、乾かしすぎず、いつでも水にアクセスできる」環境づくりを心がけましょう。
Q5. フトアゴヒゲトカゲの脱水は、どのタイミングで動物病院を受診すべきですか?
ぐったりして動かない、食欲がほとんどない、目が強く陥没している、皮膚をつまんでもすぐ戻らない、口のネバネバが強く舌の色も悪いといった場合は、すでに重度の脱水や腎障害などが進行している可能性があります。自宅の対処で様子を見るより先に、爬虫類診療に対応できる動物病院での点滴・検査を受けることで、救命できる可能性が高まります。
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