〜人と動物が共に暮らす地域の安全を守るために〜
こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
2025年8月16日午前3時45分頃、愛知県豊田市広幡町の猿投グリーンロード(下り線)にて、オートバイと「カモシカとみられる動物」が衝突する事故が発生しました。
この事故で20歳代の男性が亡くなり、同乗していた女性も重傷を負うという、大変痛ましい結果となりました。
報道によれば、衝突したのは ニホンカモシカ(特別天然記念物) の可能性が高いとされています。
この事故は、人間にとっても動物にとっても命を奪いかねない「交通事故と野生動物」の問題を改めて考えさせられる出来事です。

ニホンカモシカとはどんな動物か?
ニホンカモシカ(Capricornis crispus)は、日本固有のウシ科の動物で、成獣は体長110〜120cm、体重30〜40kg程度に成長します。
森林に生息し、草や木の葉、若芽などを食べて暮らす草食動物です。
かつては乱獲や森林伐採の影響で数が激減し、絶滅の危機に瀕していました。しかし、1955年に特別天然記念物に指定され、厳重に保護された結果、現在では本州の山間部を中心に分布を回復しつつあります。
近年では、愛知県豊田市周辺でも生息が確認されており、出没件数や交通事故件数が増加傾向にあります。

豊田市での「カモシカと交通事故」の現状
豊田市の調査によると、2011年度から2019年度の間に死亡したカモシカの原因のうち、最も多かったのは交通事故でした。
合計で66件にのぼり、年々その件数は増加していると報告されています。
これは、カモシカの生息域が拡大し、かつて見られなかった地域でも出没するようになったことと関係しています。2017年度以降は豊田市西部の旧市街地周辺でも目撃されており、人と動物の生活圏が近づいているのが現状です。

なぜ交通事故が起こるのか?
動物との交通事故(ロードキル)が起こる背景には、いくつかの要因があります。
- 夜間や早朝の活動
カモシカは主に薄明薄暮性(朝夕に活動が活発になる)で、夜間や早朝に道路へ出てくることが多いとされています。 - 生息域の拡大
森林や山林の開発、農地や道路の拡大によって、動物たちの行動範囲が道路と重なることが増えました。 - 交通量と速度の増加
高速道路や自動車専用道路では、ドライバーが気づいても急停止が難しく、衝突に至るケースが多発しています。

オートバイと動物の衝突が特に危険な理由
四輪車と比べて、オートバイは身体が露出しているため、動物との衝突によるリスクが非常に高いです。
- 車体が軽いため、衝突時に大きく弾き飛ばされる
- 運転者・同乗者の身体が直接衝撃を受ける
- プロテクターやヘルメットを着用していても、体幹部や下肢を守りきれない
そのため、動物との事故は死亡や重傷に直結する危険性が大きいといえます。

飼い主さま・地域住民の方々への注意喚起
動物病院として、地域にお住まいの方々へ次の点をお願いしたいと思います。
- 山間部や郊外の道路では「動物飛び出し注意」を常に意識する
特に「猿投グリーンロード」のように山林が隣接する道路では注意が必要です。 - スピードを控えることが最大の予防策
動物が急に飛び出してきても、速度が遅ければ回避や減速が間に合う可能性が高くなります。 - プロテクター・ヘルメットの完全装備
二輪車に乗る場合は「安全装備を惜しまない」ことが命を守ります。 - 動物の痕跡を見逃さない
路肩に足跡や糞がある場合、近くに動物がいるサインです。もしこれにくづくことができれば減速して慎重に進みましょう。 - 飼い犬・飼い猫の飛び出し事故にも注意
野生動物だけでなく、ペットの交通事故も少なくありません。玄関や庭先から道路へ飛び出さないよう工夫が必要です。

動物病院からの視点
私たち動物病院の立場からすると、交通事故は人命にかかわる大問題であると同時に、動物の命を奪ってしまう「人と自然の共生に関わる課題」でもあります。
- 野生動物は治療や保護が難しいため、一度の事故で命を失ってしまうことが多い
- 保護対象であるニホンカモシカが死亡することで、生態系や地域の自然環境にも影響を及ぼす
- 飼い主さまの大切な犬や猫も、ちょっとした油断で交通事故に遭う可能性がある
だからこそ、交通安全は「人間のため」だけでなく、「動物たちのため」でもあるのです。














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