デグーの魅力と健康を守る飼育方法

動物病院を受診するデグー

ー初心者にもおすすめできる、知っておきたい暮らし方のポイントー

デグーは、その愛らしい目としなやかな体、そして好奇心旺盛で活発な性格が魅力のげっ歯類です。チンチラと同じような生息場所に住んでいますが、見た目はいわゆるドブネズミ(ラット)やリスに似ています。人と深く関わることができ、飼い主とコミュニケーションを楽しむペットとして、最近では「鳴き声で感情表現をするインテリ系小動物」なんていわれて注目を集めています。

こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。

今回は、当院でも来院数が多くなっている人気の小動物、デグーについて行動や社会性、それに病気についても詳しくお話しします。デグーをお迎えしてからの飼い方や環境づくりには、いくつかの心掛けてあげたいことがございます。初心者にも比較的おすすめの種類ではありますが、適切な知識を持たずに飼い始めると、思わぬトラブルを招くこともあります。この記事では、デグーの特徴、暮らし方のコツ、そして動物病院でよく見られる健康問題について解説します。とくに、当クリニックで頻繁に見られるデグーの健康問題には、飼育環境や食事に起因するものが多くあります。この記事を通して、適切な健康管理ができるようにお話ししたいと思います。


デグーの特徴と生態

<野生での暮らしを知ることが健康管理の第一歩>

デグーは、南米の野生環境、とくにチリやボリビアの乾燥地帯に生息しています。昼行性で、群れを作って生活する社会性のある動物です。体長は15cm前後、体重は200g程度。しなやかで筋肉質な体をもち、尾の先には房状に毛が生えています。このしっぽを無理に引っ張ると、皮膚がずるむけてしまうので注意が必要です。
野生のデグーは、地面に穴を掘って巣を作り、草木の根や樹皮、乾燥した植物などを主食にしています。そのため、飼育下でも高繊維質な食餌が必要です。糖質を多く含む食餌に弱く、糖尿病になりやすい体質を持っています。
また、デグーは目が非常に良く、色の識別もできると言われています。その一方で、聴覚も発達しており、鳴き声を使って仲間とコミュニケーションをとっています。「グー」「ピピピ」「キー」などと多彩な音を出し分け、喜びや不満、警戒心などを伝えているのかもしれません。飼い主に慣れてくると、「グー」と甘えるような声を出してくれることもあるようです。ここまでくれば、信頼関係が築けている証拠です。


デグーをお迎えする前に知っておくこと

<お迎えの前に、寿命、社会性、環境、生活リズムについて理解しておきましょう>

・長い寿命:平均寿命は5~8年。適切な環境では10年以上生きることも。
・高度な社会性:とても賢く、人に慣れやすい反面、繊細な面も。群れで暮らすため、単独飼育だとストレスを感じやすい傾向。ただし、複数飼育は、相性を見ながら慎重に。
・温度/湿度管理:高温多湿に弱く、25℃以上では熱中症の危険も。
・生活リズム:昼行性で、朝から夕方にかけて活動的。夜は静かに休むため、人との生活に馴染みやすい。

これらを理解しておくことで、初心者でも安心して飼育をスタートできます。


飼育環境の整え方

<ケージとレイアウトのポイント>

デグーの飼い方の基本はケージ選びです。デグーはよく動き、ジャンプや登ることが大好きです。そのため、縦にも横にも動ける広めのケージが理想的です。高い場所に登ることを好みますが、落下事故の危険もあるので、ステップ(棚)の配置に留意しましょう。

ケージの床材には、足を傷めないように紙チップや牧草を使います。金網の床が露出したままというのは避けた方が無難です。

ストレスを感じると、自咬行動が生じることがあります。ストレス対策には、快適な温度と湿度、適度な運動スペース、そして隠れられる場所(シェルター)を用意しましょう。

日本の家屋では、大きなケージで飼育することは難しいと思いますので、ケージ外での運動もおすすめです。毎日1時間、安全な室内に出して、自由に走ることをさせることで、運動不足が解消できるといいですね。


デグーの食事管理と栄養

<「かわいいから」とおやつを与え過ぎない>

デグーの主食は乾牧草です。これに、専用の高繊維のペレットを補いましょう。糖分の多い食材を与えると、糖尿病や肥満を引き起こす可能性があります。飼い主さまが愛情のつもりでドライフルーツやナッツを与えてしまうケースがよくありますが、これは厳禁です。自然界では、糖分や脂肪分をほとんど摂取しない動物です。したがって、それらは代謝に悪影響を及ぼし、血糖値の異常や肝障害を引き起こすこととなります。ペットコーナーにはおいしそうな商品が並んでいますが、我慢してくださいね。

常に新鮮な水を切らさないようにしましょう。水分不足はとくに腎臓や膀胱などの泌尿器に負担がかかり、尿路結石の原因にもなりえます。


デグーにみられる代表的な病気とその対処法

当院で比較的よく遭遇する、ノドが詰まって苦しそう、かみ合わせが悪そう、ハゲた、ペニスが戻らないなど、代表的な病気について概要、原因、対策についてお話しします。

1.食道閉塞

飼育下では、おやつで与えるドライフルーツがデグーの小さな食道を詰まらせることがあります。ドライフルーツは硬く乾燥しており、ふやけにくく、一度詰まってしまうと、食道に長くとどまり、不快感からヨダレが大量に出てきます。これが続くと呼吸困難から誤嚥性肺炎につながる可能性があります。また、ドライフルーツはデグーにとって甘くて美味しいおやつですが、糖分が多いことも問題の1つです。

食道閉塞時全身麻酔

<対策>

  • 予防: ドライフルーツの代わりに少量の新鮮な野菜や果物を与えることをお勧めします。デグーの主食は牧草や高繊維のペレットであるべきです。
  • 治療: 食道閉塞が疑われる場合、すぐに受診してください。放置すると命に関わるため、早急な対応が必要です。全身麻酔をかけて、詰まったものを胃に押し込みます。

2.不正咬合

デグーの歯は一生伸び続けるため、適切にすり減らさないと不正咬合(歯の噛み合わせ不良)が起こります。この問題は、よだれを垂らす、口が閉まらない、食欲不振、体重減少などの症状を引き起こします。不正咬合の主な原因は、適切なものをかじる機会が少ないことです。飼育環境に木の枝や特別なかじり木を用意しないと、歯が過剰に伸びてしまいます。また、金網などの金属などを齧ることで、前歯がゆがんだり、折れてしまったりすることもあります。

<対策>

  • 予防: デグーが自然に歯をすり減らすための物を提供することが重要です。食餌としての乾牧草の他に、専用のかじり木や安全な木の枝をケージに入れておくと良いでしょう。
  • 治療: 不正咬合が進行した場合、全身麻酔をかけて歯の処置を実施しています。定期的な歯のチェックと適切な管理が不可欠です。

3.脱毛とストレス関連症状

脱毛はデグーの健康問題の一つであり、ストレス、栄養不足、寄生虫などの感染等さまざまな原因があります。部分的な脱毛や全身的な脱毛が見られることがあります。不正咬合などが原因でヨダレが出て、それで口の周りが濡れて脱毛したり、前足で口周りを触れることで前足が脱毛することもあります。気にしすぎて、咬みちぎってしまう、自咬症に発展することもあります。

  • ストレス: 飼育環境の急変、過密な飼育、他のデグーとの争いなどがストレスを引き起こし、脱毛の原因になります。
  • 栄養不足: 繊維分が少なく糖分の多いような不適切な食餌は、皮膚と毛の健康に悪影響を及ぼします。微量ミネラルが不足している場合もあります。
  • 寄生虫: 外部寄生虫(ノミ、ダニなど)が皮膚のトラブルを引き起こすことがあります。

<対策>

  • 予防: ストレスを軽減するために、広いケージと隠れ場所を提供し、バランスの取れた食餌を与えることが重要です。毎日1時間以上の運動を複数回できるような放飼場があるとよいと言われています。明暗のサイクルを12時間交代にすることも大切です。床材を使って潜れるような行動ができるようにするのもよいでしょう。社会性のある動物ですので、「飼い主は群れの一員」という信頼を得られることも大切です。
  • 治療: 脱毛の原因が寄生虫の場合、適切な駆虫治療が必要です。栄養不足の場合は、食餌の見直しを行ないましょう。コミュニケーションが足りないようなら、かまってあげましょう。

4.陰茎脱(ペニス脱)

陰茎脱はデグーの雄に見られる問題で、陰茎が通常の位置から脱出し、戻らない状態です。陰茎に被毛がリング状に絡みついて、うっ血していることがあります。この状態は非常に痛みを伴い、迅速な治療が必要です。締め付けを放置すると、血流が途絶え、壊死を起こします。

主な原因は交尾や自慰行為に伴うもの、あるいは尿路結石などの泌尿器の問題です。また、ケージ内の不適切な構造物や鋭利な物が原因となることもあります。

<対策>

  • 予防: ケージ内の安全性を確保し、デグーが傷つかないようにすることが重要です。また、定期的な健康チェックを行ない、とくに普段は見えないおなか側に異常がないか確認することが大切です。
  • 治療: 陰茎脱が発生した場合、すぐに獣医師の診察を受けることが必要です。迅速な治療が行なわれないと、陰茎の壊死・感染リスクが高まり、排尿が滞れば致死的です。

5.糖尿病

デグーの代謝は糖類に対して敏感であり、不適切な食べ物が原因で糖尿病を引き起こすことがあります。糖尿病は、体重減少、過剰な飲水と排尿、食欲不振などの症状を伴います。

  • 高糖質食: デグーの自然な食事には糖分がほとんど含まれていないため、飼育下での高糖質食(果物や市販の砂糖入りのおやつなど)はハイリスクです。
  • 遺伝的要因: 一部のデグーは遺伝的に糖尿病にかかりやすい傾向があります。

<対策>

  • 予防: デグーの食餌は低糖質で高繊維のものを中心にすることが重要です。果物や甘いおやつは避け、牧草やペレットを主食とします。
  • 治療: 糖尿病と診断された場合、獣医師の指導のもとでインスリン注射や特別な食事管理が必要です。定期的な血糖値のモニタリングも行なわれることがあります。しかし、なかなか困難です。

6.肥満

肥満はデグーの健康に深刻な影響を及ぼします。肥満になると、関節に負担がかかり、心臓や肝臓の機能にも悪影響を及ぼします。運動不足や高カロリーの食餌が主な原因です。

  • 高カロリー食: 種子やナッツなど高カロリーの食べ物を多く与えると、デグーは肥満になりやすいです。
  • 運動不足: 狭いケージや運動の機会が少ないと、デグーの活動量が減り、肥満のリスクが高まります。

<対策>

  • 予防: デグーのケージには運動用のホイール(回し車)やステップ、遊び道具を設置し、十分な運動を促すことが重要です。また、バランスの取れた食餌を与え、カロリーをコントロールすることも大切です。
  • 治療: 肥満になってしまった場合、徐々に食事のカロリーを減らし、運動量を増やすプログラムを獣医師と相談しながら実施します。回し車(金属製は足を傷めやすいので、プラスチック製がおすすめ)や安全な室内での定期的な運動をさせてあげましょう。

デグーとの上手なコミュニケーション

デグーはとても感情豊かな動物のようです。信頼関係を築くには、焦らず、声をかけながら、ゆっくり慣らしてくことが大切です。人の手からおやつを受け取れるようになると、一気に距離が縮まります。こういう時がおやつの出番です。できるだけ糖質を抑えたピューレなどを与えておくと、病気で薬を内服するときに、これに混ぜて与えることで、一役買ってくれるかもしれません。

「グー」と小さく鳴くときは満足感や安心感を意味し、「キー」と鋭い声を出すときは不快感や恐怖を感じていると考えられています。デグーの鳴き声やしぐさを観察し、「デグーマスター」になることが、健康的な暮らし方の基本です。

飼い主さまが知っておきたいポイント

  • お迎え前に、寿命や生態をよく理解しておく
  • 初心者でも、正しい知識があれば飼いやすい
  • 飼育環境は広く、温度・湿度管理を徹底する
  • ケージには安全なかじり木や回し車を設置する
  • コミュニケーションを大切にする
  • 甘い食べ物は控え、牧草中心の食生活にする
  • 定期的に体重、歯、被毛、お腹側をチェックする
  • 定期的に健康診断に動物病院を受診する

デグーの健康を保つためには、適切な飼育環境とバランスの取れた食事が不可欠です。日常のケアと早期発見・早期治療が重要です。飼い主さまとしての責任を持ち、デグーの健康管理に努めましょう。初心者にも飼いやすいからといっても、「簡単に飼えるペット」ではありませんが、愛情をかけた分だけ応えてくれる素晴らしい存在です。

あなたのデグーが健康で長生きするために、この情報を役立ててください。デグーの健康管理に関する知識を深め、日常のケアに活かすことで、愛するペットとの楽しい生活を送りましょう。


「デグーを安心して丁寧に診てもらえる病院」を探すあなたへ

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当院へのご連絡はこちらからが便利です

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