こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。今回はモルモットによく見られる問題について、当院の経験を元にお話しさせていただきます。
1. 栄養不足と不適切な食事
ビタミンC不足
原因: モルモットは体内でビタミンCを合成することができないため、食事から摂取する必要があります。しかし、市販のペレットに頼りすぎたり、新鮮な野菜や果物を十分に与えないと、ビタミンC不足に陥ることがあります。
症状:
- 食欲不振
- 体重減少
- 関節痛や腫れ
- 歯茎や皮膚の出血傾向
対処法:
- 毎日、新鮮な野菜や果物を与えることが重要です。例えば、ピーマン、ケール、パセリ、オレンジなどが良いでしょう。
- 最近は、ちゅーるやジュレの類いがお店に並んでいます。お薬を与えるときに便利だと思いますので、好みのものを知っておくことはメリットになると思います。
- ビタミンCを強化したペレットを選び、適切な量を与える。
- 必要に応じて、獣医師と相談してビタミンCサプリメントを使用する。
- 先日、浜松市動物園見学で下記のような掲示を見ました。ぜひ参考になさってくださいね。
過剰な脂肪や糖分の摂取
原因: モルモットに与えるおやつや高カロリーな食べ物が過剰になると、肥満や肝臓病などの問題が発生します。特に、果物の過剰摂取は糖分が高いため注意が必要です。
症状:
- 体重増加
- 活動性の低下
- 尿中に糖分の検出
- 食欲の変動
対処法:
- バランスの取れた食事を提供し、果物やおやつの量を制限する。
- 繊維質の高いヘイ(チモシーヘイやオーチャードグラス)を主食とする。
- 定期的な運動を促し、モルモットが健康的な体重を維持できるようにする。
2. 歯の問題
歯の過成長と不正咬合
原因: モルモットの歯は一生伸び続けますが、適切に摩耗しないと過成長し、不正咬合を引き起こします。これは、適切な食事やよく噛まなければ飲み込めない食べ物が不足している場合や、遺伝的要因が関与している場合に発生します。
症状:
- 食欲不振
- 口の周りに湿り気や唾液の溜まり
- 痛みのために食事を拒否
- 体重減少
対処法:
- 繊維質の高いヘイを常に供給し、歯が適切に摩耗するようにする。
- 定期的に獣医師による歯のチェックを受け、必要に応じて全身麻酔をかけて削ります。
- ケージの金網をかじる場合には、かじれないような工夫をしていただきます。
- 咀嚼を促すために乾牧草や咀嚼玩具を提供する。
3. 消化器系の問題
下痢と便秘
原因: 不適切な食事や急激な食事の変更、ストレス、寄生虫感染が原因で消化器系の問題が発生します。特に、繊維質の不足や水分の不足が便秘の原因となりやすいです。
症状:
- 下痢: 軟便、水様便
- 便秘: 排便の困難、硬い便
- 腹部の膨満
- 食欲不振
対処法:
- バランスの取れた食事を提供し、適切な繊維質を確保する。
- 新しい食物を導入する際は徐々に行ない、消化器系が順応する時間を与える。
- ストレスを最小限に抑え、安定した環境を提供する。
- 必要に応じて、X線検査などを行ない、獣医師と相談し、適切な治療(例えば、胃腸を動かす薬・点滴、寄生虫駆除薬や消化を助けるサプリメント)を行なう。
4. 皮膚病
寄生虫、真菌感染、アレルギー
原因: モルモットの皮膚病は寄生虫(例:ダニ、シラミ)、真菌感染(例:リングワーム)、アレルギーや栄養不足が原因となることが多いです。特に、不潔な環境やストレスがこれらのリスクを高めます。
症状:
- かゆみ
- 脱毛
- 皮膚の赤みや炎症
- かさぶたやフケ
対処法:
- 定期的な健康チェックと清潔な飼育環境の維持。
- 感染が疑われる場合は、早急に獣医師の診察を受け、適切な治療(例:抗真菌薬、寄生虫駆除薬)を行なう。真菌の場合には、人にもうつることがあるので、要注意です。
- アレルギーが疑われる場合は、アレルゲンの特定と回避策を講じる。
5. 呼吸器系の問題
鼻炎、肺炎、アレルギー
原因: モルモットは呼吸器系が弱く、鼻炎や肺炎などの呼吸器感染症にかかりやすいです。これらは通常、細菌感染やウイルス感染が原因で発生します。また、湿度や温度の急激な変化、埃や煙の吸入もリスク要因となります。
症状:
- くしゃみ
- 鼻水
- 呼吸困難
- 食欲不振:息を飲み込んで、胃腸に空気がたまっていることが多い
- 咳
対処法:
- 適切な飼育環境の維持(適度な湿度と温度)。
- 風通しの良い場所での飼育とストレスの軽減。
- 清潔な寝床と環境を保ち、埃や煙を避ける。
- 早期発見と必要に応じて抗生物質治療。
6. 尿路結石
原因: カルシウムの過剰摂取や水分不足が原因で尿路結石が発生することがあります。特に、カルシウムを多く含む食物(例:アルファルファヘイ、カルシウム入りおやつ)の過剰摂取がリスクとなります。
症状:
- 排尿困難
- 血尿
- 痛み
- 頻尿
- 食欲不振
対処法:
- 適切な食事バランスを保ち、カルシウムの過剰摂取を避ける。
- 十分な水分供給を行なう。給水器が詰まっていることがあります!
- 定期的な健康チェックと、症状が出た場合は早急に獣医師の診察を受ける。必要に応じて、外科的処置を検討。
7. 心筋症(Cardiomyopathy)
心臓の健康問題
原因: モルモットにも心臓の問題が発生することがあります。特に、遺伝的要因や栄養不足、ストレスが関与します。心筋症は心臓の筋肉が異常をきたす病気で、心不全を引き起こすことがあります。治療は対症療法のみで、治すことができない病気です。
症状:
- 呼吸困難
- 運動不耐性
- 浮腫(むくみ)
- 体重減少
- 元気がない
対処法:
- 心臓の健康を維持するためのバランスの取れた食事と適切な運動。
- 定期的な健康チェックと、症状が見られた場合は早急に獣医師の診察を受け、適切な薬物療法を行なう。
- 獣医師と相談し、特定のサプリメントや治療法を導入する。
8. ストレス関連の問題
環境の変化や社会的孤立
原因: モルモットはストレスに敏感な動物であり、環境の急激な変化や不安定な社会的環境がストレスを引き起こします。これは、他のペットとの同居や頻繁な移動、騒音などが原因となります。
症状:
- 食欲不振
- 体重減少
- 異常な行動(例:自咬)
- 活動性の低下
- 健康全般の低下
対処法:
- 安定した環境を提供し、急激な変化を避ける。
- モルモットに適した静かな場所を確保する。
- 定期的に触れ合い、社会的な刺激を提供する。
- 他のペットとの適切な関わりを管理する。
- 下の写真は浜松市動物園のものです。いろいろ工夫されているようです。
9. 腫瘍
良性および悪性腫瘍
原因: 腫瘍は年齢や遺伝的要因、環境因子が原因で発生することがあります。モルモットにも皮膚腫瘍、内臓腫瘍、乳腺腫瘍(雄にもあります)などが発生することがあります。
腫瘍ではなく、卵巣が水風船のように膨らんでしまう病気もよくみられます。
症状:
- 皮膚のしこりや腫れ
- 脱毛
- 体重減少
- 食欲不振
- 疲れやすさ
- その他の不特定の症状
対処法:
- 定期的な健康チェックを行ない、早期発見を目指す。
- 腫瘍が疑われる場合は早急に獣医師の診察を受け、必要に応じて生検や手術を行なう。
- 腫瘍の種類に応じた治療計画(例:外科的切除、化学療法)を立てる。
10. 骨折と外傷
骨折、捻挫、打撲
原因: モルモットは活発に動くため、不適切なケージ配置や高い場所からの転落、他のペットとの衝突などで骨折や外傷を負うことがあります。とくにお子さまが抱っこしていて、落としてしまうことがありますので、座って抱っこするように指導してください。
症状:
- 動かない
- 触れると痛がる
- 腫れ
- 傷口
- 異常な動作
対処法:
- ケージ内の安全な環境を確保し、高い場所からの転落を防ぐ。
- 骨折や外傷が疑われる場合は直ちに獣医師の診察を受け、適切な処置(例:固定、手術)を行なう。
- 回復期間中は安静を保ち、無理な運動を避ける。
これらの10項目は、モルモットの健康を維持するために重要なポイントです。モルモットの飼い主の皆様がこれらの情報を活用し、愛するペットが健康で幸せに過ごせるように役立てていただければ幸いです。定期的な健康チェックと獣医師の助言を仰ぐことを忘れずに、適切なケアを心がけてください。
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