最終更新日:2026年6月2日
大切な家族を守るための犬の運動器検診のススメ ~ロコモの予防~
愛知県豊田市にあるアロハオハナ動物病院によるこの記事は、小型犬に多く見られる変形性骨関節症(OA)の理解と予防について解説しています。統計的に多くの犬が発症するこの疾患に対し、適切な食事管理や体重調節、適度な運動が進行を遅らせるために不可欠であると説いています。特に睡眠リズムの変化が早期発見のサインになることを強調しており、飼い主さまが日常生活の中で異変に気づくことの重要性を伝えています。病院側は、サプリメントや最新の首輪型製品の提案、さらには尿検査による客観的な診断法の導入など、専門的なサポート体制を整えています。愛犬の健康維持が飼い主自身の幸福にもつながるという考えのもと、シニア期のクオリティ・オブ・ライフ向上に向けた積極的な対策を呼びかける内容です。

「痛かったんだね」——気づいたときには遅かった、小型犬の関節の話
実はラブラドールより高リスク。ポメ・シェルティ・コーギーのOAを見逃さないために
こんにちは!アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
今回は、小型犬の変形性骨関節症についてのお話です。とくにポメラニアンとトイプードルの飼い主さまにはよく読んでいただきたいロコモ対策のお話です。
愛犬との絆を深める中で、変形性骨関節症(OA)についての正しい知識を持つことは、飼い主様としての責任ともいえます。
愛情あふれるケアを提供するために、以下に変形性骨関節症の啓蒙と予防に関する重要な情報をお伝えいたします。

OAとは、関節全体の炎症や変形を特徴とする疾患であり、小型犬にも多く見られます。
1歳以上のワンちゃんの20%が発症しているという統計があります。
年齢とともに関節の負担や老化が進むことで、痛みや運動制限を引き起こす可能性があります。
適切な予防策を講じることで、OAの発症を遅らせ、症状を軽減させられます。

食餌
まず第一に、バランスの取れた高品質のフードが重要です。オメガ3脂肪酸、とくにEPAは、関節炎のコントロールに重要です。食餌を変更後なんと最短で3週間で効果が実感できたという報告があります。

運動
適度な運動も重要です。運動は、筋力を維持し、関節の柔軟性を促進します。
ただし、過度の運動は逆効果となることがあるため、注意しましょう。
柔らかい地面の方が、硬い地面より、運動に適しているようです。
長時間の散歩よりも、20分の散歩を1日3回した方が、関節には良さそうです。
体重管理
さらに、体重管理がOA予防に欠かせません。過剰な体重は関節に負担をかけ、症状を悪化させます。OA犬の4割が肥満という結果が出ています。

愛しい小型犬の幸せな日々を守るために、変形性骨関節症に対する正しい知識を持ち、予防に努めましょう。
元気に走り回っているのに、なぜOA?——若い犬の跛行を見逃さないために
「ドッグランで激しく遊んだあと、足を引きずって帰ってきた。でも翌日にはケロッとしている……」。こうした経験をお持ちの飼い主さまは多いのではないでしょうか。実は、これは「遊びすぎて疲れた」のではなく、OA(骨関節症)による痛みのサインである可能性があります。
若い犬のOAには、老犬とは異なる特徴的な見え方があります。典型的な「一本の肢をかばう跛行」ではなく、姿勢がやや崩れている、段差の昇り降りを以前より慎重にしている、走り出しに一瞬もたつく——といった、見落としやすいサインとして現れることが多いのです。日常の活動(散歩、食事、排泄など)はふつうにこなすため、飼い主さまも獣医師も「まだ若いから大丈夫」と判断しがちです。しかし痛みへの「適応」が起きているだけで、関節へのダメージは着実に進んでいます。
こうしたサインを見逃さないためのポイントをいくつかお伝えします。遊んだ後や翌朝に跛行が出る、特定の動作(立ち上がり、階段、ジャンプ)をためらう、体の一部を触られるのを嫌がる——こうした変化が繰り返されるようなら、一度ご相談ください。
関節炎は若い犬にも起こる——「若いから大丈夫」は禁物
2024年にノースカロライナ州立大学の研究チームが発表した論文(Enomoto et al., Nature Scientific Reports)では、生後8ヶ月〜4歳の若い犬でも、X線検査で約40%にOAの所見が認められ、そのうち16〜23%には痛みに関連した症状が確認されました。
さらに重要なのは、若い犬のOAの症状が高齢犬とは大きく異なるという点です。
若い犬のOAに見られる特徴的なサイン:
- 跛行が一本の肢に限らず、全体的に動きがぎこちない
- 段差の昇り降りを少しためらうようになる
- 以前より走り出しが遅くなった
- 散歩の途中で座り込む、遊びの時間が短くなった
これらは「疲れた」「気分の問題」と見えやすいのですが、実は痛みへの適応(かばい動作)です。日常生活はこなしているように見えても、関節内の変化は進んでいます。

関節炎は「老犬の病気」ではない——品種・発育期のリスクを知る
「OAは年をとってからかかるもの」というのは、長い間、飼い主さまにも獣医師にも共有されてきた認識でした。しかし近年の研究では、生後8か月〜4歳という若い犬でも、X線検査で40%にOAの所見が認められ、そのうち16〜23%に痛みに関連した臨床症状が確認されています(Enomoto et al., Nature Scientific Reports, 2024)。OAは若い犬にも起こりうる病気なのです。
背景には、発育期の関節疾患があります。股関節形成不全や肘関節形成不全は、若い段階から関節に負担をかけ、OAへの移行を促します。発症リスクは品種によって大きく異なり、股関節形成不全ではパグ(72%)やブルドッグ(70%)、セントバーナード(50%)などで特に高く報告されています。ゴールデンレトリバーやラブラドールでも20%前後と油断できません。
発育期に「見た目は元気」でも関節内でOAが進んでいることがあります。特にリスクの高い品種の場合、症状がなくても定期的な関節検査を受けることが、早期発見・早期ケアの第一歩となります。
筋力と関節は若いうちから守る——「リカバリーできない」劣化の話
ヒトの老年医学では、「若いうちの筋力の低さが、その後の身体機能の低下スピードを決める」という考え方が確立されています。つまり、若年期に十分な筋力を持てなかった場合、加齢に伴う機能低下が早まるということです。この概念は犬にも当てはまると考えられています。
OAに伴う関節の痛みは、動きを制限し、筋力をさらに低下させます。筋力が落ちると関節のサポートが減り、より大きな負担が関節にかかり、痛みが増す——この悪循環が関節の劣化を加速させます。重要なのは、この劣化は「いったん進むと逆転が難しい」という点です。早期に痛みをコントロールし、筋力を維持することで、この悪循環に入るのを防ぐことができます。治療は早いほど効果的です。
去勢・避妊手術のタイミングとOAリスク
OAのリスク因子として、発育期の関節疾患や肥満のほかに、「早期の去勢・避妊手術」が挙げられることをご存知でしょうか。これはまだあまり一般的には知られていない情報です。
性ホルモンは骨や靭帯の成熟に関わっているため、成長が完了する前に去勢・避妊を行うと、骨格の発育に影響を及ぼし、関節疾患(股関節形成不全など)のリスクが高まる可能性があることが複数の研究で報告されています。この傾向は品種によって差があり、大型犬でより顕著とされています。
去勢・避妊手術は、繁殖管理や一部の疾患予防のために多くのケースで推奨されており、当院でもその意義は十分に認識しています。ただ、「いつ手術を行うか」については、品種・性別・体格・リスクのバランスを個別に考える必要があります。手術のタイミングについてご不安なことがあれば、ぜひご相談ください。

関節炎が生活の質(QOL)全体に与える影響
OAによる痛みは「足が痛い」という問題だけにとどまりません。慢性的な痛みは、愛犬の生活の多くの側面に影響を及ぼします。
- 歩行・運動能力の低下
- 睡眠の乱れ(夜間に落ち着かない、夜鳴きが増える)
- 認知・感情面への影響(元気がなくなる、遊ばなくなる)
- 社会的な関係の変化(飼い主との遊びや交流が減る)
特に「遊び」は、犬のQOLだけでなく、飼い主さまとの絆を育む大切な時間でもあります。OAの痛みによって遊ぶ意欲が失われることは、愛犬にとっても飼い主さまにとっても大きな損失です。痛みの管理は「足の治療」ではなく、「生活全体の質を守ること」と考えてください。

痛みは「悪循環」を引き起こす——早期治療が大切な理由
OAの痛みを放置すると、次のような悪循環が起きます。
関節の痛み → 動きたくなくなる → 筋肉が落ちる → 関節のサポートが弱くなる → さらに痛みが増す
この悪循環は、一度進んでしまうと逆転させることが非常に難しいとされています。人の老年医学でも、「若いうちの筋力の低さが、その後の身体機能低下のスピードを決める」という考え方が確立されており、犬でも同様のことが起きると考えられています。
だからこそ、早期に痛みをコントロールして筋力を守ることが、長期的な関節の健康につながります。「まだ若いから様子を見よう」ではなく、サインに気づいたら早めにご相談いただくことが、愛犬の将来のQOLを守ることになります。
OAの治療は「一生薬を飲み続けなければいけない」わけではない
「薬を始めたら一生やめられない」と心配される飼い主さまは少なくありません。しかし、OA管理の考え方は変わってきています。
大切なのはOA自体の管理(食事・運動・体重)は生涯続けることですが、薬による医療的治療は必ずしも一生涯継続しなければならないと決まっているものではありません。
特に若い段階から治療を始めた場合、痛みが落ち着き、筋力が回復し、体重が適正になってくれば、投薬の量や頻度を減らしていくことができます。目標は「薬をやめること、または最低限必要な量に調整すること」です。
治療の流れのイメージ:
- 痛みをしっかりコントロールする(薬+サプリ+運動)
- 痛みが安定したら、運動と体重管理を充実させる
- 全体的な状態が改善したら、投薬量・頻度を段階的に減らす
- 定期的な再診で状態を確認しながら、必要最低限の管理を継続
「痛みが出たらまた相談」ではなく、定期的な再診と飼い主さまの観察を組み合わせながら、一緒に調整していくのが現代のOA管理です。
OA治療のマルチモーダルアプローチ——組み合わせることが大切
OAの管理で最も効果的なのは、複数の方法を組み合わせるマルチモーダルアプローチです。一つの方法だけに頼るより、それぞれの効果が重なり合って、より高い効果が期待できます。
| アプローチ | 内容 |
|---|---|
| 鎮痛薬 | 非ステロイド系鎮痛薬、グラピプラント(EP4受容体拮抗薬)など、安全性プロファイルの高い薬を選択 |
| オメガ3脂肪酸 | EPA・DHAを含むフィッシュオイルは関節の炎症を和らげる効果が期待できる |
| 適度な運動 | 短い散歩を1日複数回に分けて行うと関節への負担が少ない。徐々に時間を増やしていく |
| 体重管理 | 余分な体重は関節への直接的な負担になる。適正体重の維持がOA管理の基本 |
| 環境整備 | 滑りにくい床材、段差へのスロープ設置など、家の中の工夫も有効 |
これらを組み合わせて、愛犬の状態に合わせたプランを獣医師と一緒に作っていきましょう。

■ 愛犬の健康は、飼い主さまの健康にもつながる
愛犬がOAの痛みをコントロールできて元気に散歩に行けるということは、飼い主さまにとっても大切なことです。一緒に歩く機会が増えることは、飼い主さまご自身の運動習慣の維持にもつながり、健康寿命を延ばすことにも一役買ってくれます。
愛犬との「一緒に元気でいる」という目標が、お互いのQOL向上につながります。愛犬の足腰を守ることは、ふたりの豊かな時間を守ることでもあります。
ここでもう1つ、早期発見で大事なポイントをお伝えします!
睡眠時間に異常が出ることが多いです!
睡眠時間自体は長くなったり、短くなったりですが、夜間に起きていて、昼間に寝ていることが多くなります。今までと比べて、「あれっ」と思うことがあれば、これは整形疾患に限ったことではないのですが、当院にご連絡くださいね。
OAが愛犬に与える多面的な影響——痛みは「足」だけの問題ではない
「足が痛いなら、歩くのが大変になるだけでしょう?」と思われる方も多いかもしれません。しかし慢性的な痛みは、体の動きだけでなく、愛犬の生活全体に影響を及ぼします。
研究によると、OAに伴う慢性疼痛は以下のような多くの側面に影響することが示されています。
- 歩行・運動能力:最もわかりやすい変化ですが、初期は微細で見逃しやすいです
- 睡眠リズム
- 感情・気分:痛みが続くことで、以前より怒りっぽくなったり、元気がなくなったりすることがあります
- 社会的関係:家族や他のペットとの交流が減ることがあります
- 認知機能:慢性疼痛は脳にも影響し、認知機能の低下とも関連することが報告されています
これらはすべて、愛犬の「生活の質(QOL)」に直結します。OAは単なる整形外科の問題ではなく、愛犬の生活全体に関わる病気として捉えることが大切です。
OAの進行ステージを知る——「まだ元気だから大丈夫」のうちに手を打つ
OAは、発見したときにはすでにある程度進行していることが少なくありません。臨床的な進行は、おおよそ次の4段階に分けて考えることができます。
ステージ1(初期):痛みへの行動的な適応が起きている段階です。「なんとなく動きが鈍い」「遊びの後に少し足を引きずる」といった変化が現れますが、日常生活はほぼこなせます。この時期の痛みは、「軽い」とは限りません——ただ、適応しているだけです。
ステージ2(中期):活動障害が断続的に現れます。「階段を以前より慎重に降りる」「散歩の途中で立ち止まることが増えた」などのサインが見られます。
ステージ3(後期):活動障害が明らかになり、移動能力が低下します。
ステージ4(末期):自力での移動が困難になります。
重要なのは、ステージが進むにつれて筋肉や関節がさらに劣化し、体性感覚の異常も加わっていくという点です。早いステージで介入するほど、その後の回復可能性が高く、日々の管理も容易になります。「まだ歩けているから大丈夫」ではなく、「今のうちに手を打つ」という発想の転換が、愛犬のQOLを大きく左右します。
OAの「悪循環」を断ち切る——早期治療が持つ意味
OAに伴う痛みを放置すると、次のような悪循環が生まれます。
関節の痛み → 動くのをためらう → 筋力の低下 → 関節のサポートが弱まる → 関節への負担増加 → 痛みがさらに悪化
この悪循環の怖いところは、一度深く入り込んでしまうと逆転させることが非常に難しくなるという点です。筋肉は失われると取り戻すのに時間がかかります。関節の変形は元に戻りません。
一方で、早期に痛みをコントロールし、適切な運動を続けることで、この悪循環に入ることを防ぐことができます。「劣化を逆転させるより、予防する方がはるかに容易」というのが、現在のOA治療における重要な考え方です。
当院でも、痛みのコントロールと並行して、筋力を維持・向上させるための生活指導や運動アドバイスを行っています。お気軽にご相談ください。

病院での評価——COASTという客観的な「ものさし」
「OAかどうか」「どの程度進んでいるか」を判断するにあたって、現在、獣医療の世界ではCOAST(Canine OsteoArthritis Staging Tool)と呼ばれる評価ツールが活用されています。
このツールの特徴は、「犬全体のグレード」と「関節のグレード」の両方を評価する点にあります。
犬全体の評価では、飼い主さまにご記入いただくアンケート(日常生活での変化)と、獣医師による姿勢・歩様の観察を組み合わせます。関節の評価では、触診による痛みの程度、関節の可動域、そして必要に応じてX線検査の所見を用います。
この2つの評価を照らし合わせて総合的にステージ(0〜4)を判定します。客観的な「ものさし」を持つことで、治療の効果を経時的に追うことができるようになります。また、飼い主さまとも「どのステージか」を共有しながら、治療方針を一緒に考えることができます。
愛犬との絆を深めながら、健康で快適な生活を共に送るために、飼い主様としての役割を果たしましょう。
ご家族とワンちゃんが共に、笑顔あふれる日々を過ごすために、OA予防に積極的に取り組んでいきましょう。
愛情と知識をもって、愛犬の幸福を守ることができるのです。
そしてさらに、ワンちゃんが元気に散歩に行けるということは、飼い主さま自身の健康にもつながります。健康寿命を延ばせることにも一役買ってくれるというわけです。
下記資料もご覧ください。



ロコモのワンちゃんバージョンはこちら
(※猫ちゃん用のアプリはこちら)
シニア犬にも、運動教室、エクササイズなんかも実施できるといいと思います。
当院では、運動器サプリメントに加え、環境改善・生活指導などのお話しもさせていただいております。シニア世代のワンちゃんたちもぜひご相談くださいね。
運動器への効果の期待できる、首輪型の製品(1カ月で約3,000円)も上市されてきて、内服させるという手間を省けるという選択肢もできました。
2026年、おしっこから関節炎の証拠物質であるバイオマーカー(尿中CⅡNE)を検出することができるようになりました。これで関節炎の早期発見が客観的にできるようになりました。
こちら↓もご参照ください。動画もあります!
他にも、次の3つの動画もご視聴ください。
猫ちゃんの記事はこちら↓
「関節炎を安心して丁寧に診てもらえる病院」を探すあなたへ
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