最終更新日:2025年11月15日
受診時は、逃げ出さないようなケースに入れてきてください。
爬虫類を安心して受診させるには、適切なキャリーと温湿度管理、そして詳細な飼育情報の共有が不可欠です。
診察後は環境改善と継続的なフォローを行うことで、より正確な診断と良好な治療経過につながります。
こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

1. 輸送用ケース/キャリー選びと安全性
- 逃亡防止・ストレス軽減を最優先に
爬虫類もストレスに対して非常に敏感で、輸送中の振動や不意の光線・騒音が体調を崩す誘因にもなり得ます。
受診時には逃げ出さないよう、かつ酸素供給が可能なキャリーケースを用意しましょう。密閉度が高すぎて換気が悪いものは避け、通気孔があるケースが望ましいです。 - 適切な敷材を使う
ケース底に新聞紙、ペーパータオル、滑り止めマットなどを敷くとよいでしょう。砂や粒状の敷材は、輸送中に吸引・誤飲リスクになるため避けるのが無難です。 - キャリーケースの温度管理
爬虫類は変温動物ですから、運搬中のケージ温度が極端に低くならないよう配慮が必要です。特に冬季や長距離移動時は、保温剤(カイロなど)を外部に貼る、断熱材を巻くといった対策が有効です。庫内の温度を24~30℃になるように工夫してください。温度計は箱外から分かるようなセンサーと本体が分かれている物が便利です。

2. 飼育環境の事前調整
- 基礎温度の確保
受診直前は、上記のように飼育ケース内の温度を概ね 24~30 ℃ 程度に保っておくことをおすすめします 。
温度を適切に維持することは、消化・代謝機能を支える上で非常に重要です。 - 温度計の設置
理想的には、外部から読み取れるセンサー(ケーブルセンサー型)と本体が分離している温度計が便利です。こうしたものは、ケージ外から温度変化を観察でき、獣医師も診察時に参照可能です。 - 湿度管理
種によって最適な湿度は異なりますが、乾燥系の種と湿地系の種では要求が異なります。受診前に、普段飼育している湿度環境(%)をメモして持参(事前にLINEで)できると、獣医師が判断を補助しやすくなります。

3. 来院時に持参すべき情報・資料
獣医診療をスムーズかつ正確に行なうため、以下情報を事前に整理・持参・LINEするとよいでしょう:
| 情報 | 理由・用途 |
|---|---|
| 飼育種(学名含む)および性別・サイズ(体長・体重) | 種固有の病態・薬物選択・投与量に影響 |
| 飼育環境詳細(温度グラフ、湿度、UV-B照射強度、日照時間等) | 不適切な環境ストレスの有無判断材料 |
| 給餌内容・頻度・給餌歴 | 消化器症状や栄養性疾患の鑑別に必須 |
| 排便・排尿・脱皮の頻度・性状 | 消化器、泌尿器、皮膚病の手がかり |
| 既往歴・処方薬・サプリメント | 薬剤相互作用や既存疾患との兼ね合い確認 |
| 画像・動画記録 | 動き・呼吸・歩行異常を事前に確認できる手がかり |
| 持参したケージ温度計(センサー付き) | 診察時に現状温湿度を確認できる補助手段 |

4. 診察・検査の流れ(臨床的考察を交えて)
以下は、私が院内で行なっている典型的な流れと配慮ポイントです。
- 問診・現状確認
– 飼育環境や飼育記録をもとにストレス因子や管理不良要素を評価
– 受診直前のケージ温湿度を温度計やセンサーで測定 - 視診・触診
– 体表の傷、腫瘍、皮膚異常、脱皮不全、口腔粘膜や総排泄腔周囲の観察
– 触診による腫瘤・腹部の硬さ、脱水徴候(皮膚の張りなど) - 体重・サイズ測定
– サイズに合った秤を用いる
– 体長・尾長なども記録 - 血液検査・血液化学プロファイル
– ヘルスチェック、腎機能・肝機能・電解質異常の評価
– 種別基準範囲を参照 - 画像検査
– レントゲン(X線)撮影:骨格変形、腫瘤、気腫、消化管内異物などの発見
– 超音波検査:腹腔内臓器の評価、卵巣・腎臓など可視化
– CT / MRI(必要時):軟部組織の精査や腫瘍評価に用いることもあり - 追加検査(必要に応じて)
– 粘膜擦過・糞便検査(原虫、線虫などの各種寄生虫)
– 微生物培養・感受性試験(皮膚・口腔・呼吸器疾患)
– 生検・組織病理検査(腫瘍、肉芽腫性疾患など)
– 遺伝子検査・PCR(ウイルス・細菌・真菌病原体の同定) - 診断・治療計画の策定と説明(インフォームドコンセント)
– 診断仮説を複数立て、リスクと見通しを説明
– 投薬、支持療法(保温・輸液・栄養補助など)、手術など選択肢を提示
– 飼い主さまとの意見交換を重視し、治療方針を共同で決定(Shared Decision Making, SDM の概念) - フォローアップ・モニタリング
– 治療後の反応(体重変化、血液データ、臨床症状)を定期的に評価
– 外来再診、必要時入院管理や遠隔モニタリング(温湿度ログ、写真記録など)

5. よくあるトラブル・その予防策
以下は経験上頻出する問題と、それに対する予防・対処のヒントです:
- 脱水・電解質異常
→ 給水システム不備、温度低下、病的・悪性疾患による食欲低下が原因になり得ます。受診前後も積極的な保温&保水を心掛けてください。 - 代謝性骨疾患(MBD: Metabolic Bone Disease)
→ 不適切なカルシウム/リンのバランス、ビタミンD3、UV-B照射不良が本疾患の主因。普段の飼育条件を診察前に見直しておくことも重要です。 - 消化器閉塞・異物誤飲
→ 床材や小物、消化しづらい硬い殻・骨片などを誤飲することがあります。受診前日に餌を控えるよう指示されることもあります。 - 呼吸器感染症
→ 爬虫類は湿度過多・気流不良・寒冷曝露に弱いので、設置環境の清潔維持・換気管理が基本。発症初期は無症状のこともあるため、早期観察が肝要です。 - 皮膚・脱皮不全
→ 湿度不足・ビタミン状態不良・寄生虫などが誘因。定期的な完全脱皮が見られない場合は早めに受診を検討してください。

6. 受診時/受診後の心構え(飼い主さまへ)
- すぐに改善を期待しない
爬虫類は代謝が遅いため、慢性疾患や回復には時間を要すことが多いです。治療の節目での効果判定を、数週間~数カ月のスパンで見ることもあります。 - 診断結果・未確定要素を曖昧にされないよう質問を
獣医師が仮説やリスクを説明する際、できる限り疑問点をクリアにして納得できるようにしましょう(例:治療の副作用、治る見込み、コスト、代替案など)。 - 飼育条件を逐次改善する姿勢が重要
治療と並行して「なぜその病気になったか」の原因を探り、飼育環境を最適化する努力が長期予後を左右します。 - フォローアップを欠かさないこと
再診や定期チェック、場合によっては遠隔モニタリング(たとえば飼育環境の温湿度ログをスマホで共有するなど)を活用することで、良好な治療成績につながります。

🐍 爬虫類の受診・輸送・診察に関するよくあるQ&A
Q1. 爬虫類を動物病院に連れて行くとき、どんなキャリーケースが安全ですか?
A1. 通気孔のあるケースで、逃亡防止と保温ができるタイプを選びましょう。密閉型や金網タイプは避けてください。
Q2. 冬の移動中、爬虫類を寒さから守るにはどうすればいいですか?
A2. ケースの外側にカイロを貼り、断熱材で覆うのが効果的です。庫内温度が24~30℃を保てるよう温度計で確認しましょう。
Q3. 診察に行く前に、どんな情報を獣医師に伝えればよいですか?
A3. 飼育環境(温度・湿度・照明など)と食餌内容、排泄の様子、既往歴をLINEで送ると診断がスムーズです。
Q4. 来院時に持っていった方がよいものはありますか?
A4. 温湿度が分かるセンサー付き温度計、最近の排泄物、写真・動画記録などが診察の助けになります。
Q5. 治療を始めたら、どのくらいで回復しますか?
A5. 爬虫類は代謝が遅いため、改善に数週間~数カ月かかることがあります。焦らず再診・通院と環境改善を続けましょう。
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かもがわ公園小動物クリニックは愛知県豊田市役所高橋出張所前のかもがわ公園の近くにございます。
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