猫に多い「心筋症」──突然発症しやすい心臓病を正しく知るために🐱

猫の心臓病について

最終更新日:2025年12月16日

心筋症の原因から検査・治療・予後まで、専門的内容をやさしくまとめた総合ガイド

猫の心筋症は普段は症状が出にくく、突然の呼吸困難や後肢麻痺、急死を引き起こすこともある重大な心疾患です。
完全な治療法はありませんが、早期発見により進行を遅らせ、生活の質を保つことが可能です。
定期健診での聴診・エコー検査が最も重要で、異変を感じたら早めの受診が鍵になります。

こんにちは。アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。

今回は、猫で特に多く見られる心臓病「心筋症」について、原因・症状・検査・治療・予後の流れを、一般の飼い主さまにもわかりやすく解説します。
小型犬では僧帽弁閉鎖不全症という心臓病が多いですが、猫では心筋症という心臓病が多いです。心臓は筋肉でできていますが、これが分厚くなったり、薄っぺらになったりする病気で、根本的な治療法はありません。人では心臓移植をしています。

特別な症状もなく、ある日突然に発症してくることが多いです。口を開けて呼吸したり、下半身が動かなくなったりして、ご来院されるケースが多いです。5%ほどで突然死が見られるようで、当院救急救命でも、到着時には息を引き取っていることの多い病気です。

定期的な健診で異常が見つかるかもしれませんので、身体検査をお勧めしています。


■ 1. 心筋症とは

心筋症は、心臓を構成する筋肉(心筋)が異常に厚くなる・薄くなる・硬くなることで、心臓がうまく血液を送り出せなくなる病気の総称です。

代表的なタイプは以下の3つです:

  • 肥大型心筋症(HCM):心筋が異常に分厚くなる
  • 拡張型心筋症(DCM):心筋が薄く伸びてしまう
  • 拘束型心筋症(RCM):心筋が硬くなり、拡がりにくくなる

特に肥大型心筋症(HCM)が猫で最も多く、欧米の専門家の報告でも圧倒的多数を占めます。

小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症とは異なり、猫は先天的・遺伝的要因を強く持ち、症状がほとんど出ないまま進行してしまう特徴があります。


■ 2. 原因

猫の心筋症の原因はまだ完全には解明されていませんが、欧米の獣医循環器専門医の研究に基づくと、主な要因は次の通りです。

① 遺伝(特に肥大型心筋症)

  • メインクーン、ラグドール、ブリティッシュショートヘアなどで遺伝子変異(MYBPC3)が確認
  • 雑種猫でも発症します

② ホルモン異常

  • 甲状腺機能亢進症
  • 高血圧症

これらは心臓に負荷をかけ、結果として心筋症様の変化を引き起こすことがあります。

③ 不明(特発性)

多くのケースで原因は特定できません。
だからこそ定期健診が重要になります。


■ 3. 症状

心筋症の恐ろしい点は、ほとんど症状が出ないまま進行することが多い点です。

典型的な症状が出る頃には、病気がかなり進んでいることがよくあります。

◆ よくある症状

  • 呼吸が速い、苦しそう
  • 口を開けて呼吸する
  • 動きが鈍くなる
  • 食欲不振
  • 後ろ足が突然動かない(血栓症)
  • 意識がなくなる
  • 突然死(5%前後と報告あり)

特に動脈血栓塞栓症(ATE:Arterial Thromboembolism)は、
・激しい痛み
・後肢麻痺
を伴い、飼い主が発症を初めて知ったタイミングとなることが多い重篤な状態です。

また救急現場では、来院到着時すでに亡くなっているケースも珍しくありません。


■ 4. 検査・診断

心筋症の診断には、以下の検査が組み合わされます。

① 聴診(身体検査)

  • 心雑音
  • 不整脈
  • 呼吸音の異常
  • 血圧測定

※心雑音がなくても心筋症は存在します。

② 心臓超音波検査(心エコー)

最も重要な検査で、

  • 心筋の厚さ
  • 左房の拡大
  • 心拍出量
  • 血流の逆流
    を詳しく評価できます。

欧米の獣医循環器専門医は、心筋症の確定診断は心エコーが必須としています。

③ レントゲン検査

  • 肺水腫の有無
  • 心臓のサイズ

④ 血液検査

  • NT-proBNP(心筋ストレスマーカー)
  • 甲状腺ホルモン

症状がなくても、ストレスマーカーの上昇で異常の早期発見につながることがあります。


■ 5. 治療

猫の心筋症には 根本的な治療法がありません。
人医療では心臓移植が選択肢になるケースがありますが、猫では不可能です。

そのため、進行を抑え、症状を管理する治療が中心となります。

◆ 主な治療

  • 利尿薬(フロセミドなど):肺水腫の改善
  • 血管拡張薬:心臓の負担を軽減
  • β遮断薬:心拍数コントロール、心筋の酸素消費を軽減
  • 抗血栓薬(クロピドグレルなど):血栓塞栓症の予防
  • 酸素室での管理(呼吸困難時)
  • 痛み止め:後肢が立たない時

治療内容は検査の結果や症状の有無で大きく変わります。


■ 6. 予後

予後は病型・重症度・治療のタイミングによって大きく異なります。

◆ 症状がない段階

  • 2〜4年以上安定することも多い
  • ただし血栓・急死の可能性はゼロではない

◆ 呼吸困難を起こした段階

  • 平均生存期間は数ヶ月〜1年ほど
  • 適切な治療で数年維持する例もあり

◆ 血栓塞栓症を起こした場合

  • 予後は不安定
  • 再発率も高い

心筋症は「症状が出る前に見つける」ことが最も重要な病気です。


■ 7. 定期健診の重要性

猫は症状を隠す動物で、心臓病も例外ではありません。
以下の理由から定期健診が強く推奨されます。

  • 心雑音や不整脈の早期発見
  • ストレスマーカーの上昇をチェック
  • 高齢猫や特定品種は特にリスクが高い
  • 症状が出てからの治療では手遅れとなるケースが多い

とくに 7歳以上は年1〜2回の心臓検査が理想的 です。


■ 8. 猫の心臓病Q&A

Q1. 咳をしているけど、猫も心臓病で咳が出ますか?

A. 猫は犬と違い、心臓病で咳が出ることは稀です。呼吸が速い・苦しそうなら要受診です。

Q2. 心筋症は治りますか?

A. 根本治療はなく、進行抑制と症状管理が目的です。

Q3. 急に後ろ足が動かないのは心臓病ですか?

A. 血栓塞栓症の可能性があり、緊急性が極めて高い状態です。

Q4. 口を開けて呼吸しているけれど、様子見して大丈夫?

A. 猫の開口呼吸は緊急事態です。すぐに病院へ。

Q5. 家で心臓病を早期に見つける方法はありますか?

A. 呼吸数のチェックが有効(睡眠時30回/分以上は要注意)。ただし確定は心エコーが必要です。


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