最終更新日:2026年1月26日
助けた猫が命を奪うことも――いま最も注意すべき感染症 /SFTSの真実と、飼い主ができること
やせて弱った猫を保護したら、自分が高熱と出血に…。
そんな悲劇を防ぐために、私たちが知っておくべきことがあります。
SFTS――それはマダニが媒介する、人と動物を襲うウイルス感染症です。

こんにちは。
アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニック院長です。
近年、ニュースなどで
「マダニに咬まれて感染」
「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)患者、過去最多」
といった見出しを見かける機会が増えました。
実際、2025年10月時点での報告数は全国で174例(過去最多)。
北海道や東北など、これまで報告のなかった地域でも感染例が確認されています。
そしてこの感染症――
人だけの話ではありません。
犬や猫、さらには私たち獣医師を含む「動物に関わるすべての人」に関わる非常に重大な人獣共通感染症なのです。

🦠 SFTSとはどんな病気?
SFTSは「重症熱性血小板減少症候群」と呼ばれます。
英語では Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome。
2013年、山口県で初めて日本国内の感染例が確認されました。
感染源は「マダニ」。
草むらや藪、山中などに生息するマダニがSFTSウイルスを体内に持っており、人や動物の血を吸うときにウイルスをうつします。
潜伏期間はおおよそ6〜14日。
感染後には
・38℃以上の発熱
・食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛や下血などの消化器症状
・リンパ節の腫れ
・意識がもうろうとする神経症状
などが現れます。
そして病名の通り、血小板が著しく減少(10万/mm³未満)し、出血傾向を示すのが特徴です。
致死率は10〜30%にのぼり、日本で確認される感染症の中でも極めて危険度の高い病気とされています。

🐕🦺 犬や猫も感染します
SFTSウイルスは「人専用のウイルス」ではありません。
犬、猫、さらには野生のイノシシやシカなど多くの哺乳類が感染します。
犬や猫が感染しても、初期症状は発熱、元気消失、食欲不振など、一見どこにでもある「体調不良かな?」と思う程度のこともあります。
しかし、進行すると嘔吐や下痢、黄疸、けいれん、そして死亡するケースもあります。
特に猫では重症化しやすく、人に感染を広げるリスクも高いと報告されています。

😿 猫から人へ感染した世界初の例は日本で起きた
2017年、西日本で野良猫を保護した女性が、その猫に咬まれた後にSFTSを発症し、残念ながら亡くなられました。
この症例は、「猫から人へ直接感染した世界初の報告」として医学史に残る出来事でした。
感染経路は「マダニ」ではなく、SFTSウイルスに感染した猫の唾液や血液、体液が傷口や粘膜に触れたことによるものと考えられています。
その後も、日本では複数の犬・猫からの感染例が報告されています。
つまりSFTSは、「野山に行かなければ関係ない病気」ではなく、私たちの身近なペットからもうつる可能性があるのです。

🌿 どうして感染が増えているの?
SFTS患者が増えている背景には、野生動物の生息範囲の変化があります。
シカやイノシシなどの野生動物が人家の近くまで出没するようになり、それに伴ってマダニの分布も拡大しています。
また、農作業やガーデニング、キャンプ、ハイキングなどの屋外活動が増えたことで、人が直接マダニに接触する機会が増えています。
そして近年の調査では、アライグマ、アナグマ、シカ、ノウサギ、ハクビシンなど多くの野生動物でSFTSウイルス抗体が検出されています。
つまり、マダニが感染源を得て伝播しやすい環境が日本中に広がっているのです。

☃️ 冬でも油断できない
マダニというと「春〜秋に活動」と思われがちですが、実は冬でも感染例が報告されています。
2024年には、1月に島根県と山口県で各1例、12月には長崎県で1例が発生。
寒い季節でも草むらや野山で活動する犬や猫は、マダニに咬まれるリスクがゼロではありません。
暖かい日が続く冬などは特に注意が必要です。

💊 治療薬はあるの?
2024年、ついに抗ウイルス薬「ファビピラビル(アビガン)」がSFTSの治療薬として承認されました。
これはもともとインフルエンザ治療薬として開発された薬です。
ただし、非常に高価(10日間で約360万円)であり、入院管理下・登録医師のみが使用可能です。
現実的には、まだ多くの医療機関で支持療法(点滴、輸血、解熱剤など)が中心の治療となっています。
つまり、「予防」が何よりも大切なのです。

🐶🐱 飼い主さまができる3つの対策
① マダニの寄生を防ぐ
犬や猫には、マダニ駆除薬(スポットタイプや内服タイプ)を定期的に使用しましょう。
動物病院で処方される駆除薬は、動物用医薬品であり、市販の医薬部外品のものより確実で安全です。
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② 屋外活動後のチェック
草むらや公園、キャンプ場などから帰ったら、ペットの毛をかき分けて皮膚に小さな黒っぽい塊が付いていないか確認します。
以下は、特に 2025 年時点での研究および米国調査のデータをもとに、犬で頻度が高かったマダニの付着部位を、多い順に並べたものです。残念ながら、日本での調査報告論文はありませんでした。
| 順位 | 体の部位 | 説明・補足 |
|---|---|---|
| 1 | 頭部(head) | 全体の付着のうち約 35.3% が頭部にあった。 (PMC) |
| 2 | 耳(ears) | 頭部の中でも、特に耳が多く(2025年研究では頭部のうち28.9%が耳周辺) (PMC) |
| 3 | 臀部/腰〜腰背部 (rump / back of body) | 同研究では、頭部に次いで臀部・背部に付着する例も多かった。 (SpringerLink) |
| 4 | 首 (neck) | 頭部ほどではないが、首〜頸部も付着部位として頻度が高い。 (SpringerLink) |
| 5 | 四肢および脚 (legs / limbs) または腹・鼠径部近辺 (abdomen, inguinal/axillary region) | 種や状況によっては、脚や腹部近辺にも付着。一例として、ライフステージ別の古典的研究では、幼若マダニは腹部や後肢近辺に寄生する傾向があった。 (PubMed) |
しかし、毛むくじゃらの中から小さなダニを見つけるのは至難の業。
もし血を吸って大きくなっているマダニを見つけたら、自分で取らずに動物病院へ。
無理に引き抜くと、口器が皮膚に残り、感染リスクが高まります。
③ 体調変化を見逃さない
犬や猫が突然元気を失ったり、食欲がなくなった、嘔吐・下痢があるなどのときは、早めに受診してください。
特に外に出る猫や散歩する犬は、SFTS感染の可能性をいつでも視野に入れておく必要があります。
🧑⚕️ 獣医師の現場から
私たち動物病院では、SFTSを疑う動物に接する際、必ず手袋・マスク・フェイスシールドなどを装着し、スタッフへの感染を防ぎながら診療します。
また、SFTSが疑われる動物を診た場合は、速やかに保健所や感染症研究機関に報告する仕組みが整っています。
飼い主さまにも、「猫が急に弱ってきた」などの場合、その子を素手で触れたり、口移しで水を与えたりする行為は控えていただくようお願いします。
🌎 SFTSは“動物の病気”でもあり、“人の病気”でもある
SFTSは、人と動物の境界を越えて広がる感染症です。
マダニ、野生動物、犬猫、そして人――。
そのすべてがウイルスの「つながり」で関わっています。
今後も患者数はさらに増えると見られており、西日本だけでなく、全国的な警戒が必要です。
動物病院としてできることは、「動物を守ること=人を守ること」。
マダニ予防は、ペットと家族の命を守る最も身近で確実な「ワクチン」といってもいいかもしれません。

🏥 最後に
もしも愛犬・愛猫の体調に「なんとなくいつもと違う」と感じたら、ぜひ早めにご相談ください。
SFTSのような感染症は、早期発見と正しい知識で大きく防げます。
私たちは、ペットとご家族の“いのちの道筋”を守るため、これからも地域の皆さまとともに歩んでまいります。


参考文献
1)国立健康危機管理研究機構「感染症発生動向調査週報(2025年第42週)」
2)厚生労働省『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 改定新版2024』
3)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について,2025.
4)Ohno, A. et al., Emerging Infectious Diseases, 2019.
5)Nishiyama, S. et al., Frontiers in Veterinary Science, 2022.
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