最終更新日:2026年3月20日
ワンちゃんの下痢についての原因と対処法
こんにちは、アロハオハナ動物病院かもがわ公園小動物クリニックの院長です。
動物病院の受診理由の多いのがこの下痢と皮膚の痒みです。
「急に愛犬が下痢をした…病院に行くべき?」
今までも数日間で自然に回復することもあったので、動物病院に行くべきか迷いますよね。
ワンちゃんの下痢を見つけた時には、飼い主さまの観察力と対応力が重要です。
ワンちゃんの下痢は非常に多い症状ですが、軽いものから命に関わる病気まで幅広い原因があるからです。
この記事では獣医師の視点から
✔ すぐ受診すべき危険サイン
✔ 自宅で様子を見てよいケース
✔ 原因別の治療戦略
を、飼い主さまにも分かりやすく解説します。

【結論】
ワンちゃんの下痢は
👉 多くは食事やストレスによる軽度なもの
👉 しかし感染症・膵炎・腫瘍など重大疾患の可能性もある
以下の場合はすぐに動物病院を受診してください
- 血便・黒色便
- 元気消失・食欲不振・ふるえ
- 嘔吐を伴う
- 2日以上続く
- 子犬・老犬
※下痢は脱水を引き起こし急速に悪化するため点滴などの早期対応が重要

【犬の下痢・種類とは?】
犬の下痢とは、便中の水分が増え、軟便〜水様便になる状態を指します。
■ 小腸性下痢
- 便の量:多い
- 回数:少なめ
- 特徴:体重減少・嘔吐あり
■ 大腸性下痢
- 便の量:少ない
- 回数:多い
- 特徴:粘液・血便
👉 この鑑別は診断上非常に重要 ですが、しばしば症状が混在して現れます

【犬の下痢の原因】
① 食事関連(最も多い)
- フード変更
- 食べ慣れない食べ物
- 古くなったフード
- 食べ過ぎ
- 脂肪過多
- 食物アレルギー
- 乳糖不耐症
- 異物や毒物の誤食: 特に好奇心旺盛な子犬や、誤食の経験がある場合は注意が必要
② 感染症
- ウイルス(パルボなど)
- 細菌(大腸菌など)
- 寄生虫
③ 消化器疾患
- 胃腸そのものの病気
- アレルギー性胃腸炎
- 慢性腸炎の初期
- 膵炎
- 腫瘍
④ 全身疾患
- 肝疾患
- 腎疾患
👉 下痢は消化管以外の病気でも起こります
⑤ ストレス
- 環境変化
- 留守番
👉 約70%が生活要因という報告も

【危険な下痢のサイン】
以下は即受診レベルです
- 血便・黒い便
- 嘔吐を伴う
- 元気がない
- 脱水(歯茎が乾く)
- 48時間以上持続
👉 重篤疾患の可能性あり :中毒、鋭利な異物による消化管穿孔による急性腹膜炎、副腎皮質機能低下症など
下痢を見つけた時の観察・対応のポイント
- 便の性状を観察: 頻度や量、便の色や臭い、排便の難しさなどをチェック。
- 他の症状の有無: 嘔吐や食欲不振など、下痢以外の症状があるかどうかも確認。
- 体重や活動性の変化: 体重減少・脱水、活力の低下がないかを注意深く見る。

【自宅で様子を見てもよいケース】
- 元気・食欲あり
- 軽い軟便のみ
- 1日以内
👉 軽度の急性下痢は自然改善することも多い
【自宅でできる対処法】
■ 食事管理
- 消化の良い食事(低脂肪)
- 少量頻回
■ 水分補給
- 脱水防止が最重要
■ フードを戻す
- 急な変更は避ける
👉 食事管理が治療の基本

【動物病院での下痢の検査】
- 問診と身体検査: 下痢の原因を推測し、さらなる検査や治療の方向性を探る。
- 糞便検査: 寄生虫や異常な細菌、消化状態をチェック。こちらもご覧ください→犬の検便とは?何がわかる?費用・やり方・受診の目安を獣医師が徹底解説
- 血液検査・X線検査・超音波エコー検査: 状況に応じて精密検査実施。
- 内視鏡検査: 診断が難しい場合に、専門科診療が必要。

【動物病院での下痢の治療】
原因に応じて行います
- 点滴(脱水補正)
- 整腸剤
- 抗菌薬(必要時)
- 駆虫薬
- 消化管機能調整剤
- 制吐剤
- 外科(異物など)
👉 基本は「原因治療+支持療法」
【よくあるご質問】
Q. 犬が下痢をしたらすぐ病院?
A. 元気・食欲があれば1日様子見可。ただし基本は主治医を受診。
Q. 下痢は何日で治る?
A. 軽症なら1〜2日で改善が多い。
Q. 食事は止めるべき?
A. 完全絶食は現在はあまり推奨されず、少量頻回給餌が主流。
Q. 下痢で死んでしまうことはある?
A. 重度感染症や膵炎では命に関わることがあります。
Q. 子犬の下痢は危険?
A. 非常に危険。脱水・感染症リスクが高い。

【まとめ】
犬の下痢はよくある症状ですが
✔ 軽症と重症の見極めが重要
✔ 迷ったら早めの受診
これが最も安全です。
下痢は一般的な症状でありながら、その原因はじつにさまざまです。お腹を休めることで自然に回復する場合もありますが、症状が長引く場合や他の症状がある場合は早めの受診が重要です。まずは、お気軽にご相談ください。

■ 命に関わる下痢の救急疾患“red flag diarrhea”
先程お話ししたように、ほとんどの下痢が緊急性がないものであり、動物病院を受診せずとも自然に治ってくれるものが多いです。これは自身でのご経験でも明らかなのではないでしょうか?しかし、動物病院を受診する必要があるもののうち、僅かですが、命にかかわる病気がございますので、ここからお話しさせていただきます。👉 死亡の多くは続発する脱水・ショック
① アジソン病・副腎皮質機能低下症(Addisonian crisis)
最も見逃されやすく、かつ致死的。
■ 病態
- コルチゾール・アルドステロン欠乏
- → 低Na / 高K / 循環血液量低下
■ 臨床徴候
- 下痢・嘔吐(消化器症状が前面)
- 重度虚脱
- 徐脈(高Kの影響)
- ショック
■ ポイント
👉 「元気がない+下痢+低体温」=まず疑うべき
■ 初期対応
- 0.9% NaCl急速輸液
- デキサメタゾン(ACTH testに影響しない)
- 点滴での電解質補正
② 犬パルボウイルス感染症
ワクチン未接種の若齢犬で最も致死率が高い下痢疾患。
■ 病態
- 腸陰窩細胞破壊
- → 重度出血性腸炎+敗血症
■ 臨床徴候
- 血様下痢
- 激しい嘔吐
- 白血球減少
- 急速な脱水
■ ポイント
👉 “腐敗臭のある血便”は典型
■ 死亡要因
- 敗血症
- DIC
③ 急性出血性下痢症候群
小型犬に多い急性ショック疾患。
■ 病態
- 腸管透過性亢進
- → 血漿漏出 → 血液濃縮
■ 臨床徴候
- 突然の血便(ジャム様)
- PCV上昇(>55%)
- 重度脱水
■ ポイント
👉 見た目以上に循環不全が進行
■ 初期対応
- 大量静脈内輸液(ショック対応)
- 電解質補正
④ 急性膵炎
消化器症状主体だが全身炎症へ移行。
■ 病態
- 消化酵素による膵実質自己消化
- → SIRS → 多臓器不全
■ 臨床徴候
- 嘔吐+下痢
- 腹痛(祈りの姿勢)
- 食欲廃絶
■ 重症化
- DIC
- 急性腎障害
⑤ 腸閉塞(異物など)
機械的閉塞による緊急外科疾患。
■ 病態
- 内容物停滞 → 腸管壊死、穿孔
■ 臨床徴候
- 嘔吐優位+下痢または無便
- 腹部膨満
- 急速悪化
■ ポイント
👉 紐などの長い線状異物は特に危険
⑥ 腸重積
若齢に多い致死的疾患。
■ 病態
- 腸の一部が内側に入り込む
- → 血流障害 → 壊死
■ 臨床徴候
- 血便
- 嘔吐
- 腹痛
⑦ 敗血症(腸管由来)
重度下痢の最終段階として発生。
■ 原因
- パルボウイルス
- 腸粘膜障害
■ 臨床徴候
- 発熱 or 低体温
- ショック
- 意識低下
⑧ 低血糖症(特に子犬)
直接の原因ではないが併発で致死的。
■ 臨床徴候
- 下痢+虚脱
- けいれん

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